2人の遅い朝食
「おー、よしよし」
アイシャは未だに何も身につけていない恰好で背中から抱きつくサヤに慰められている。
(一体何をさせたかったんだろう、あの声の主は)
涙目で考えているのはひたすらそれだけだ。よしよしと言いながらサヤが撫でているところが頭ではないことも気づかない知力E。
「とりあえずパジャマ着ようかな」
「え? じゃあまたアイシャちゃんの“パジャマ作成”が見られるのね」
アイシャは普通の布のパジャマを着るつもりだったが、もともとそれを期待している幼馴染の言葉に「それもアリか」と呟いて着ぐるみパジャマをもう1着作ることにした。
「ちょ、ていうかサヤちゃんはどこを撫でてんのさ⁉︎」
「あは、ばれちゃったー」
「“パジャマ作成”」
名前を口にするたびにそれが技能として正しいのかと疑問は絶えない。
しかし枕やぬいぐるみの時もそうだしベッドだってそう。目の前で作られる光景は、人の手を介さない特別なものであることは確かだった。
そして今回はいつもより特別でもあった。
前回にサヤのパジャマを作った時もそうだが、基本的には適当なサイズの穴がストレージから中空に現れて、そこから素材が出てきたのが紡がれる。
しかし今回は“アーリン”で散らばった“元着ぐるみパジャマ”が集まって元通りにしてしまった。
「おお……アイシャちゃんこんな事も出来るんだね」
「私も意外だったよ」
「もしかしたら同じ素材が外にあればそれで作られるのかも知れないね」
「なるほど。そういうことかな? とりあえず着るね」
「ええー、もうそのままでもいいよ?」
「だって寒いし」
「私があっためてあげる」
せっかくの申し出は丁重にお断りして着ぐるみパジャマ姿になったアイシャとサヤは同じ布団に潜り寝る体勢になる。
「ところでサヤちゃん、私のより少し大きめのベッドの端になぜかぬいぐるみが敷き詰めてあって狭くなっているのは仕様なの?」
「うん、これはもうそういうものなんだよ。仕方ないから狭いけどくっつけば大丈夫だから我慢してね」
(確信犯だ……)
それでも口にはせずアイシャは頷き、2人仲良く眠ることにした。
翌朝目が覚めたアイシャはお互いを抱き枕にしている体勢に熱いため息がこぼれたが、サヤが起きるまではこの状況を楽しもうと思いそのまま目を閉じた。
そしていつの間にか寝ていたアイシャが次に目を開けた時には既に日が高く昇っていて、慌てて寝たふりをするサヤを起こして遅い朝食をご馳走になる。
「起こしに行ったけど、サヤが聖堂教室は昨日でお休みになったからって起きてこなかったのよ」
サヤのお母さんの証言にサヤは目を逸らして鼻歌で誤魔化そうとするが机の下で足をペシペシと叩くとサヤは「てへっ」と舌を出して頭をコツンとしていた。
パジャマ交換も済ませてサヤのお家を後にしたアイシャはすぐそばの自宅に帰り着き、早速そのパジャマを着てお昼寝士らしくベッドに転がり目を瞑る。
「私も人のこと言えないよね」
サヤの目論みに乗っかったアイシャではあるが、同じくらいに楽しんではいたんだから。
「本当、君は変な子になったね」
室内に現れたシルエットは今回、アイシャが前世で通っていた高校の制服を着ていた。
次から説明回に入ります。とはいえ設定ばかりの退屈な感じにはしないように、するかと思いますよ?




