昼間に寝すぎると夜に寝られなくなるよ!
「なんだ嬢ちゃん、起きているのか」
「さすがに昼間ずっと寝倒してたら私もまだもう少しは寝れそうにないよ」
「あと少しすりゃ寝れるのかよ」
アイシャが寝付けずに外に出てきたのは実際のところは寝られないからではない。ある意味で寝られないのは確かではあるが、夕飯どきにパジャマ姿のアイシャと裏返しのカーディガンを着たリコが一緒に食堂にやってきた時から女の子たちのニヤニヤが止まらず、寝ようとしたアイシャの両サイドをサヤとフェルパが挟んできたために、風に当たってくると言って逃げてきたのだ。
そしてそんな玄関先にベイルが突っ立って空を見ているのも意外だった。
「何してるの?」
「あー、ほれ亜神の話……聞いただろ?俺も子どもの頃から何回か聞いたんだが、あのマンティコアの存在はやはりそうなんだろうなって思うと、あの星々の様に俺たちを見下ろしているのかとな」
「そうらしいね」
アイシャは今回も貞操? を守り抜いた。一線は越えていないと思っている。そんな攻防を見られてるかもと思うとやはり腹が立ってくるが、こんな夜中に叫ぶのはさすがにやめておいた。
明日になればみんなでシャハルの街に戻る。そこにはリコというゲストも付いてくるが。
「今回は本当にもしかしたらってのもあったのかもね」
「あん? なんの話だ?」
「小鬼に特攻した話」
「あー。それは、な。まあ、結果として無事だったんだ。俺もこれ以上なにも言わねえし報告もあげねえ。だから、お前たちは次に同じ状況になったときにどうすべきか、何が出来るようになるべきかを考えりゃいい」
月が優しく諭すモヒカンを照らす。
「そのためにフレッチャは弓をこれからも教わるしカチュワは剣を持つだろう。マイムはアミュレットで強化を図ったらしいが足りないと嘆いていたがな」
(そっか。マイムちゃんには何か作ってあげられたらいいかな)
「フェルパってのはどうすんだ? ありゃ戦闘要員じゃねえだろ」
「そうだね。サポート、とかは?」
「なるほどな。道具、魔道具での補助もありだな。けどコストが馬鹿にならねえぞ。その辺も考えておけ」
「うん。ありがとう」
「素直に感謝されると気持ち悪いな」
「たまには、いいじゃん」
「そうだな」
「なんでサヤとフェルパは寝ぐせだらけで嬢ちゃんはパジャマなんだ?」
翌朝ギリギリまで起きてこなかった3人は前日の夜にもみくちゃになって朝も遅くまで起きられなかった。その結果、女の子2人は髪を梳かす時間もなく爆発していて、アイシャは着替えすら諦めていた。
「まあ、嬢ちゃんもそうだが、“らしくて”いいわな。はっはっは」




