閑話 コレクターの神~前編~
いつもの魔王城から物語ははじまる。
終わったはずなのに。
現在、選運の迷宮ではある大きな悩みに直面していた。
つまりはゴミ処理の問題だ。
アイテムバッグに入れたら一応は解決するのだが、いつまでもアイテムバッグに頼るわけにはいかない。むしろゴミであろうともアイテムであるのなら、それを有効活用してこそアイテムマスター(自称)というものだ。
俺は落ちている粒を拾ってそう思った。
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スライムゴム【素材】 レア:★
スライムの廃棄物。やわらかい。
火に弱く、熱せられると溶けてしまう。
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「スライムゴムか……」
性質はほとんどゴムに近い。
しかも、香料のようなものとアイテムクリエイトで加工すればガムになってしまう。イチゴガムとか作ってみたけれど、さすがに食べる気はしなかった。
だって、排泄物だし。う〇こみたいなものだし。それを口の中に入れるのはちょっとな、って思ってしまう。
ただ、この世界ではそれを食べるのは普通のようで、ラビスシティーにも売っている。
ならば、俺もスライムゴムを売ればいいんじゃないかと思うのだが、困ったことにその数がとてつもなく多いのだ。
何しろうちのスライムは数が多いから。
「……ゴムねぇ」
俺は少し硬いスライムゴムを手の中でいじりながら考えた。
う〇こだと思うから食べないと言っている奴が、それを何度も触るなよ、と思うかもしれないが、この感触は結構好きだ。というのも、これ――どこか懐かしい。
(そうか、食玩の玩具の感触に近いんだ)
ゴム製の玩具――子供の頃はよく集めたなぁ。
「……そうだっ!」
その時、俺はあることを思いついた。思いついてしまった。
それが世界を揺るがすことになるとはこの時思ってもいなかった。
※※※
「コーマ、何を作ってるの?」
俺が作業部屋で作業をしていると、ルシルがノックもせずに扉に入ってきた。
魔力もだいぶ回復し、大人姿をキープできるらしいのに今日もロリ姿だ。なんでもこの姿のほうが楽なのだとか。
本当はいつも大人姿でいてほしいのだが、でもたまに見ることができるからこそそのギャップに興奮するというのもあるので我慢している。
俺はルシルにほほ笑みかけ、それを見せた。
「ん、ちょっと模型をいくつか……な」
と俺は様々な工具を使い、人形を作っていた。
今作っているのは、斧を持っているゴブリン――ゴブリンウォーリアーをだいぶデフォルメ化させた、五百円玉サイズの人形だ。
ほかにも様々な魔物の人形を作っている。
「へぇ、器用なものね。さすがは細工レベル10なだけあるわ。それをどうするの?」
「こうするんだよ」
と俺は万能粘土を取り出し、それを使って一瞬で型を作った。
今度はその型を合わせ、その中に、鍋の中に溶かしたスライムゴムを流し込む。
待つこと五分。
「完成だっ!」
俺がルシルに見せたのは、ゴムでできたゴブリンウォーリアーの人形だ。
「……凄いわね。あとはこれに着色をしたら完璧よ」
スライムゴムの色は白色なので、このままだとさすがに完成とは言えない。
だが――
「いいんだよ。この未完成具合がまたいいんだ。着色用、保存用と二種類は欲しくなるからな。まずは型を作って、シルフィアゴーレムに手伝ってもらって量産体制を取ろう。うちのスライムの排泄物の量だと、一日千個は作れるな」
「え? コーマ、一体何をするの?」
「決まってるだろ。これを食玩――いや、お菓子はつけないからコレクション玩具として発売する。俺はコレクターの神になるんだよっ!」
と宣言したら、ルシルが一言。
「コーマはそんなのにならなくてもこの世界の創造神なのよ」
と冷静に言ったのだった。
※※※
一週間後。
モンスターゴム人形シリーズ第一弾を十分に用意した俺は、フリーマーケットのリーのところにいった。
「コーマ、これか? 例の玩具って言うんわ」
「悪いな。無理を言って――メイベルはまだ帰ってきていないのか?」
「ああ、まだやで。今は北大陸に行ってるわ」
と言って、彼女は俺が作ったゴム人形の中で一番数が多いスライム人形を手に取り、笑った。
「かわいいな、ほんまに。でもこれが本当に売れるやろか」
「さぁな。あぁ、言っておくけど――」
「わかってる。ひとり限定五個まで。見本の展示物は販売しない。中身が見えないように販売するときは付属の木の箱の中に入れておく――やったな。まかしとき」
とリーは頷いた。
「助かるよ。じゃあ、俺はメイベルの流通会社のほうにいって、世界中にこれを売る手筈をしてくるから」
この世界はコレクションアイテムが少ない。一番有名なのはパーカ人形だが、これも子供の小遣いで買おうと思えばとても高い。また、貴族や富豪などが買い占めてしまうケースも相次ぎ、世間一般にはそれほど浸透していない。
そこで俺はこの玩具を世界中に広めようと思った。
値段はひとつ銅貨一枚。子供の小遣いでも十分に買える金額設定。
そして、第一弾につき三十種類の魔物の人形とコレクション要素もある。
これがもしも世界中に広がり大ヒットしたら、おそらく真似をする人間が現れる。そして、ゆくゆくは世界中にコレクションアイテムが広がり、俺はハッピーになれるって寸法だ。
「まぁ、そんなにうまくいくとは思わないけどな」
とりあえず、第一弾の売れ行きを見て、次を考えるか。
俺はそう言ってメイベルの流通会社の社員に頼んでこのゴムの玩具を世界中に届けてもらう手配をすると、第二弾の構想を練りながら魔王城へと戻ったのだった。
俺が今日行った行動が、世界中を揺るがすことになるとも知らずに。
え? 一昨日最終話書いたのになんで投稿しているのかって?
番外編は8月じゃなかったのかって?
……ちょ、ちょっとだけ書かしてください。
書いていないと落ち着かないので。
あ、「そのスライム、ボスモンスターにつき注意」好評連載中です。




