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マスコット転生  悪の組織に召喚され、魔法少女のマスコットに転生しました。  作者: sirosugi


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10 卵、精霊ファーストな世界に、引く。

魔法少女with卵

「きひひひ、複数の適正を持つのは立派な才能だけどな。あれじゃ、宝の持ち腐れた。鍛冶師や技術屋からすると、喉から手がでるほどほしいけどな。」

 炎と土っていうのはそういうものなのか。

「デイーは、学科も実技も優秀なのですが、魔法の射程が極端に短いのです。」

 とリランカさんの補足が入る中、訓練場では、デイーことスポコン少女が、縦ロールと数人の少女にからかわれていた。

「デイー。アナタ、むいてないんじゃない?」

「リランカ様が来たからって、無理に射撃場に来ることもなかったのに。」

「そもそも、火と石の魔法少女なんて聞いたことがないわ。」

 アドバイス、というには少々過激な言葉。対するデイーも間違ったことではないので黙ってうつむくしかない。ただ、悔しそうに拳をぎゅっとしている。

「努力は認めますけどね、デイビスさん。あなたのしていることは無駄な努力ですわ。あなたは魔法少女に向いていません。この場所にふさわしくないとお気づきにならないの?」

 場を主導していうのはエーベル。縦ロールの髪をバサッとしながらデイーに詰め寄る姿は、嫌味を言うお嬢様といった感じ。

「エーベル、さすがに口が過ぎるぞ。」

「ぐっ、すみません、リランカ様、ですが、彼女の適正が魔法少女に向いてないのは事実ですわ。無駄な努力はやめて、他の道を探すべわ?」

 ただし、半分は正論です。

「デイーの適正のことじゃない。魔法少女に向いてるかいないか、それを決めるのはお前じゃないといっているんだが?」

 あれれ、なんかリランカ様が怒っている?というかいつの間に会話に加わってるの、今さっきまで横に座ってたよね。

「きひひひ、リランカは精霊至上主義なところがあるからな。あの嬢ちゃんの言葉気に入らなかったようだ。」

 ええ、そこで怒るの? 厄介オタクじゃん、怖い。

「私たちにできることは、魔法少女に選ばれるべく己を磨くこと。他人を批評して精霊様の判断に口をはさむというのは、傲慢だぞ。」

 でも、適正試験とか訓練場とか作ってない?

「選抜されず、在野で働いているものが精霊様と契約できた例もある。自分たちが選ばれたものと驕るようでは、精霊様は見向きもしない。」

「ぐっすみません。」

 なんという精霊ファースト。精霊の下に平等って考えなのかな?

 でもまあ、あの子も悪気があって言った感じはしないんだよねー。言い方はあれだけど。


「ああ、ちょっと、リランカさん、それくらいにして、俺を紹介してくれませんか?」

 ちっと見てられなくなって、俺は正体を明かすことにした。

「「「「、えっ?」」」」

 ベンチから訓練場に届けるように声を張り上げる卵。耳が捉えた音と視覚情報が一致しないことに魔法少女たちが驚きの声を上げる。

「あっ、リュー殿。申し訳ございません。このような醜態をお見せすることになって。」

「いえいえ、別にきにしてないですから。それよりも皆さんにご紹介いただけますか?」

 さらなる追い打ちは、そんな卵にかけよりペコペコと頭を下げる偉大な先輩魔法少女。長ーいお説教が始まりそうな気配だったから、ギャップがひどい。

「リランカ様、その卵、しゃべってないっすか?」

「デイー、失礼だぞ。」

 だから怖いよ、その態度。

「まあまあ、俺は気にしてませんから。正体を隠していたのは俺ですから。」

 正体を隠しているお忍びの場合、不敬罪は立証されませんよ。

「わかりました。ごほん、一同集合。」

「「はい。」」

 即座に動いたのは、デイーと縦ロールのエーベル。他の見習いさんが状況に混乱している中、切り替えが一手早い。

「こちらは、この度新たに召喚に応じてくださった精霊のリュー殿だ。恐れ多くも契約のパートナーを所望されている。一同の失礼のないように。」

「・・・きゃああーーーーー。」

 集まった魔法少女(見習い)たちは、リランカさんの言葉に、一瞬ぽかんとした後で、爆発のようにいろめきだった。

「精霊、まさかこんな時期に?」

「ヱンペル様を見れただけでもラッキーと思ったのに、まさかフリーの精霊様なんて。」

「かわいい、卵ってことはこれからかえるのかしら?」

 あれだねー、可愛い猫とか犬を目の前にした女子高生みたいなリアクションだ。上司リランカさんがいるので群がるなんてことはないけど、キャーキャーと制御不能な感じがまさにそれ。

「あなたたち、落ち着きなさい。」

「そうっす、リュー様に失礼っす。」

 ここでも2人の言動が目立つ。ちらちらと俺を見つつ、騒ぐ仲間を諫めている。ただ、興味津々という気配が隠せていない。そして、俺を抱えるリランカさんの腕の力が怖い。

「ああ、デイーさんだっけ、先ほどはどうも。さっきみたいにまた持っていただいてもいいですか?」

「は、はいっす。」

 緊急避難だ。これは緊急避難。

 リランカさんが何か言う前に、俺はデイーさんを呼んで、抱えてもらう。

「デイー、くれぐれも失礼のないように。」

「はいっす。」

 リランカさんの言葉や、訓練場に入っていた時に抱えていたことを見ていたこともあり、デイーが俺を抱えることに不満を口にするものはいなかった。

「リュー殿、先ほどは失礼しましたっす。まさか精霊様だとは思わなかったす。」

「まあ、見た目は卵ですからね、気にしてないっすよ。」

「ちょっとデイビスさん、あなた、何をしたんですか?」

「いや、ちょっと美味しそうだなって思っただけっす。知らなかったんっすよ。それに今のエーベルもわりと失礼っす、まずは挨拶っすよ。」

 うん、正直だな、この子。それで頑張り屋か・・・。

「そ、そうでした、は、はじめまして、精霊様。アンナ・フォン・エーベルヴァインと申します。若輩ですが、火と雷の適正をもっています。」

「自分は、ヘサカ。コルディナ・デイビスっす。適正は・・・火と土っす。」

 そして、2人の自己紹介をきっかけに、他の魔法少女も群がってくる。

「シモーナ。アンツォ。マルシーリです。適正は水です。」

「サラ・ルメイ・ベネットですわ。適正は火です。」

「ガブリエラ・マン・マーズです。適正は土と水です。」

 うん、とりあえず覚えきれない。

「ちょ、ちょっとまって順番、順番にお願いします。覚えて切れません。」

「「「「「はい、わかりました。」」」」」

 あわあわと、お願いすると、異口同音で答えて彼女たちは一列に並んだ。なにこれ?推しのアイドルの握手会ですか?めっちゃ統制とれてる。

「ここで、下手な真似をして、ゴキゲンを損なわれたらまずいですから。」

「少しでも精霊触れ合いんっすよ、みんな。」



デイー「なんかリュー殿をもっていたら、身体が軽い、卵パワーすごいっす。」

リュー「何もしてないよ?なにそれ、怖い。」


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