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新規アポ

周防がこの会社に入社して一年がたった。我が神戸支社は、何の変化もなく、これまでと同じ体制、同じ仕事を継続している。周防は本気で主任に昇進できると思っていたらしい。どうして私に役職がつかないんですかと言ってきて、さすがにこれには呆れてしまった。


「あのなぁ。ウチの会社では役職によって与えられるミッションが違うんだ。自分の仕事をできるようになって初めて主任という役職が与えられるんだ。常に俺や尾関の指示を仰がねばならないお前さんに、主任という役職は早すぎるよ」


周防は憮然とした表情を隠そうともしない。


「まあ、三年勤めれば誰でも自動的に主任になるから、その点は心配しなさんな」


俺はフォローを入れたつもりだったが、彼女には伝わらなかったようで、プイっと踵を返して自席に戻ってしまった。


それから数日後、周防は何と、新規の顧客を開拓してきた。しかも、二件もだ。また勝手なことをしやがって、と思うと同時に、やればできるんじゃんという何とも複雑な感情が心の中に渦巻く。


ただ、せっかくアポを取ったのだ。それを無下にすることはない。一体どこの会社だと聞くと、


「郡山です」


ああ、奈良県大和郡山市ね。もう、周防も入社をして一年が経ったのだ。ここはひとつ、一人で行かせてもいいかもしれない。そう思った俺は、部長に相談してみることにした。


しかし、帰ってきた答えは、一人で行かせるにはいかにも怖い。お前が同行しろという無情の決断だった。仕方なく、俺も一緒に行くからと言い、スケジュールを調整する。しばらくすると、周防が俺のデスクにやって来た。


「郡山まで何で行かれますか?」


大和郡山に行こうとすると、電車ならば近鉄線かJRだ。どちらも乗り換えをしなければならないし、約一時間半程かかってしまう。神戸からレンタカーを借りて車で、とも考えたが、それでも同じくらいの移動時間がかかってしまう。費用面を考えれば、JRで行った方が安そうだ。


「少し時間はかかるが、JRで行こう。それが一番安そうだ」


「じゃあ、新幹線ですね」


「新幹線? 何を言っているんだ?」


「じゃあ飛行機ですか?」


「バカか。大和郡山に行くのに飛行機を使うやつがあるか」


「何を言っているんですか、課長。行くのは、郡山ですよ」


「だから、大和郡山だろ?」


「違います。郡山です。福島県郡山市です」


……なんでそんなところに、アポを取った?

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