第3話 実力テストとランキング
夏休み明け。実力テストが行われていた。
時計の秒針がコツ、コツ、うるさい。
北高を志望する受験生は、年々減っていた。なんとか受験生を集めるため、北高は"進学校化"を目指している。
北高の手厚い奨学金制度は、そのためだ。
七海も、この奨学金が目当てで北高を受験した。
北高のテストは、特待生のレベルに合わせてある。そのため、特待生ではない一般の生徒にとっては難しすぎる。
結果として、一般組の多くが赤点になる。そして、補習。ただし補習を受ければ、単位はもらえる。
七海のすぐ後ろの席で、御影がペンを走らせていた。
答案用紙を、後ろから前の席に送るとき。
普通は、裏面を上にして前の生徒に渡す。御影も、そうしていた。
裏面は、白紙のはず。しかし、御影の生物の答案だけは異様だった。裏面までびっしりと、小さな文字で埋め尽くされていたのだ。
◇
実力テストから1週間後、結果が出た。
成績上位者の一覧は、昇降口にある掲示板に貼られる。
学年別、総合上位20名の名前が並ぶ。その横に、教科ごとの上位3名の名前も張り出されていた。
七海の名前は、総合4位にあった。奨学金の条件は"学年上位"である。
——まだ、北高にいられる
夢咲「さすがだね、七海!」
美月「いつも、勉強、頑張ってるもんね」
七海は総合順位から、教科別のランキングに視線を移した。
英語 1位 御影 蓮 98点
2位 藤咲 七海 78点
3位 赤山 鈴鹿 77点
数学 1位 御影 蓮 94点
2位 佐藤 隆弘 72点
3位 井上 あかり 71点
理科 1位 御影 蓮 100点(生物)
2位 高松 明日香 70点(化学)
3位 藤咲 七海 68点(化学)
御影の名前が3つ、教科別の1位に並んでいた。得点は、どれもほぼ100点だ。2位、3位との差も目立つ。
生徒A「あの、背の高いやつだよね?」
生徒B「白嶺からの転校生?」
生徒C「髪が長くて、キモい感じの子?」
だが総合順位には、御影の名前がない。
生徒A「え、御影ってやつ、総合にいない?」
生徒C「英数理、ぜんぶ1位なのに?」
生徒B「他、やらかした? っていうか、白紙で出してない?」
総合順位は、全教科の合計で決められる。つまり御影、国語と社会は、ほぼ0点でないと計算が合わない。
夢咲「転校生、やっぱり変なやつだな……」
教室に戻る途中、七海は、ペンケースから小さな付箋を出した。『以前、どこかでお会いしましたか?』と書いた、あの付箋。
◇
放課後。教室は西日に染まる。
窓の外に、渡り廊下を歩く影がみえた。御影が、図書室に向かうところだった。
御影が手にしていたのは、分厚い、英語の科学誌。「こんなの、誰が読めるの?」と、みんなで笑った"あの本"を持っている。
生徒D「御影くん、総合には名前なかったよ」
生徒E「でも3教科1位って、やっば」
生徒F「キモけど、気になるよね」
けれど、まだ誰も御影に話しかけない。話しかけにくい雰囲気を超えて、強烈な異物感があったから。
——ほんとうは、どんな人なのかな
第3話まで、こうしてお読みいただけたこと、本当にありがたいです。嬉しいです。
少しでも、読めるところがあったなら、是非ともリアクションや☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。
さて。
まだ、論文を介した対話に至っておりません。技巧的には、早めに論文を出すべきなのでしょう。しかし、まずは人物像をしっかりと固めたかったのです。1本目の論文が登場するまで、もう少しだけ、お付き合いいただけたら幸いです。
引き続き、よろしくお願い致します。




