世界創造準備
といっても、現在はただの更地になっている。ルシルの魔法により俺の中の神の力を封印するときに魔王城の全てが使われたからだ。
そこに、ルシルはチョークで陣を描いていた。
額に浮かぶ汗を拭いながら、黙々と作業を続けている。
手伝いたいと思うが、ルシルが描いているものの意味すら俺にはわからない。持ち運び転移陣の数十倍複雑なそれは、もはや俺の理解の範疇を遥かに越えている。
そして、魔法陣が五つ描かれた時、彼女はその左上の部分に賢者の石を置き、その上に指輪を置いた。
「友好の指輪も使うのか?」
「ええ。友好の指輪は魂の共有、肉体という壁の一次的な中和。その力を使って世界の壁を一時中和して転移を可能にしたいんだけど――単純に力が足りないわね」
とルシルはその陣の周りにユグドラシルの杖を四本突き刺した。
「これで一時的に力を上げるわ。そして――」
とルシルは今度は真ん中の陣に向かい、アイテムバッグからユグドラシルの種を置いた。
「ユグドラシルは生命の象徴で全ての植物の祖。人が生きるための力を世界に広げる」
さらに、ユグドラシルの種の周りに六つの宝玉を置いた。
「ルシル、お前どこで?」
「元天使とシエルに力を込めてもらったの」
ルシルが置いたのは、火の宝玉、水の宝玉、風の宝玉、土の宝玉、光の宝玉、闇の宝玉だった。
俺が完成させていたのは数種類だけだったのに。さすがだな、レメリカさんは。
「神の力の象徴は、本当はゼウスの杖があったらいいんだけどないからコーマが作った剣を代用させてもらうわね」
と言って、竜殺しの剣グラム、エクスカリバー、草薙の剣を左下の陣に刺す。
凄いな、72財宝を全部使うつもりだろうか?
「生命の書は使わなくてもいいのか?」
「生命の書は世界ができてから、その世界の歴史を紡ぎ出すものだから、世界を創る段階では必要ないの。闘神人形も世界の創造後、人を導くために作られた存在だから同じく必要ないわ」
「悪いな、こんな急に必要になると思わなくて、これだけしか集められなくて」
今の話を聞くと72財宝は全て世界の創造に意味があるものらしい。
とするのなら、もっと72財宝を集めたら、世界の創造が実現する可能性が高くなったってことじゃないか。
こんな不完全な状態で本当に世界を創造できるのか?
「……コーマ、私が生命の書を見て未来を見たって話は聞いたわよね」
「ん? あぁ……」
「未来っていうのは、実は決まっていないの。多くの未来、多くの可能性がある。いくつもの世界の中で、コーマが世界創造に必要な72財宝を集められたのはこの道だけだったの。。まぁ、それを思い出したのもベリアルの力を取ってからだったんだけどね」
「え? ってことはあれか? 俺って実は本当に世界創造ができるのかとか、カリアナの人が戻れるのかとか考えているけど、全部うまくいくことをお前はわかっているのか?」
「勿論よ。あ、生命の書に書かれているのはこの世界のことだけだから、向こうの世界に行ってからどうなるかはわからないけどね」
「なんだよ、それ。緊張して損したわ」
俺はへなへなとその場に座り込んだ。
「って、ルシルは今の俺の姿も見えていたのか?」
「全部見ているわけじゃないわよ。未来っていうのは簡単に変わるの。分岐点は決まっているけど、でも私が手を抜いてしまったらそれだけで未来は変わるの――」
「あぁ、それもそうだよな。一生懸命勉強した東大に受かるとわかって手を抜いたら東大に落ちるようなものか」
「そういうこと――コーマ、エリクシール全部貰うわよ」
「あぁ、いいぞ」
俺が許可を出す前に、ルシルはエリクシールを全部取り出し、ユグドラシルの種にかけた。
「あと、魔石も全部使わせてもらうわね」
と言って、ルシルは賢者の石の方に歩いていくと、今度は俺の許可を待たずに――というか、俺が許可を出す必要はないだろうという顔をしたから、全部賢者の石の周辺に並べた。
「これでいいわね。コーマ、悪いんだけど、カリアナの人たちと、あとクリスも呼んできてもらえないかしら?」
「クリスも? なんでだ?」
「あの子にもちょっと協力してもらわないといけないのよ」
なんだろう、絶対に成功すると言われている。それがルシルの中ではほぼ決まっている未来らしい。
だが、クリスが関わると知ったとたん失敗しそうな気がしてならないんだが。
本当に大丈夫なのか?
コーマ「あとがき劇場ももう4日目か。カウントダウンだと、残り7日~17日ってところか?」
ルシル「そうね。一週間で終わるとは思わないけどね」
コーマ「ルシルはこの後何が起こるかわかってるんだっけか?」
ルシル「……えぇ、わかってるわよ。それより、コーマ、今日はEpisode04の思い出ね」
コーマ「あれ、なんか誤魔化されたような気がするが……まぁ、第四章だな。第四章は今までと違って、活動報告でアンケートを取って、その中の上位の話を短編連載していたんだっけか?」
ルシル「ええ。私がフルコースを作るという話と、メイベルの店長日記と、コーマが女になる話よね」
コーマ「コーリーちゃん初登場か……」
ルシル「人気投票をしたら、コーマ、もしかしてコーリーちゃんに負けるんじゃない?」
コーマ「あり得そうで怖いから、人気投票はしないぞ。ひとりで何百も投票する人がいるかもしれないからな……そう言えば、ニセ〇イの人気投票で俺が一番好きなあの子に莫大なハガキを送った読者が、最終回で彼女とお見合いをするという裏設定があったよ。俺もさすがに驚いた」
ルシル「……もしかして、その投票したのコーマじゃないわよね」
コーマ「悪いが、俺はお金があったら全部コレクションに使ってたからな。小学校時代も小遣いを全部使って友達と一緒にイ〇ーヨーカドーのゲームセンター前のガチャコーナーを荒らしまくったもんだぜ」
ルシル「コーマなら大人になっても平気でそういうところにいそうよね」
コーマ「少なくとも高校生になってからもガチャコーナーに通ってたな。小学校時代の友達のほうはスマホのガチャに夢中になってたが」
ルシル「それが普通でしょ」
コーマ「……普通……かな。あいつバイトで月12万くらい稼いで、それ全部スマホのガチャに使ってたけど」
ルシル「それは普通じゃないわね……」
コーマ「俺はバイトして月10万くらい稼いで全部コレクションに使ってた」
ルシル「それも普通じゃないわね……私は仕事をしたことがないからわからないわよ、その感覚」
コーマ「それも普通じゃないな……お前、2700年間働いたことないのか?」
ルシル「魔王としても何もしていなかったわね。分岐点のルート管理はほとんどベリアルに任せてたし」
コーマ「そうかそうか。お前は2700年間ニートだったのか」
ルシル「ニートじゃないわよっ!」
コーマ「じゃあ、自宅警備員?」
ルシル「……魔王軍元帥よ!」
コーマ「ていうか、ルシファーだったのなら、本来はお前が魔王なんだけどな」




