表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode Final 蒐集の末

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

719/742

やり残したことがある

「メイベル、聞こえるか、メイベル!」

 通信イヤリングを使ってメイベルと話せないか試してみたが、やはり返事はこない。

 ルシルやクリスならまだしも、メイベルが返事をしない理由はないので、やはり通信イヤリングは使えないのだろう。

「お前がいたのは鳥居の真下だ。鳥居は神の聖域への扉というくらいだからな、異世界に繋がるにはいい場所だったんだろうよ」

 親父は笑いながら運転席で言った。

 俺は助手席に座らせられていた。

「……どうした? タバコは吸わないのか?」

 親父は極度のヘビースモーカーにもかかわらず、自分の部屋で煙草を吸ったら、コレクションのカードが黄ばむ可能性があるとかで車の中でしか煙草を吸わない。

 俺はその匂いは嫌いじゃなかったんだが。

「禁煙中だよ」

 と親父が一言で苛立つように言った。

「何度目だよ」

 少なくとも片手で収まる回数ではないはずだ。

 カリアナの皆は軽トラの荷台に幌をつけ、そこに入っている。

 馬の無い馬車だと驚いていたが、俺がそういう魔道具だというと納得した。

 後ろの窓から、カリアナの皆に声をかけた。

「……どうだ? はじめての日本は」

「思っていた景色とだいぶ異なります……懐かしいという感情はありません……が、先ほどの神社を見て我々はここが本来の故郷なのだと理解しました」

 名前も知らないひとりが言った。

「そうか……」

 俺は苦笑し、そして前を見た。

 俺にとっては見慣れた、そして懐かしい景色が続いている。

「随分と偉そうな口調じゃないか。年上の人には敬意をもって接しろと言っておいたはずだが」

「これでもあっちではこいつらの主君をやっていたんだ。ほとんどなにもしてないけどな」

「はっ、お前が主君か。それは笑えるな」

 と言うと、車が右折レーンに入り、赤信号で停止した。

「親父、家はそっちじゃないだろ?」

「悪いがこのまま大学に行かせてもらうよ。母さんもそっちにいる。流石に後ろの奴等を家に連れて入るには狭すぎるし、言葉も通じないから放りだすわけにもいかないだろ」

「……は? 親父は金属メーカー、母さんは薬品会社だろ?」

「出向だよ。お前が凄いものを持ち込んだおかげで、いまやあの金属と薬は――いや、異世界そのものが国の研究対象となった」

「ミスリルとアルティメットポーション……そうか、鈴子の奴、ちゃんと届けてくれたのか。じゃあ、親父が神社に来たのは?」

「異世界からの力の流れがあの神社に集約しているのがわかった――それで俺が自らあっちに行くことになった。コーマ、後ろから黒い車がついてきているのはわかるか?」

 俺は後ろの窓を見た。

 カリアナの民の向こうに黒い車が見える。

「あぁ、さっきからカリアナの皆がつけられているって言ってるよ」

「あれは俺たちの警護であり見張りのようなものだ。カリアナの皆には危害を加えないようにいっておけ」

「もう言ったよ」

 車が再発進する。

 しばらく静かに車を走らせ、

「コウ、何があった?」

「……………………」

 答えたくなかった。

 そして、考える。ルシルが俺を日本に還した理由を。

 最悪の未来に辿り着くまえ時間がなかった。。

 世界の転移は失敗する、もしくは成功する可能性が限りなく低い。

 だからルシルは俺だけを日本に還した

「だんまりか……考えるのはいいが、何もできないなら親に頼れ。できることならやってやるぞ」

 親父はハンドルを握りながら、バックミラー越しに俺を見た。

「学校の心配をしてるのか? 安心しろ、高校は休学扱いにしている……が留年は覚悟してろ?

 それが嫌なら夜間学校に編入できないか掛け合ってやる」

「いまさら高校なんて行けるかよ。あっちでは校長もやってたんだぞ」

 俺が出せたのは、そんな八つ当たりの言葉だった。

「お前が校長? マジか、息子の方が出世するとはこれは笑い種にされるな」

「……親父は今でもプロベースボールカード集めてるのか?」

「当たり前だろ。コレクターが途中で投げ出すのは最悪だってお前に教えなかったか?」

「教わったよ。何度も、何度も!」

 そうだ、全て中途半端だ。

 パーカ人形も集められなかったし、72財宝も集められなかったし、ルシルとも結婚できていないし、世界だって救えていない。

 全部中途半端だ。こんな俺がコレクターを名乗ることなんてできるはずがない。

 俺は拳を握り、震える声で言った。

「親父、できることならしてくれるって言ったよな。ならやってくれよ! 俺はあっちの世界に戻りたい! あっちの世界に戻ってやらないといけないことが山のようにある! 俺はまだ途中なんだ!」

「……金色の彼女と銀色の彼女、どっちだ?」

 親父がそんな質問をしてきた。

 そうか、鈴子に渡したスマホに、ルシルとクリスが映った写真があったんだった。

「銀髪の彼女だ」

「そんなに異世界に戻りたいのか? あっちはコンビニもなければお前が好きだったガチャガチャもないだろ? 携帯も圏外だからコレクション情報サイトの閲覧もできないのに」

「戻りたいよ。悪い、親父。俺の世界はもうこっちじゃないんだ」

「そうか」

 と親父は何かを覚悟したかのように言うと、目の色を変えてアクセルを踏み込んだ。車が一気に加速する。

 おい、今赤信号だっただろっ!

「ちょ、親父! 飛ばし過ぎだっ!」

「コウ、お前に見せたいものがある! しっかり掴まっていろよっ!」

 車はさらに加速する。警察に捕まらないかと心配したが、後ろにいるのがその警察官だから心配するなと言われた。

 あとがき劇場


コーマ「…………………………」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