レイドブレイク1
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よろしくお願いします。
「だめだ! 話にならん!」
都内某所の大会議室。そこには多くの人物たちが一同に集まっていた。ある人は某テレビ局のプロデューサーであり、ある人は某有名ゲーム会社のプロデューサー、ある人は有名配信サイト会社の社長であったりと、そこにいる人物は誰もが業界を引っ張る著名人たちである。
そんな人物が集まる会議室にて、1人の男が机を叩き声を上げた。
そこに集まる人物は皆間違いなく業界トップの人物であるが、それでもその人物に対し口を閉ざし、沈黙を貫いている。
「…………天ヶ瀬代表。もう一度確認させてください」
声を出したのはプロゲーマーチームに出資しているスポンサーの須川である。
「今回のゲームイベント"VR対戦型Eスポーツ施設クサナギ"のゲーム内容についての議論は既に済んでいたはずです。なぜ今になってその内容を変更すると申されたのですか」
「……何度も説明した通りだ。私も現在決まっていた種目で問題ないと思っていた。先日まではだ」
天ヶ瀬はそう言いながらテーブルの上のコーヒーを飲みほした。そして先日のニュースを思い出しまた頭が痛くなる。
天ヶ瀬の持つアマチは元々地球の神を主として様々な国へ手を伸ばすために作られた会社だ。表向きは世界にはびこる悪霊から身を守るための商品の開発から国の機関へ交通や農業を始めとしたライフラインなどを守る結界などの商品を開発していた。だが裏では呪いを収集し、神が望む星へと変えるための準備を進める組織という一面もあった。
だがとある男との衝突によりその裏の事業は完全に潰え、また地球から霊力というものが消失したことによってアマチの事業は実質的に消え去った。だが天ヶ瀬は豊富な資金を使い医薬会社の方へ舵を切り、現在は難病治療や障害を持った人の治療薬を研究する会社へと変わった。
元々天ヶ瀬自身が政界をはじめとした様々な業界へのパイプが強く、出資なども行い今では大手のスポンサーとしての顔を持つようにもなっている。そんなアマチはとあるゲームイベントへの出資を以前より行っていた。
それはVRを利用した遊戯施設の建設である。
ゴーグルとヘッドホンを装着し、身体にキャプチャー信号をキャッチするベルトを巻く事によってその動きを三次元的に検知。そして幾重ものカメラによってその動きをリアルタイムで検知する事で装着しているゴーグルにリアルタイムに反映され、まるで自分の身体も含めまるで別の世界に迷い込んだような感覚を与えた。例えば架空の戦場をモデリングした映像をゴーグルに流し、その戦場とまったく同じ構造の場所を用意する事によってまるで自分がそこにいるかのような錯覚を促す。
視覚、聴覚、そして空調から匂いや風までも再現する事によって別次元の遊びを提供する。
そんな一大プロジェクトを掲げたアミューズメント施設を作り上げ、そのお披露目として有名プロゲーマーはもちろん、有名な配信者やまたはプロのスポーツ選手やタレントなども呼び大々的なイベントとなる予定だ。
アマチが持っていた技術も提供し、準備は間違いなく順調だった。普段そういったゲームに興味のない天ヶ瀬でさえもこの企画の行方には注目をしていたくらいだ。
問題はなかった。
そうとあるニュースを見るまでは。
【元最強霊能者、勇実礼土、クサナギに参戦か!?】
頭痛がした。
天ヶ瀬が知る限り、勇実礼土とゲームはイコールで繋がらない関係である。彼にとって勇実礼土とは遊びがなく、ただ淡々と敵を蹂躙するだけの異常者だ。幸いこちらから関わらなければ無害な事が多いという事で最低限の接触以外はしてこなかった天ヶ瀬であったがこのニュースは本当に寝耳に水であったのだ。
「貴方は勇実礼土という男をどこまで知っているか」
「勇実さんですよね。確かに申し込みがあったのは確かのようです。ですが問題ないのでは? むしろ宣伝としては最高でしょう。あの容姿に加え、最強の霊能者だったという十分な肩書さえある。かつての力はないかもしれませんが、それでも十分すぎるほどのビックネームでしょう」
「甘い、甘すぎる!」
スカイツリー奪還のニュースに加え、その後のバラエティ番組でその姿を多くの人間が目撃した。そのため実力、容姿なども相まって最強の霊能者という肩書が1人歩きしていった。そしてもっとも厄介なのはその事について誰も否定していないという事だ。かつて霊力がもっとも高い名家でさえ異を唱えず、そして何より今回その問題を投じている天ヶ瀬自身も否定しない。
ただ1点。
霊能者という肩書以外は。
(奴は霊能者などではない! 魔法使いなのだ。だから能力を失ってもいないし、弱くなった気配もない!)
そう叫べればどれだけ良かったか。だがそんな事を言っても誰も信じない事は天ヶ瀬も理解しているし、下手に藪を突いて勇者を起こそうという気もサラサラない。
「とにかく、内容を変更すべきだ。今のままでは奴の一人勝ちとなる。他の参加者に面目が立たない」
「はぁ。そうはいいますが……」
現在の種目は複数があるが、どれも勇実の前ではすべて蹂躙される未来しか見えない。
考えるのだ。奴を、勇実が一方的に有利にならず、何なら他のチームが倒してしまえるような、そんなゲームを。
そう天ヶ瀬は静かに燃えていた。




