綿飴は空を舞う
~前回のあらすじ~
ルシルが水魔法を覚えた。
「ここがあのシメー島ですか」
コメットちゃんは目を輝かせて辺りを見回していた。
シメー島の中には獣人も多くいるので、耳と尻尾があっても目立つことはない。
「コメットちゃん、知ってるの?」
「はい。美食の町で有名ですから。一度行ってみたかったんです」
「夢が一つ叶いました」と本当に嬉しそうに言う。
連れて来てよかった。
それに引き換え、ルシルのやつは……陰で嫌そうにしていた。
「……忘れてた……地上には太陽があるんだったわ……」
忘れてたって、一体何百年地下に引きこもってたんだよ。
「ルシル、太陽苦手なのか?」
「苦手というよりかは眩しくて暑くて迷惑くらいに思ってるわよ。別に吸血鬼みたいに太陽光を浴びると灰になるとかはないわよ」
「こっちの世界の吸血鬼も太陽を浴びると灰になるのか?」
「こっちの世界? コーマの世界には吸血鬼はいなかったはずだけど」
あぁ、まぁ、俺の世界の吸血鬼はフィクションであり、実際の人物、団体とは一切関係ありません、だからな。
ドラキュラは実在するらしいが、実際のドラキュラ伯爵は吸血鬼じゃないらしいからな。
それにしても吸血鬼か……魔王の中に一人くらいはいるんじゃないだろうか?
こんなところでフラグを立てたくはないが、クリスとか普通に攫われてしまいそうだよな。
「ま、とりあえず食べ歩きしようぜ。金なら十分持ってきているから」
俺はアイテムバッグから、銀貨の入った袋を取り出し、小袋に分ける。
だいたい100枚ずつくらい。
「はい、コメットちゃんの分、タラの分、ルシルの分」
「……あの、コーマ様、今更ですがコーマ様の金銭感覚は本当におかしいですよね」
「ま、気にしない気にしない」
うん、自分でも金銭感覚がおかしいのはわかってる。
銀貨100枚っていったら、日本円で100万円くらいじゃないだろうか?
コメットちゃんも、ゴーリキに殺される前に俺の金銭感覚が異常だということは知っていたからなぁ。
「……あれ? タラは?」
お金を渡した途端、タラが消えていた。
まさか、誘拐……? 女の子みたいにかわいいから、そういう趣味の人に……はないか。
タラ、見た目はショタでも中身は豪傑だからな。
実際、タラはすぐに帰ってきた。
両手いっぱいの牛串を持って。
「コメットも食べるか?」
「うん、食べる」
コメットちゃんがタラから牛串を一本とって食べた。
幸せそうに頬を押さえる。
まさに、ほっぺが落ちそうな状態なのだろう。
タラは無表情で食べているが、少しだけ口の端が歪んでいる。
コボルトは雑食だが肉好きらしいからな。
肉の塊に目がないのだろう。
「タラ、私ももらっていい?」
二人がおいしそうに食べているので、ルシルも食べたくなったのだろう。
ルシルがそう言うと、タラは牛串の入った袋を出し、
「もちろん。どうぞルシル様。そういえば、向こうに綿飴なるとても甘くておいしいものが売っているそうな」
「え、甘くておいしいもの! すぐに行ってくるわ!」
ルシルはそう言うと、牛串そっちのけで綿飴のある方向に走って行った。
……タラ、絶対自分の牛串を食べさせないためにルシルを誘導しただろ。
それにしても、綿飴、こっちの世界にもあるんだ。ああいうのって、こっちの世界じゃ再現が難しいもんだと思っていたが。
そういえば、料理関係の魔道具がかなり発達しているって言ってたな。
ルシルの走って行った方向に行く。
本当に綿飴屋があった。
子供たちが列を作っている中、ルシルもそれに混じって並んでいた。
一個銅貨5枚か。一番先頭にいた子供が、綿飴を持って歩き去った。
……………………………………………………
砂糖【食材】 レア:★★
テンサイダイコン等から取れる甘い調味料。
塩とよく間違えられる。
……………………………………………………
あぁ、残念。綿飴はアイテム図鑑に登録されないようだ。砂糖としか鑑定結果が出てこない。
せめてザラメとして登録されて欲しかった。
その代わり綿飴製造機のほうはしっかり登録された。
……………………………………………………
遠心分離機【魔道具】 レア:★×5
強力な遠心力を加えることにより、物質を分離させる魔道具。
いつもより余計に回っております。
……………………………………………………
うん、よくまわってる。綿飴製造機は遠心分離機なのか。
そういえば、錬金術の機材として使われることがあるって「錬金術のススメ」に書いてあったな。
クルトに土産に買って帰るか。
いくらくらいするんだろうか?
