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まさこさま2

更新が遅くなり大変申し訳ありません。

仕事が落ち着いたはず?なので更新頻度を上げて行ければと思います。

 とある貸会議室に数人の霊能者たちがいた。着崩したスーツに身を包んだ坊主頭の男、その背後に2人の男が立っている。さらにテーブルの向こうには2人の女性がいた。

 1人は少し赤味がかったショートヘアーの若い女性だ。ゴシック調の服を着飾っている美人というよりは可愛い系というニュアンスが似合う。もう1人はまた対照的であった。姿勢が良くピンと伸びた背筋、鋭い眼光、髪は後ろで結んでおりラフな格好をしているが、その美貌は陰りを見せていない。




「じゃ、そろそろ打ち合わせを始めようか。倉敷の嬢ちゃんよ」

「はい。生須琢磨さんたちをお呼びしたのは正直私たちでは手に負えないと判断された案件があったからです。都内の大学生4人が3週間ほど前に行方不明となりました。最後に向かった場所は鴉江町と呼ばれる所です。ネットで検索した町の風景画像がこちらですね」


 

 ショートヘアーの女性が用意していた紙をファイルから取り出しテーブルに並べる。



「ネットで拾った写真なので画質は勘弁してください」

「……すげぇド田舎だな。時間止まってんのかよ」



 用意された写真にはいくつもの田んぼが並び、おおよそ平屋の家が並ぶ田園風景であった。



「まあいい。説明してもらおうか。何で俺らなんだ?」

「端的に言えばご指名です。今回行方不明となった学生の中に石田正則という方がいます。この方は都議会議員の石田治郎の息子さんでして」

「ああ。そういうやつか」

「はい。出来るだけ凄腕を紹介してほしいと頼まれました。そのため1度だけ面識のあった琢磨さんをと思った次第です」



 そういうと手に持っていた画質の悪い写真を放り投げた。今回の仕事で重要なのは仕事の内容ではない。依頼人が政治家だという点だと琢磨は考える。今後生須家の中で上がっていこうと考えればこの手の連中に貸しを作るのは願ってもないからだ。



「わかった、やってやる……と言いたいが、まさか3週間以上も前に行方不明になったやつを連れて帰ってこい。なんて話じゃねぇだろうな」

「ええ。もちろんです。ご先方には既に亡くなっている前提で考えてほしいと説明もしています」

「なら何すりゃいい? まさか仇をうってくれなんて話か?」

「――可能であれば遺体を持ち帰ってほしいと」



 それを聞いて琢磨はため息をつく。



「一応聞くが、倉敷の方でも一度霊能者を派遣してんだろ?」

「はい。ランクⅤで構成された霊能者4名を派遣しました」

「んで結果は?」


 

 琢磨の質問に倉敷哀火は首を振った。



「誰も帰ってきませんでした」

「だろうな。ただ行方不明になった程度で俺を呼ぶとも思えん。そんな状況で遺体なんて残ってると思うか? 姫島」



 琢磨はずっと沈黙を保っているもう一人の女性に話を振り、落ち着いた声色で話した。



「確実に残っていないでしょう。痕跡があれば警察が動くはずです」

「だろうな。んでない場合は?」

「その場合、当日身に着けていた物でもなんでもいいので持って帰ってほしいという事です」

「それを神城の連中に渡すって流れか。それなら何かしら期待できるかもな。まあいい、必要な資料は後でメールでよこせ。もちろん、お前さんの事務所で調べている事、分かっている事全部だ」



 そういうと琢磨は立ち上がった。



「一旦戻って明日現地に向かう。依頼人にはそう伝えておけ」

「はい。わかりました」



 そして琢磨を含めた一団はその場から去っていった。姿が消え、気配もなくなってから倉敷哀火は小さくため息を吐いた。



「よろしかったんですか。この一件をあの方々に相談して」



 姫島が変わらない表情のまま哀火にそう言った。それを受けて哀火は手を振ってこたえる。



「いいのよ。この一件、思ったより質が悪いわ。鴉江町には霊界領域は見当たらない。であればどれほど見積もってもランクⅣの霊能者で事足りる。だっていうのにうちのランクⅤが全滅よ? どう考えてもおかしいわ。それに本命には断られちゃったし、次の相手として考えれば悪くないわ」

