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異世界で女の子に転生した彼の適性はお昼寝士 新しい人生こそはお気楽に生きていくことにするよ  作者: たまぞう


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か弱き姿の乙女

「じゃあ始めようか」


 今回“偽りの正義”による装備はない。コカトリスよりも強いと思われ、ベイルも危険と見るそんな大鬼を相手にアイシャに不安がないわけではない。


「グオォ!」


 今度は飛び蹴りを繰り出す大鬼を横に跳んでかわし、反撃に出ようとしたところでアイシャは踏みとどまった。


(着地の姿勢。あんな脚とか反則じゃない?いま接近していたら後ろ蹴りでKOしたかも知れない)


 強靭な脚に漲る力。軽く曲げた形の膝はすぐさま後方でも左右でも襲い掛かるバネのよう。


 アイシャの反撃がないことを確認し、ゆっくり直立して振り返る大鬼は、首を鳴らしてアイシャを睨む。


「あんた最初っから私に油断してないよね……よほど小心者なのかな」


 アイシャはそう言うものの、この見た目と動きに惑わされる事なく、呪い人形が何かを瞬時に理解して即座に破壊に移った判断にこれまでの魔物と違うものを感じている。


 銀狐は格下ねらいの浅ましいレア素材。コカトリスはそれでもただの鳥だった。マンティコアの愚息は言葉の下手な人面犬。


(マンティコアとどっちが上? ううん。あれほどの規格外さはない。けど確実に他とは一線を画す魔物)


 大鬼が動く。体重と加速の乗った右ストレートはアイシャの身長に合わせた突きおろす軌道。外にはかわさない。内ににかわせば大鬼の正面だが、その大鬼の踏ん張る左脚は出せず左手は視界に収まっている。


 左のフックをしゃがんで避けてそこから垂直に跳べば大鬼の顔面がある。アイシャの右脚がこめかみを捉えるがフックの左手で払われ距離をあける。


 着地したアイシャに大鬼の左前蹴りが迫り、しゃがんでかわしたところに右の膝が襲いくる。


 ガードしたアイシャの腕に衝撃が走った。蹴りの威力と、これはマイムと遊んだ時に知った、魔力の伝わる感じ。


「ああっ!」


 たまらず声をあげて後ずさるアイシャは上着を脱いで大鬼に投げつける。


 ただの布きれなどかわすまでもないと胸で受けて大鬼は嗜虐的な笑みを浮かべる。


 アイシャはブーツを投げて後ずさる。ズボンが大鬼の肩にぶら下がる。シャツが大鬼の顔に貼り付く。


 その直前に下着姿でしゃがむアイシャを見ていた大鬼はいよいよこの憐れな人間の子どもを蹂躙する未来を確信し、笑みを深め声が溢れる。




 そして──目の前の憐れな獲物に油断した中で顔面に貼りついたシャツを掴んで払った大鬼の顔に、横薙ぎに振るわれた2本の鉄の棒がめり込む。


 いつかカチュワのオンボロ盾を破壊した時よりも本気の叩きつけ。


 助走をつけて飛びかかった勢いもプラスされた攻撃は大鬼の顔面から血を噴き出させてアイシャの銀ぎつね着ぐるみパジャマに赤い色をつける。


「卑怯とか言わないでね。こんなか弱い女の子相手に」


 大鬼の霞む視界に映るアイシャは両手によく分からないしっぽを持つ血の赤と銀のまだらな獣の姿で、その顔は醜悪な人面の獣。


(ふざけるな、少女の姿で誘い込む化け物ではないか)


 大鬼が人の言葉を解するかは分からないが、痛みに顔を歪ませて呻く大鬼はきっとそのような事を思ったことだろう。


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