弾けたっ! 憧れの曲線!
「なんでえ、嬢ちゃんたちのその恰好は」
遠巻きに見る子どもたちを差し置いて始めに声をかけたのはベイルだ。
「おや? 欲情した?」
「するか。しかし……そんなとんでもねえスタイルをしていたか?」
「アイシャちゃんと私は元からこうですよっ!」
ベイルの疑問に答えるサヤはアイシャに後ろから抱きつき衆目の中で揉みしだいてみせる。
「お、おう……けどほどほどにしとけよな?」
目の前で行われる痴態に大人のベイルは若干ひきつつ手を振ってシッシとあしらった。
「2人ともなんでお揃いの着ぐるみパジャマで歩いてんの……って何がどうなってんの」
「すんごいエッチな2人なのですっ」
「え、え、え、エッチじゃないもんっ?」
フレッチャに見つかりカチュワが恥ずかしがりサヤも途端に顔を真っ赤にして否定する。
「ふふん。これが私の、私たちの真の姿なのだっ!」
アイシャだけが憧れのボディを手に入れたのだとその艶めかしい身体をたゆんたゆんと揺らして喜び、図らずも男子たちにケモナーの扉を開かせようとしている。
そんなアイシャとサヤが波打ち際をワンワンと吠えながら走って追いかけて戯れあって揉みしだいて遊んでいる。
フレッチャとカチュワも自前のそれで参加してみんないいサイズの上と下を堪能するかのようにして砂に塗れ水に塗れと遊んでいる。
「うん? アイシャちゃんたちのその服っ!」
そんな浜辺にはアイシャから強力な武器を受け取った欲望の権化マケリお姉さんが幅をきかせており、2人の着る銀の着ぐるみに反応しないわけがなかった。
「あっ、マケリさんっ。どう? 私のこのナイスバディっ!」
マケリに見つかったアイシャだが、つまらない閃きで手に入れたスタイルに夢中で獲物を狙うマケリお姉さんの視線に気づかない。どころか、たゆんたゆんと揺らしてアピールさえしている。
「私にっ、よこしなさぁーいっ!」
ガシャコガシャコと大型の水鉄砲にエネルギーを装填するマケリ。形状としては圧力を加えて噴射する水鉄砲だが、アイシャ特製のそれはまたしても中に魔石を仕込んでいてそこから魔力を供給する、使用者にとって省エネで誰でも強力に噴射出来る機構となっている。
そんなアイシャ特製の水鉄砲の最大威力。とはいえお遊び用のそれはフェルパの持つものよりも格段に弱いのだが、このあとの悲劇を引き起こすには充分であった。
「うわっぷ、やめっ、やめれーっ」
「いやぁ、マケリさんの水鉄砲はなんでそんなに強いの⁉︎」
アイシャとサヤを襲う水流は確実に2人を捉えて激しくぶつかる。それは2人の身体をブルブルと小刻みに震わせ続け、やがて開いた胸元から青いゲル状の塊を天高く打ち上げた。
「ん? なにあれ……」
ボトン、ボトンと砂浜に落ちてプルプル震える青い塊。
「ああっ! アイシャちゃんのおっぱいが弾けたっ⁉︎」
「サヤちゃんまでもが……し、萎んだっ⁉︎」
「そんなっ……あうっ」
「お、おいしっかりしろルッツ……し、死んでる?」
さすがに死にはしていないルッツだが、気を失うほどにショックな男子ズ。
アイシャのつまらない思いつきは地下で仕留めた巨大ウミウシの魔物の中身をどうにかして着ぐるみパジャマに詰め込んで作るボディスーツであった。
大泥棒をとりこにしそうな憧れスタイルはマケリの放った水鉄砲の水圧に負けて失い、今はブカブカの着ぐるみを着たアホの子とその幼馴染が水に濡れているだけだ。おかげでびしょびしょになりながら、肩まではだけてしまっている。
「ああぁ〜っ、私のナイスバディがぁっ」
砂浜にしゃがみ込んで泣き喚くアホの子。サヤも同じようにボディスーツを失ったのだがアホの子ほどに執着しているわけでもない。アイシャを慰めるのは自分とばかりに頭をヨシヨシしている。
「これってもしかしてベイルを捕まえたあの?」
砂浜に落ちたそれを摘み上げたマケリは何故こんなところに、と思いつつ謎の魔物の一部とはいえ持って帰っていた事に驚嘆する。しかもそれでこんな遊びをするとはと妙な感心までも。
「ねえ、アイシャちゃん。この素材なんだけどさ──」
「マケリさんがいじめるぅ〜っ!」
「いや、ね? この青いやつなんだけどさ」
「せっかく手に入れたのにぃ〜っ」
わんわん泣くアイシャにマケリの質問などは届かない。ボディスーツの中身について詰問されると感じたアイシャの泣きまねだが、可哀想に、となでなでするサヤもいることからこの場でそれ以上の追求はなかった。
「萎んでもうたけどよ……なんていうか」
「アイシャちゃんはそれでもいいんだよ」
「うん、もっと近くであの2人の胸元を覗きたいけど」
「やめとけ。ここから目に焼き付けるのが限界だ」
アイシャのそばにはフレッチャとカチュワもいる。それ以前に他の女子たちもいる。水に濡れた身体を胸元まで晒したアイシャとサヤを離れたところからじっと見つめるので男子ズには精一杯であった。




