成長しないやつら
「コーマ、どうしたの? まるで二時間ドラマの残り十五分の段階で、間違った方向に捜査していたことに気付いた刑事みたいな顔をしているわよ?」
「具体的な表現をありがとう、ルシル。いつかこの世界でも映像送信器と映像受信器によるテレビ局が完成したら、二時間ドラマを作ってもらおうな」
でも、この世界なら、転移魔法があるせいでアリバイ工作とか簡単そうだよな。いや、それよりアイテムバッグの中に死体を隠せば完全犯罪ができそうな気もする。
「いや、わかったんだよ。どうやったら元の時間に戻れるかな」
「本当にっ!?」
「あぁ。本当だ。というか、たぶん間違いない」
レメリカさんのヒントがなければ気付かなかっただろう。
でも、気付かなくても元の世界には戻れただろうが。
「どうやったら戻れるの?」
「そうだな、このまま寝てれば戻れるぞ」
俺はそう言ってコタツの布団を握った。
「え? それだけ?」
「そうだ。メディーナの問題はもういいとして――」
と俺は首だけの状態のため、マユにご飯を食べさせてもらっているメディーナを見た。
俺たちが元の時代に戻れば、メディーナは自動的に魔王城に転移され、記憶を失うようになっている。
あとはマユの記憶も消しておかないといけないな。
「コーマ、マユのことだけど」
「そうだな……ルシル。任せてもいいか?」
「わかったわ」
ルシルはそう言って、じっとしている。
動く気配がまるでない。
「ルシル、どうしたんだ?」
「もうちょっと体が温もってからでいいかしら? みかんも出してもらえると嬉しいんだけど」
「……せいやっ!」
俺はこたつの布団を引っ張った。
ルシル側の部分の布団がなくなる。
「コーマ、何をするのよっ! 布団返してよっ!」
「ええい、うるさいっ! とっとと仕事を終わらせたらみかんだけでなく熱いお茶も淹れてやるからとっとと仕事をしろっ!」
「いまなのよっ! いま私は寒いのっ! こんなことするのならコーマなんて召喚するんじゃなかったわよっ! もっと親切な人を召喚するんだった!」
「お前、それをいま言うかっ! それなら俺だって騙されたわっ! お前が巨乳美人だったから惚れたっていうのに、なんでいきなりロリになってるんだよっ! ていうかいつまでロリのままでいるんだよっ! いい加減に成長しろよっ!」
「成長しろって、どう成長しろっていうのよっ! 世の中にはいくら成長しても、そう、それこそ四百倍の速度で成長するなんて謳っていながら無職の人だっているんだし、私なんて一応三分間くらいなら大人の姿に成長できるようになってるんだから、成長している方じゃないっ!」
「三分間ってウルトラマンかよ! そんなの意味ないだ…………ろ」
俺は思わず言葉が出せない。
なぜなら、俺の目の前にいたのは、大人バージョンのルシルだったから。
思わず彼女に見惚れてしまう。
「ルシファー様っ!? 本当にルシファー様だったのですねっ!?」
メディーナがルシルを見て生首だけの状態で土下座をする。
「ねぇ、コーマ。私、寒いの。コタツ布団、もうちょっと入っていていい? ねぇ、お願いだから」
コタツの端を持ってはにかむように笑っておねだりされたら……
「……あ……あぁ」
「うん、ありがとう。あ、そうだ。私、ラーメンが食べたいから作ってきてくれないかな?」
「ラーメンって、お前。いくらなんでもここじゃ作れないぞ?」
「お・ね・が・い♪」
ルシルがそう言ってウインクをすると、俺は思わず立ち上がり、
「わかった。ちょっと待ってろっ!」
と部屋を出て、屋外に行くと薪を取り出して火を起こしてお湯を沸かす。
そして、いろいろとあれやってこれやってそれやってラーメンを完成させた。
「ルシル、お待たせ、最高のラーメンをぉぉぉぉぉっ!」
「あ、コーマ、お帰りなさいっ! マユのほうはもう終わったから、ラーメンちょうだい」
「…………はぁ」
そうだよな。もう三分経ったよな。
待っているのはロリルシルだよな。
いや、うん。これも愛しているルシルの姿だ。
ほっとするんだけどね。緊張しなくてもいいから楽なんだけどね。
でも、なんだろう、この疲れた感じは。
「マユもラーメン食べるだろ?」
マユはじっとラーメンを見て、ウォータースライムを被ると、
「ラーメン……はい、いただきます」
と言って、ルシルの箸の使い方を見て、それを真似してマユもウォータースライムを外してラーメンを食べ始めた。
言葉には出せないが、見ただけで、熱くて美味しいと思っているのはわかる。
その後も俺たちはマユとバカみたいな話をし、そして気が付けば。
「帰ってきたな」
俺たちは魔王城にいた。




