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異世界で女の子に転生した彼の適性はお昼寝士 新しい人生こそはお気楽に生きていくことにするよ  作者: たまぞう


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これはどこの地域の?

「へい、お待ちどうっ」 


 この日は休みでアイシャは朝から屋台をやっている。


「はいっお待ちどうさま」


 フェルパとふたり、街の広場でお好み焼きの屋台だ。


 生地を落としてその上に千切りキャベツ、謎肉の薄切りに天かす、紅生姜、生地。その隣に玉子割り落として生地一式を玉子の上にひっくり返す。


 そして火が通ればまた返してソース、マヨネーズ、鰹節、青のりで出来上がりだ。


「アイシャちゃんはお料理も出来るんだね」

「まあ、そんな大したものでもないけどね」


 エルフの一件からフェルパはアイシャと特別仲が良い。アイシャに対してフェルパの先輩から「ありがとう、私が卒業したあとのこと、よろしくね」と直々に頼まれるくらいだ。


 そんなフェルパの「アイシャちゃんと屋台がやってみたい」というお願いからこのお休みにこうして屋台をすることになった。


 アイシャもやってみて良かったのかなと思っている。恥ずかしがり屋のフェルパがそれでも接客をしているのだ。先輩から受け継いだとはいえ卒業すればそれまで。フェルパもいつまでも誰かの背中に隠れ続けるわけにはいかないだろう。


 そしてこの日は屋台をたたんだ後はアイシャの家でお泊まり会の予定だ。それはフェルパの頼みではなく『彼女』の頼みの方。日増しにその欲求が大きくなってきて『今回きりだからね』と言い聞かせてフェルパに的を絞ったのだ。


(あの中で一番セーフな気がするから。いつでもいいって言ってたし、ね?)




「嬢ちゃん、ちぃっと話を──」

「へい、なんにしやしょう?」

「おぉ? いや、そのー、あの森のことだがな──」

「肉? エビ? イカ?」

「あん? あ、いや肉玉ってのしかねえじゃねえか。それでいいや」

「へいっ! 肉玉一丁!」

「にくたま、いっちょうっ!」


 そこにいたのはいつものアイシャではなく、屋台の店主である。


「これが噂の屋台の味か」

 アイシャに話があって来たベイルは広場に置かれた丸太椅子と机でお好み焼きを食べながら「なるほどねえ」と呟く。


「アイシャ、ちょっと聞きたいことが──」

「へいらっしゃい!」

「へ、へい、いらっしゃいませ」

「アイシャ──」

「肉? エビ? イカ?」

「え、えっとじゃあ──って肉だけなのね。じゃあそれで」

「肉玉一丁!」

「にくちゃまっ! に、にくたまいっちょう!」


 そう、そこにいるのは屋台の店主とシャイなお手伝いの女の子である。


「何でぇ、魔術士ギルドのエルマーナじゃねえか」

「こんな美女と相席出来るのにご挨拶ね」


 屋台脇に設た丸太椅子と木のテーブルで男女がお好み焼きで相席している。そこにラブロマンスの予感は全くない。


「あなたもアイシャに用事が?」

「例の森のことだ」

「じゃあ一緒ね。局長に頼まれたのでしょ?」

「ああ、お前さんもか」

「ええ」


 ふたりともが同じ用事できたはずなのに、気づけば屋台で買って相席している。


「アイシャ─」

「へいらっしゃい!」


 相席の2人のところに追加される男。


「き、局長までなんで」

「様子を見に来てまだ話が出来てないのかと思ってな。俺が声を掛ければ大抵のやつは手を止めて話をするんだが」

「局長でもダメなのね。屋台モードに入ってるアイシャはそれ以外の会話を受け付けてくれないですからねぇ」


 男2人に自他ともに認められる美女がお好み焼きで相席しているが、そこに三角関係なラブロマンスはない。



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