取り調べの末に
「つい出来心でやってしまいました。今は反省しています」
薄暗いなか、そう口にする少女。
『まさかあの子がそんな事をするなんて──いえ元から変なとこはありましたけど種族の秘伝をああも堂々と遊びに使うとはっていう思いですね』(少女S)
『普段から奇行の絶えない子でした。それでもまだ一線は越えてなかったのに、どうして──』(少女F)
「いや、それでもその扱いはおかしいでしょ」
「じゃああの魔石をどうやって調達したのか言いなさい」
「私の買い物の話まで全部教える必要はないですぅ」
「ぐぬぬ……あの転移のアミュレットはっ?」
「エルフの里で買いましたー」
「エルマーナ、諦めろ。別に犯罪でもねえんだ」
「でもベイル! 今回はただの転移魔石だけだったから良かったものの、増幅魔石まで組み合わせていたりしたらっ!」
「エルマーナ……」
ベイルはやってしまったな、という顔でエルマーナを見る。その視線にエルマーナがアイシャの方を振り向けば「聞いたぜ、とっつぁん」という謎の呟きをするアイシャと目が合う。
「増幅ってなに?」
「それは……秘密よ。──あっ! 待ちなさいっ!」
アイシャはしくじったとばかりに狼狽えたエルマーナの隙をついてその場を逃げ出した。
そこからのアイシャの仕事は早い。エルマーナにより回収された水鉄砲は全て返金対応の末にアイシャのストレージに返っている。
「筒の中に魔石を仕込んで、押し出すのに合わせてプールから転移させ続けることでその量を増やしたわ。けど、増幅ね……あった、これか」
アイシャはお守り職人のスキルツリーから“増幅付与”を選び高いスキルポイントを支払い魔石を加工する。
「普段ならためらう数字だけど、これは大鬼さまさまね。あいつのポイントはそれどころじゃないもの」
「アイシャちゃん、この間の水鉄砲でこってり絞られたって……」
「まあ、きちんと説明したら釈放されたから大丈夫大丈夫」
(わたしが聞いたのと違うよぉ……)
2人はいま、街の外壁外の川のほとりにいる。北門を出てすぐ西にいけば森との境界に川が見つかる。そこを少し森側に入ったあたりだ。
「フェルパちゃんには魔道具がいいと思うんだ。だからほら、これ」
「ふわあ、なにこれ。きつねのぬいぐるみ!」
アイシャが取り出したのはぬいぐるみにカモフラージュした水鉄砲だ。もちろん魔改造済みの、である。
「このちんちんを握れば口から水鉄砲が出る仕組みだよ」
「ち、ちん……ち、ん」
「あ」
アイシャはつい楽しくなって、“寝そべった狐のここにグリップを付けたらもうアレじゃん!”とか言ってついそうしてしまったのだ。別に後脚をそうしても良かったものを。
「あ、やっぱりちょっと修正しようか」
「う、ううん。せっかくアイシャちゃんが作ってくれたんだから、大丈夫。よく見ると可愛いし」
(可愛いちんちん? フェルパちゃんは何を言っているのだろう)
アイシャ自身が露骨なのは嫌だとふわふわの棒にしたくせに酷い思考である。
「じゃあその“グリップ”を握れば出るから。強く握れば勢いよく出るからね」
「ち、“ちんちん”を強く握れば勢いよく……」
「そ、そこの木に向かってやってみよっか!
転移魔石は後ろの川に沈めているから!」
「かわとちんちんが勢いよく……」
ギュッ!
“きゅーっ!”
「あ、あぁぁぁぁ……」
「フェルパちゃんっ⁉︎」
「声は可愛いんだけど、そのちん、ち……魔力をごっそり持っていかれちゃった」
「まあ、この威力だもんね。きゅーっとか可愛い声出しておいてこれは、ね」
思いっきり握れば威力があがるというのは、使用者の魔力をそれだけ抜き取ると言うこと。そして威力を増幅された水鉄砲はアイシャが3人くらいでやっと手が回るサイズの木々を5本打ち砕いていた。
「いっぱい出してもうへとへとだよぉ」
「それは女の子の感想とは少し違う気もするけど」
アイシャのひざ枕でフェルパはくたびれて寝返りを打つ。
それでもフェルパはこれでアイシャたちと一緒に居られる喜びとまたひとつ秘密を共有できた幸せに満たされていた。
優しく握ったり強く握ったり……おっさんバージョンもこのあと掲載してます。
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