入島前の測定眼鏡
~前回のあらすじ~
翼竜を倒した。
「流石は私が見込んだ男だよ」
翼竜を倒した後、スーとシーの俺に対する評価は鰻登りだった。
もともとは、いい薬を持っている、少し身体の動きのいいだけの鍛冶屋みたいな評価だったが、さらに絶大な魔力の篭った杖の持ち主という設定まで加えられた。
「本気で私の従者にならないかい? 悪いようにはしないよ。なんなら私達二人姉妹揃って『お姉ちゃんっ!!』ってそれはダメか」
うおっ、びっくりした。急にシーが大きな声を上げるんだもんな。
いつも小さい声で話してるから、大きな声は出せないかと思ってた。
スーは、申し訳なさそうに「なはは」と笑っている。
「それにしても、ラッキーだね、コーマ」
「ああ、まさかこれまで手に入るとはな」
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翼竜の牙【素材】 レア:★×6
翼竜の牙。鉄よりも硬く、武器の素材になる。
また、その硬さの割にとても軽いのが特徴。
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地竜の上で、俺たちは戦利品を眺めていた。
落ちてきた鱗の中に混じっていた二本の翼竜の牙。
生え代わりの時に剥がれ落ちるため、運がよければ普通に拾うことができる竜の鱗と違い、竜の牙は実際に竜を倒さないと手に入らないため、その希少性は鱗の比ではない。
「でも、本当に俺が一人でもらっていいのか? 今はまがりなりにもスーの従者なのに」
「へぇ、驚いた。タメ口だから従者の自覚なんてないと思ってたよ」
「これは失礼しました、御嬢様。これからは心を入れ替え、誠心誠意御嬢様のために死力を尽くさせて頂く所存にございます」
俺がランドドラゴンの背の上で片膝をついてそう言うと、スーは恐怖のあまり身震いし、
「やめなよ、そういう冗談は」
「だろ? まぁ、そういうことで、フランクによろしくな」
「……コーマ様は、そっちのほうがよく似合う」
シーが控えめな笑顔で言う。
シーももう少しフランクに接してほしいんだけどな。
「まぁ、素材なんてもらっても、私達じゃ売るしか使い道ないしね」
「……竜の素材を扱える鍛冶屋さんに知合いはいないから」
あぁ、鉄よりも硬い上、竜の鱗とか牙は火への耐性が強いから、通常の手段だと加工ができないって聞いたことがあるな。
一応、鍛冶屋を名乗ってるわけで、いろいろと勉強した。だから、そのあたりは理解できている。
「そうか。じゃあ、俺が二人用に何か作ってみるよ」
「できるのかい? そりゃありがたいけどさ」
「……お金、あまりないよ?」
「金はいくらでもいいよ。武器を作るのは趣味みたいなもんだし。どんな武器がいいか教えてもらっていいか?」
「そうだねぇ。私は扱いにくい武器のほうが好きだね。まぁ、男は純情で扱いやすいほうが好きなんだけどさ」
スーはそう言うと、俺の横に身体を密着させてくる。
「……私は真っ直ぐな武器がいいです。真っ直ぐ生きている男の人も好きです」
シーはそう言って、俺の横、スーが座っている席の反対側にちょこんと座った。
えっと、丸いテーブル席でこうして三人が一か所に固まってるせいで、地竜が少し走りにくそうなんだけど。スピードも落ちて来たし。
そんなこともあったが、翼竜に遭遇してから3時間くらい経過した頃だろうか。
他の地竜や、馬車の姿がちらほらと見えてきた。
俺達と同じ場所を目指しているようだ。
そして、それが見えてきた。
きれいな湖と、湖の上に浮かぶ島。
そして、島から陸地へと延びる大きな橋。
あれが、シメー湖に浮かぶ、シメー島か。
「美食の島、シメー島。湖の周りに畑や果樹園が見えるだろ? あれは湖の水で育てられてるんだけど、水の栄養がいいのか、ここで採れる野菜や果物は全部いい品質なんだよ」
「へぇ、ついでに湖ではおいしい魚が獲れるのか?」
「そういうこと。あと、ラビスシティーから近いおかげで、生活魔道具の普及率も高くて、料理関係の魔道具の多さはラビスシティー以上だよ」
「高いといっても、一般家庭では10%にも満たないけどね」と、スーが付け加えた。
そして、島へ通じる唯一の橋の前に近付いたところで、その列に驚いた。
橋を渡るための順番待ちで日が暮れてしまいそうだ。
先に俺たちは橋の近くにある竜車小屋へと向かい、地竜を預けた。
そして、歩いて橋に行き、
「スー様ですね、お待ちしておりました。どうぞお通り下さい」
勇者特権で順番なんて関係なく町の中に入れた。
流石にズルいんじゃないか? と思ったが、
「いや、この島へは町長の依頼できてるからね。このくらい当然だよ」
とスーが言う。へぇ、名指しで依頼が来てるのか。
クリス相手にはそういうのはあまり来ていないはずなんだが。
と思ったが、そう言えば、サイモンって人から依頼があって仕事に行ってるんだったな。
長蛇の列を横目に、橋を歩いて渡り、入島受付へと向かう。
若い女性が受付をしていたのだが、そのマルメガネを見て、俺は首を傾げた。
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料理能力測定眼鏡【魔道具】 レア:★★★
相手の料理能力を測定する眼鏡。
数値が高いほど料理人として実力があることになる。
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なんでこんなものが?