「まあ。あの方は石田議員の名前を出した時点であからさまに不機嫌そうな顔をされてましたからね」



 倉敷哀火が依頼人である石田治郎からはとにかく優秀な霊能者に相談したいという事だった。当然自身の所属する事務所からすぐに動ける人員を選定、依頼内容から考えても十分に実力の高い面子を揃えた。


 だが結果は全滅。もちろん死んだと断定はできていない。ただ連絡が取れなくなった時点で哀火の中では既に最悪の想定で考えている。そしてその時点で倉敷事務所はこの依頼を持て余した。情報が少なく下手に高ランクの霊能者を派遣できない。通常の霊とは何かが違う。



 だから哀火は石田に提案した。他事務所であるが、優秀な人を紹介すると。



 そして真っ先にアポを取り向かったのは勇実心霊事務所である。彼の非常識さは以前の試験でよく理解していた。これを機に何かしら縁を作れればよしと考えたのだ。

 だが向かってみれば肝心の礼土は不在。どうやら別の仕事に当たっているそうで、いつ戻るか分からないという事だった。会えたアーデという女性にも一応話したが、政治家という言葉を出した時点で空気が変わった事を感じ、これは無理だなと早々に諦めたのだ。ならば仕方ない、という事で次に上がったのが生須琢磨である。


 元々野心家である琢磨はこういった依頼人と接点を作りたがるだろうとは予想できた。だから容易に受けるとは思っていたがそれは正解であった。




「姫島さんはどう? 仮に鴉江町へ行ってほしいって話になったらいけそう?」

「……わかりません。私は頭を使うのが苦手です。単純な霊ならただ斬ればいい。でも、話を聞いている限り、鴉江町にいる何かは単純な霊とは違うように感じます」

「そ。ならやっぱり他所へ預けて正解だったかも。これ以上うちに被害を出したくないし。まあ琢磨さん性格はアレだけど実力は確かだし大丈夫でしょ」




 この時は倉敷哀火もそう考えていた。







「まさか琢磨さんに呼ばれるとは思ってもいませんでしたよ」



 そう零す一人の青年。整った容姿に高身長であり、どう見てもモデルにしか見えない男が生須琢磨の前にいた。



「桐島。お前を呼んだのは簡単だ。人探し、物探しならお前の能力が役に立つからな」



 琢磨は以前の仕事で桐島宗太と一緒になる機会があった。桐島は最近では珍しく事務所に所属していないフリーの霊能者としてモデルと兼用で活躍している男であり、霊力も高く、様々な事務所からもアプローチを貰っているらしい。

 ただし、本人はそのどこにも所属する様子は見せていない。一度気になり琢磨が聞いてみた所、「一度本命に断られてしまったので修行中」との事だった。



「それで僕は何をすれば? 今の言い方からすると探し物という事でしょうか」

「ああ。領域はないらしいが、現状手にしている情報から考えてかなり難易度が高い。現地には俺たち3人で行くが、桐島は町の外で待機。お前の能力で補佐をして貰う」

「ああ。なるほど。()()()()()()()()()?」

「とりあえず、ネズミ、鳥でいい。必要に応じてこちらから指示を出す」



 桐島の霊能力は動物霊の支配である。使役型の中で最上位に位置する能力であり、一度支配した動物霊を意のままに操れる。特筆すべきはその数だ。桐島は見かけた動物霊をすべて支配下に置いており、現時点でその数は数百を超えている。


「足手まといになるつもりはありませんが、僕は町の外で待機ですか?」

「お前の能力は知っている。だが今回はやめておけ。多分だがおまえじゃ対処できん」



 その言葉に桐島の顔は少し歪んだ。だがすぐに元に戻す。琢磨という男は乱暴そうに見えるが、案外面倒見のいい男であることを桐島は知っている。だから琢磨のこの言葉は嘘偽りのない事実なのだろうと。



「わかりました。雄吾さんと直紀さんが同行されるので?」

「ああ。あいつらもまだ未熟だが、そうそう不覚は取らないだろうよ」


 いつも琢磨の後ろについている生須家の人間であり、琢磨の弟分たち。霊力も高く、単純な戦力で考えれば過剰なくらいだろう。だが――と琢磨は考える。今回の仕事は何が起きるか想像もできない危険な仕事だ。しかしそれを乗り越えられればあの2人はさらに成長する。



 

 そう確信し、琢磨たちは鴉江町へ乗り込んだ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 琢磨くんは若さ故の無鉄砲さというか浅慮さがあるけど、優秀な子なのか。
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