課長・池端のグチ
そりゃ、大和郡山市だと思うよ。ここは関西だぜ? 郡山と言ったら、大和郡山をイメージするだろう。
俺だって、そこそこのトシだ。福島県郡山市を知らないわけはない。当然知っている。JR郡山駅からは磐越西線が走っていて、会津若松に行くのにここで乗り換えなければならない。確かSLが走っていたんじゃないかな。俺もまだ、行ったことはないのだが。
さすがに福島県郡山市まで二人で訪問するというのは、ちょっとあり得ない。大体、費用が掛かりすぎる。二人で往復五万では済まないんじゃないだろうか。なに? 青春十八きっぷがあります? 五枚つづりで一万数千円。五枚つづりだから、お釣り来るんじゃないですかって? ……これでもそこそこの鉄分は入っているんだ。それは学生時代にすでに経験済みだ。始発で出発すれば、おそらく郡山までたどり着くことは可能だろう。ただし、到着は夜になる。一泊して翌日に訪問して、翌日また在来線を乗り継いで帰ってくるというスケジュールになるが、それはそれで、厳しいものがある。俺があと、十年若ければ問題なく行くのだが……。
そもそもなんで、福島県郡山市なのか。話を聞いてみると、周防のお父上のつながりなのだという。実家の父に相談したら、この二社を紹介してくれたらしく、それはそれで、彼女を連れて行かないとマズイことになる。
ただ、社内的には、福島県郡山市というのは、本社管轄だ。本社の連中からすれば、ウチのシマでなにを勝手なことをしてくれているんじゃいということになる。支社の、一介の課長がそんなことをやらかしたとなると、俺の出世に大いに響く。まあ、そう出世する気もないし、これ以上出世の見込みもないのだが、ただ、これがモトで辺鄙な営業所に飛ばされるのはちょっとゴメンだ。
さてどうしましょう、と部長に相談する。眉間に深い皴を刻み、腕を組んで天を仰ぐ部長。しばらくすると、何とかしてみる、と小さく呟いて、彼は眼を閉じた。
結果的に、どこをどうしたものか、俺と周防は晴れて(?)福島県郡山市の企業に訪問することになった。さすがは部長と思う俺と、余計なことをしてくれたと思ういけない俺とが心の中で鬩ぎあい、なんとも言えない気持ちで俺は出張の準備を進めるのだった……。