そう思っていたら、
「こちらに名前を記入してください」
受付のお姉さんがスーに筆を渡す。スーはそこにスラスラと三人分の名前を書いた。
そして、それをチェックしたお姉さんは、俺達にそれぞれカードを渡した。
そのカードには、名前と数字が書かれていた。
「こちらが島での身分証明書になります。手放さずにお持ちください」
この数字って、やっぱりあれなんだよな。
「へぇ、コーマ、凄いじゃないか。料理能力2800か」
「料理能力って、料理がうまいかどうかだよな? なんで身分証明書にその数字が書いてあるんだ?」
スーの料理能力は920、シーの料理能力は3159だった。
「この島は美食の島だからね。島民全員に料理能力を向上させるために料理能力を開示しているのさ」
「へぇ、所変わればってやつか」
ちなみに、島外の人の平均料理能力は800、島民の平均料理能力は1800、島の中で料理屋を出している人の平均は3000らしい。
それを聞くと、シーの料理能力が高いんだなと思う。数字だけでまだ食べてもいないんだが。
「一度、シーの料理を食べてみたいな」
「……うん、コーマ様が望むなら毎日でも」
毎日は流石に食べられないよ……ハハハ。
……イヤ、流石に俺でもわかるよ。シーがあからさまに俺を口説きにかかっていることに。
むしろスーよりも積極的じゃないだろうか?
なんで好意を持たれているのか全く理解できない。
シーと会ったのは、前の食事の時を除けば、シーが瀕死の重傷らしき傷を負っているところを薬で助けただけなのに。
命を助けたくらいで惚れられるとしたら、日本で一番モテる職業は外科医になる……いや、医者はモテる職業だけど。
門をくぐると、町の中はお祭り騒ぎだった。
勇者試験の時のラビスシティーといい勝負、いや、食べ物関係の露店の数だけでいえば、ラビスシティーの比ではない。
四年に一度の料理大会が開かれるとかで、観光客も多く押し寄せているのだという。
「で、私とシーはこれから料理大会の警備主任の仕事に行くんだけど、コーマはどうする?」
「大会の警備主任? 勇者の仕事なのか?」
「勇者が警備主任をしていると聞いたら、大会の見物客は安心するだろ?」
あぁ、勇者の名前を利用したいというわけか。
俺も本来は手伝うべきなんだが――
「じゃあ、俺は工房を借りて、スーとシーの武器を作ってるよ。獲れたての素材のほうがいい武器ができるからな」
「そうか。じゃあ、明日の大会はコーマも見に来てよね。あと、用事があったら大会本部にいると思うから」
大会本部の場所を印した地図を受け取り、
「わかったよ。最高の武器を作るから待っていてくれよな」
そう言って、スーとシーと別れた。
武器を作るため……なんかじゃない。
美食の町、観光にぴったりじゃないか。
どこか人目の付かない場所で、持ち運び転移陣を使い、ルシルたちを呼び寄せるか。
そう思って、俺は一人で町の中へと入って行った。
~この後コーマが作るスライム~
スライムの核×犬小屋
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引きこもりスライム【魔法生物】 レア:★★
犬小屋の中が気に入った結果、外に出なくなったスライム。
小屋を壊されると凶暴化する。
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コメット「コーマ様、なんで犬小屋なんて作っていたんですか?」
コーマ「いや……魔王城の中にグーとタラが住まなかったからさ。必要かなって思って」
コメット「……貰う前に魔人化してよかったです」




