木登りで全ての枝に必ず足を置くルール
「という夢をみたのさ」
「へえー。夢の中でもオールEはつらいね」
広場のベンチに座ってチラつく雪の中、サヤに昨日の不思議な出来事を話せるところだけかいつまんで話した。
「そう、夢の中でもなんだよね。なんで私のステータスは変わらないのかなあ」
(お昼寝しかしてないからじゃない?とは言えない)
アイシャの口にした疑問はサヤに気を遣わせるばかりだ。
「でもね、アイシャちゃんはそろそろBくらいかなと思うの」
フフっと艶かしい笑顔でアイシャの顔を覗き込みながら言うサヤ。
「ま、まあそれは置いといて」
(幼馴染が変な方向に積極的だ。聖堂で“生誕の儀”を受けた頃なんてこんな事は無かったと思う)
「置いとくの?」
(幼馴染がまともだ。聖堂で“鑑定”の結果を見てお尻をフリフリしていたあの子が、今は会話の寄り道を否定した)
それぞれに、相手に思うところがあるようだが、それも仲が良いからであろう。
「まあ本当なら嬉しいんだけど、今はステータスだよねぇ。ちなみにサヤちゃんって今どんな感じなの?」
「私? 私は、まあ普通かな」
そう言ってギルドカードをアイシャに見せるサヤ。
サヤ
力 C
体力 C
器用 D
俊敏 D
知力 C
精神 E
適性 剣士
職業 剣士見習い
技能 剣術中級
「ええ? Cがある……」
ギルドカードにはステータスとスキルツリーの記載されている面があり、それぞれが持ち主とリンクしており自動更新される。
なお、スキルツリーが記載されている方には所持スキルの記載もあるが、確認するためには4桁の数字入力がいる。
そのため他人が簡単に見れるのはステータスの面だけとなり、本人の運用によってはそちらもパスをかけられる。
「私のと全然違う……」
アイシャのステータスはオールEのため、わざわざ書くこともない。けれどサヤが反応したのは裏面のスキルツリーの方だった。
「ええ? アイシャちゃんのスキルツリー、なんでこんなに解放されているの?」
聖堂教育で一般的なやり方と教わっているサヤはスキルツリーを下から必要なものだけを取ってなるべく上へと進む育て方をしている。その結果としての中級であるが、アイシャは下、つまり根っこから手当たり次第に取っている。
適性など関係なくステータスアップ系も耐性も全て。アイシャはこういうのは基礎から全部修めないと気が済まないタチだ。その上で中級である。
「ほんと。サヤちゃんはどんどん上に進んでるんだね」
「いや、普通これでも聖堂教育でもらえるポイントでギリギリなんだよ。むしろなんでアイシャちゃんはそんなに取れているのか謎だよ」
あの時。狐狩りの時に銀狐を欲しがった面々のその理由は何も素材だけのことでは無かった。フレッチャがスキルポイントに捧げて変換したときにそのポイントの量に驚愕していたのだ。マケリでさえ素材として手元に置くか捧げるかを迷ったほどだ。
アイシャは自然と潤沢なポイントの理由が分かって、またしても他と違う進み方をしていたと知る。
「け、けどそれならなんでオールEなのかな」
「魔物。狩っちゃう?」
「オールEには厳しいかな」
「大丈夫、フレッチャちゃんも誘うよ」
「……はい」




