森の異変とグレイ
「嬢ちゃん、な、なんか雰囲気かわったか?」
「そうね、なんかこう……絵のタッチが変わったみたいな。1人だけ劇画調みたいな」
アイシャはフェルパとひとしきり屋台を楽しんだ後片付けをして、さあ帰ろうというところで改めて3人に声を掛けられた。
シャイなフェルパが大人3人を前にしてはもう帰る以外の選択肢を失くして「今日は楽しかったよ、ありがとうね」と言って去っていったためにアイシャは少しお冠なのだ。
「アイシャ、疲れてるとは思うが──」
「ちがう」
「ん? 違うって何が」
「私の楽しみが去っていったの」
「楽しみ? 屋台のことか? まあもう昼飯って時間でもないだろう。時間が過ぎるのに文句を言っても」
「このおおおおおおおお」
「おい? ちょ、どうしたんだ一体?」
期待に胸を躍らせていた『彼女』の涙はアイシャから流れ出て、その影響を受けたアイシャはバラダーに掴みかかりぶんぶんと揺らすがベイルによって止められて肩に担がれ、そのまま森まで連行されてしまった。
「むっすーっ」
「不機嫌なのはわかるが嬢ちゃん、口で言うものなのかそれは」
「降ろして降ろして」
「ダメだ嬢ちゃん。降ろしたら帰るんだろ?」
「どうせ捕まるのにそんなことしないよ。それとも肩で私の感触でも楽しんでるの?」
「こんな鶏ガラみたいな身体に欲情してたまるかってんだ」
「ななな、なんだって! ちょ、このっ! あるだろ? あるよね? ね? ほら、ここだよ! この! 今肩に背中に! 押し付けてるから! あるよね! ね?」
「はいはい。柔らけえ柔らけえ」
「うわあ〜ん。私だって女の子なんだからぁ」
「ベイルやりすぎよ。降ろしてあげましょう」
「私は未確認生命体ではない」
「何か知らんがまた逃げるならもうこうするしかないだろ」
今度はバラダーとエルマーナに両側から抱えられるように宙ぶらりんのアイシャ。
「着いたぞ、ここだ」
そこは以前にバラダーとベイルが観察していたところで、アイシャが8歳の頃より蹴りの練習を重ねて来たところ。
「見覚え、あるだろ?」
「ううん、全く」
ろくな事がないのは明白。ならばすっとぼける事に躊躇などないアイシャ。
「まあ、いい。ここに澱みが発生したはいいが変化がなくてな」
「それが私と関係あるの?」
「それを確認しにきた。澱みにはその先に4つの現象が確認されている。動物なんかを取り込んで魔物になる。澱み単体で魔物になる。何もなく霧散する。あとひとつが──」
アイシャたちの前方で黒く渦を巻く池が盛り上がり形を変えていく。
「誰か、何かに反応して魔物になる、だ。ベイル、エルマーナ。緊急だ対処しろ」
タイトルのグレイは昔の宇宙人の写真のやつですね。“捕まった宇宙人”で検索して出てくるあの捕獲スタイルです。




