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異世界で女の子に転生した彼の適性はお昼寝士 新しい人生こそはお気楽に生きていくことにするよ  作者: たまぞう


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野原に咲く花

「おおう……これはいったい何事」


 目を覚ましたアイシャは自身の身体では到底届きもしない高さの視点から見下ろす景色に唖然としていた。


 夢見心地に浮遊感を感じて固い地面に降ろされたのかと思ったら突如として起きた地震に飛び起きたのだ。上下する地面はゴツゴツとした鈍色の岩肌。それが岩大トカゲの背中であると気づくのにそう時間は掛からなかった。


「まさか寝ている間にモンスターに拉致されるとは思わなかったよ」


 “寝ずの番”が使えなくなったのかとも疑ってみたが、よくよく考えればこの岩大トカゲには出会ったその時から反応していなかったのだ。


 つまりは最初から敵ではなかったのだろう。そして今こうしてアイシャを運んでいる理由にも敵意も悪意もないという事だ。


 この巨体は湖畔をぐるりと回ってさっきまでアイシャのいたのとは反対側まで歩いてきた。その先にはこの岩大トカゲが十分に通れるサイズの道があり、アイシャなどからすればもはや巨大なトンネルである。


「そういえばこの灯りってどうなってんのかな」


 さすがに狭い通路の先が見える程度から広場全体まで見えて水中の魚まで見えていたのだからさすがにおかしいと気づいている。この巨大なトンネルでさえ全体像がはっきりと見えていて、その出口なども見通せないほどに続いている。


 アイシャの呟きが聞こえたのか岩大トカゲが一歩を強めに踏み込むと、トンネル全体に地響きが伝わりミミズのようなものがいくつか落ちてきて、それはアイシャの乗る岩大トカゲの背中にも降ってきた。


「うわっ、なにこれ。んん? ミミズ──にしても太いしそれに光ってるのね。あー、なるほど。ここの洞窟のあちこちにこれがいて、そのおかげで明るくて……うわぁ、気持ち悪い」


 頭なのかお尻なのかぼんやりとした橙色の光を放つミミズがのたうちまわり岩大トカゲの背中を滑り落ちていく。そのうちのいくつかは珍しいもの好きなアイシャのストレージに消えていく。どうやら生物というよりは物扱いのようだ。


 岩大トカゲはその脚を止める事なく歩き続けてやがてトンネルの先に別の広場が見えてきた。




 たどり着いた空間には先ほどまでとは違う青白い光で満ちている。足元には一面の緑。降り立ったアイシャはそれが全て芝生のように短く生え揃った草であることを確認して歩いていく。岩大トカゲはすでに丸まって大人しくなっている。


「ここから染み出した水がさっきの湖をつくっていたのかもね」


 近くの壁は上の方から水が絶え間なく流れ、足元の地面に吸い込まれていってる。触ればひんやりとして飲めば疲れも癒してくれそうなまろやかな舌触り。飲み水にちょうどいいと、これもアイシャはストレージに収めておく。


 さっきの広場と違って一面の緑と壁に広がって流れ落ちる水のほかは目立つものはなく、アイシャの散策もすぐに終わりを迎える。


 天井を見回して歩くアイシャの顔に優しい光があたる。その出どころを探せば洞窟の天井の真上よりは少しズレたところに斜めに開いた穴があるように見える。その先には遠くに見える満月。


 その満月の微かな光が照らす先はアイシャではなく緑の地面の一箇所。そこにすずらんのような花が咲いているのをアイシャは見つけてそばに座り込んで眺めてみる。


 下を向いた小さな花たちはそれぞれに光を湛えていてとても可愛い。鉢植えにして部屋の机の上に飾ると綺麗かなとアイシャは花のひとつを指でつんつんとしながら考えている。


「あら? 珍しいわね。ここに他の人がいるなんて」


 “寝ずの番”はちゃんと機能していて教えてくれていた。警報というよりはお知らせのそのアラームはこの来客が敵ではないと。


 声の主は真っ白な生地に氷の結晶のような模様をあしらった着物を着た女の人で、アイシャを物珍しそうに見つめていた。


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