しばらくして、ルシルの番が回ってきた。
銀貨を渡して、木の棒を受け取る。
そうか、自分で作るタイプなのか。
子供のころ、食べ放題タイプの焼肉屋に行ったとき、デザートコーナーで綿飴を作っていたのを思い出した。
懐かしいなぁ、自分で作れる……作れる!?
「まずい! ルシル、やめ――」
刹那、ルシルの作った綿飴が膨張! みるみるうちに家のような大きさまで膨らんでいき、空へと飛んで行った。人を襲う気配は……今のところなさそうだ。
よかった……のか?
「ちょっと機械の調子が悪かったのかな……今度は私が作るからね」
ルシルが何か悪いことをした、とは思えないだろうな。
ルシルはただ木の棒を持ってくるくる回していただけなんだから。
それでも男は何かを感じ取ったらしく、綿菓子を作り始めた。
あ、空に翼竜くらい大きな巨大な鳥が来た。
綿飴の匂いに釣られたのか?
そして、食べられてしまった……巨鳥のほうが……。
何も知らない人が見たら、鳥が雲の中に入ったくらいにしか見えないだろう。
綿飴はさらなる獲物を求めて空を行く。もう、彼は綿飴ではない、雲になったんだ。青い空を自由に舞う雲に。いや、むしろ空の覇者に。
さらば、綿飴よ! お前のことは早く忘れたい。
暫くして、店主が本物の綿飴を作ってくれた。
そして、おつりを渡そうとする店主を無視してルシルは一口食べた。
「甘い! ふわふわしてる! すごい! こんなおいしい食べ物を作るなんて、あの人は天才よ」
「いや、たぶんあの人が発明したんじゃないからな、綿飴製造機」
少なくとも遠心分離機がアイテム図鑑に登録されるということは、アイテム図鑑が作られた時代には遠心分離機があったことになるからな。
結局、お釣りは迷惑料ということで受け取らなかった。
なんの迷惑料かはあえて言わなかったため、店主は困った顔をしていた。
他にも道中、珍しい料理が多くあった。中でも郷土料理を専門に扱う店というものがあって、そこでは俺がまだアイテム図鑑に登録していない料理の数々が並んでいた。
中には、見た目ラーメンのような料理まであったが、生憎味はいまいちだった。
「あぁ、俺は腹いっぱいだ。少し休憩するよ」
「私もです」
休憩所があったので、俺とコメットちゃんはそこで休憩をすることにした。
だが、そもそも食事を必要としないルシル、彼女の胃袋は本当に底なしなので、まだまだ食べたりない様子。
そのルシルと同じ、いや、それ以上に食べている気がするタラも、ルシル同様食べたりない様子だ。
銀貨100枚は渡しすぎたと思っていたが、こいつらなら、二人合わせて200枚の銀貨を一日で使い果たすんじゃないだろうか?
「じゃあ、とりあえず二組に別れるか。俺とコメットちゃんは観光スポットでも見て回るから、ルシルとタラは食べ歩き続行。夕方、日の入り時刻あたりに工房に集合な」
俺はそんな提案を出した。
それがまずかった。
まさか……この提案のせいでこの島にあんな化け物を生み出すことになるとは、本当にこの時は思いもしなかった。
~前回、コーマが裏で作っていたスライム~
塩×スライムの核
……………………………………………………
溶解スライム【魔法生物】 レア:★
スライムが溶けてしまい、ドロドロになってしまった。
それでも死んではおらず、地面を這い、動くことができる。
……………………………………………………
スライムさん、あんたはナメクジですか。
ちなみに、レモン水を混ぜても溶けてしまいます。
スラ○ム冒険記のスライムは塩を浴びると固まってしまうけど。
本当にどうでもいい話ですが、
飴玉から綿飴を作る機械を買いました。
といっても、まだ自分では使ってないんですが。
ちなみに、本当は、私は
綿飴ではなく、綿菓子と呼ぶ派です。
でも、電気飴とは呼んだことないです。




