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異世界で女の子に転生した彼の適性はお昼寝士 新しい人生こそはお気楽に生きていくことにするよ  作者: たまぞう


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虹の下、舞い踊るアイシャ

「んんっ、ふぅ〜っ、はあぁっ!」

「何? 大魔王を封印する儀式でもしてるの?」


 お昼寝館で朝から気合いの入った声を上げるアイシャにルミのよく分からないツッコミが入る。


「そんな予定はないよ。ただ──」


 ぽんっ。


 アイシャの返事より先に儀式の結果が訪れた音がする。コルク栓を抜くような軽快な音とともに現れた結果は一本の槍である。


「頑張ったんだよ、頑張って時間がかかるように踏ん張って……」

「ああー……」


 お昼寝士の技能で作成したベッドやパジャマは初めての時からオートでとってもファストにクリエイトされていて、それはサブ職業とでも言うべき武具製作にも適用されるようである。


「便利なんだよぉ、便利なんだけど、今はそうじゃないんだよぉ」


 お手軽ワンアクションでオナラをするように槍が出来上がって嘆くのは世界広しといえどこのアホの子くらいのものだ。


「素材があればちょちょいのちょいとか、この世界だって牛耳れそうなのに」


 日課の朝の水やりでルミちゃんキャッスルには虹がかかっている。


「そんなことした日にはきっとあのバラダーに捕まって地下牢で死ぬまで酷使されるわよぉ」

「大金持ちとか王様とかに召し抱えられるとかじゃないんだね」


 こと労働に関してはネガティブ思考に行きがちなアイシャ。


「ならアミュレットを試してみればいいんじゃない?」


 ルミちゃんキャッスルの虹が2本になって幸せなルミ。


「は?」


 思いもよらぬ提案に感情を失うアイシャ。


「──だってさ、そのアミュレット“偽りの正義”はママの隠したい秘密を隠ぺいしてくれるんでしょ? オールEみたいに」




「わあっはっはっはっ! 見てよ、このゆっくりさ! ほら、こんな風にカンカン叩いてもまだ出来上がらないよっ!」


 試しにと、手のひらに具現化させたアミュレットを握りしめて「クラフトのスピードを誤魔化したい、誤魔化したい」などと繰り返し呟いて念じたところ、ギルドカードのクラフト関係の技能全ての表示が青くマークされたので試したところ今はノリノリなアイシャである。


「ダメ元で言ってみたのにまさか出来ちゃうなんて、ね」


 アイシャの高笑いが止まらない。アイシャのストレージから飛び出した鉄塊はひとりでに徐々にその形を変えていく。熱さえ必要としないアイシャの武器製作だがそれでも窯の前でフリをすれば誤魔化せるかもしれない。


「あとでその辺のリアリティも追求出来ないか試してみよう」


 まだ製作過程のロングソードはサヤにあげるつもりだ。フレッチャやカチュワにあげたものみたいな特別製ではない。


「普通の鋼の剣だけど、サヤちゃんなら喜んでくれると思うんだよね」


 武器で強くなる必要はない。努力で鍛え上げるサヤにプレゼントするには1番であろう。チョコレートよりも喜んでくれるはずだ。


「水をかけたら成長しないかなー」


 ルミはジョウロに残った水を自動で形を変えていく鋼にかけて遊んでいる。


「そんなんで伸びたらそれこそ困るよ」


 ましてや炎の中に突っ込むことも出来ないとアイシャ。


「ほら、虹がかかってるよ。ママ、虹! 虹だよー!」

「本当、綺麗だね。私の成功を祝福してくれているようだよ」

「今回は大成功だもんね。あ、水が……虹が消えちゃう」


 ジョウロは普通のもので当たり前に使い切れば空っぽになる。


「祝福の虹かぁ。消えていくならこの剣をたっぷり祝福してちょうだいな」


 薄くなる虹はやがて見えなくなり、その頃にはダントツで遅い仕上がりのアイシャ作、サヤちゃんソードが出来上がった。


「これで職人ギルドにも行けるようになったよね」


 サヤに渡す予定のロングソードはストレージに保管して、提出する実績にはさっきの槍を使う予定だ。


「戦いから離れる第一歩になるといいな」


 課外授業を回避したところでチーム“ララバイ”には内定しているというのに、目先のことですぐに忘れるのが実にアホの子らしいアイシャであった。


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