心残りのないように
「カリーヌが天使か……実感わかないなぁ」
でも、リーリウム王国の調査団に精霊と名乗らせたことがあったし、精霊と天使って何か似ているところがあるから、そう考えるとあながち不自然とは言えないのか。
「まぁ、これで晴れて四人の天使――あ、ひとりは元天使だけど、とにかく協力して別の世界に移ることができるようになったってわけよ」
「え? ルシルひとりの力じゃ無理なのか?」
「さすがに私ひとりじゃね。コーマ、忘れたの? 元々この世界は完全な状態の私が72財宝全部を作って使って、結果、時間制限付きのこの世界が出来たのよ。いくらコーマの中にいる神の力があるといっても、結構危険な賭けだったの――あ、コーマ。コーマが持っているアイテムバッグを預かっていいかしら?」
「アイテムバッグ? なんで?」
「流石に世界の創造をするとなると、何があるかわからないからいざという時に使わせて欲しいのよ。賢者の石もその中に入っているんでしょ?」
「ん? でも、パーカ人形は入ってないぞ? 全部コレクションルームにある」
ダブっているパーカ人形は全部レメリカさんに取られてしまった。
……シークレット譲ってくれないかなぁ。
「さすがにパーカ人形は使わないわよ」
「そうか? でもこういう大騒動の時って思わぬアイテムが役立ったりするだろ。パーカ人形が持つ独自の世界観が新たな世界を創造するヒントになるという可能性も微レ存じゃないか?」
「微レ存って微粒子レベルで存在しているって意味のネットスラングでしょ? それって無いと同義じゃない」
「……ルシル、お前本当に日本でどういう風に情報を集めてたんだ? もしかしてパソコンもないのにインターネットとか使ってないよな?」
ルシルの日本の情報は本当に偏ってる。
どうせなら、もっと役に立つ情報を仕入れてくれたらいいのに。
「そういえば、新しい世界に移っても日本の様子を見ることができるのか?」
「そうね。前にも言ったけど、世界の転移が終了したら元の世界に戻るのは絶望的よ」
とルシルは言った。それはもう覚悟はできている。
「魔力的に繋がりのあるアイテムがあったら、たまになら様子を見ることができるわよ」
「じゃあ、カリアナの人にアイテムを持たせたらいいってことか?」
「コーマ、誰か調べて欲しい人でもいるの?」
とルシルに尋ねられて俺は自分が何を考えていたのか再認識させられた。
日本に未練はないといいながらも、やっぱり日本に残した両親のことが少し気になったようだ。
鈴子には両親にメッセージを伝えて貰ったから心配はしていても捜索願とかは出していないと思うけど。
鈴子が日本に戻ったのは、俺がこの世界に来てから一年近く後のことだけど、向こうの時間だと俺がこの世界に召喚された直後のはずだから捜索願は出していないだろう。
異世界に召喚されたなんて言われても到底信じては貰えないだろうが、鈴子に持たせた薬や魔道具を見せたらきっと俺が非日常てきな何かに巻き込まれていることは察してくれるはずだ。あの人たちはそういう人だから。
ルシルに両親について今調べて貰ったり、カリアナの人たちに魔力的に繋がりのあるものを俺の両親に渡してもらおうかと思ったが、それはやめておこう。
彼女に、俺の日本への未練を悟られるのは避けたい。
「集めていた漫画が途中で終わってしまってそれが心残りなんだよ。漫画雑誌の召喚とかできないか? あと少しで最終回だったんだよ」
「へぇ、なんて漫画?」
「××××ってマンガ」
「あぁ、あれなら最後に×××が××××になって××××よ」
「え? なんでお前が知ってるんだ? 俺が召喚した直後に力を失って日本の情報を手に入れることができなくなったはずだろ?」
「別に――ただ作者の原稿を見ただけよ。私も気になってたし。というか、最終回まで見たからコーマを召喚したのよ?」
「え? 俺が召喚されたタイミングって漫画の最終回待ちの後だったのかよっ!」
「そうよ。でも、なんで漫画の最終回前って今まで知られていなかったどうでもいい伏線が次々に回収されていくのって本当にフィクションって感じがするわよね。現実だと死んでも回収されない伏線とかいっぱいあると思うんだけど」
「そりゃ伏線を回収しないと読者が納得しないからだろ。って、××××が×××になったって本当かよ、うわぁ、マジかぁ。ルシル、前に源氏物語の原本盗ったって言っただろ? 今回は生原稿とか盗ってないのか?」
「取ってないわよ。印刷所にまわる前だったし」
「そりゃ盗れないわな」
「ええ、取ったりしたらファンの読者が可哀そうだもの」
俺もそのファンの読者のひとりなんだけどな。
「コーマ、じゃあそろそろカリアナの人を送るためのセッティングをするから手伝って」
「わかったよ――ところで、ベリアルの様子はどうだ?」
と俺は地下にいるらしいベリアルの様子を聞いた。
こまめに様子を聞いているが、
「全く動く気配はないわよ」
といつものように言うのだった。
何も動きがないって一番怖いよな。
「で、ベリアルの影――リアヌスは?」
「そっちも一緒よ」
セメントを流し込むとき、リアヌスが一番気がかりだった。あいつの力ならセメントに埋まっても簡単に抜け出せると思ったから使ったんだが、あいつは逃げなかった。ベリアルを殴り続けて、セメントが固まりだしたら、セメントの上にまで避難して、じっと待っている。
ベリアルが抜け出すのを待っているんだろう。
一応、食事の差し入れとかはしている。食べてはいるらしいが。
このまま何事も起こらなければいいんだが、何もしてこないというのが一番不気味で仕方ない。
~あとがき劇場~
ルシル「………………」
コーマ「ルシル、本番はじまってるぞ。今日は三章のあとがき劇場の番だから、2巻を読んで復習してるのか? 表紙で俺たちが飛んでる奴――俺、空飛べないんだけどな」
ルシル「違うわ、××××ってマンガ」
コーマ「へぇ……一巻?」
ルシル「ううん、最終巻」
コーマ「あったのっ! あれ? なんであるの?」
ルシル「コーマが魂の状態になってあっちに行ったとき、私が完全に元通りになったから、最終巻を召喚していたのよ。ほら、最終巻って物語のその後とかあったりするじゃない? それに期待してね」
コーマ「なんだよっ! 俺に読ませてくれ! お前はもう読んだんだろ?」
ルシル「待って、いま作者のコメントを読んでるから」
コーマ「お前、一度読んだんだろ? 俺に読ませろよ」
ルシル「……わかったわよ」
コーマ「……おぉ、サンキューな。よし、まずは最終話から読もう」
ルシル「ねぇ、コーマ。あとがき劇場は?」
コーマ「あと五分待ってくれ」
ルシル「あと五分って、あとがき劇場ってそんなに尺はないのよ?」
コーマ「じゃあルシルが適当に語ってくれ」
ルシル「えぇ、Episode03って私が激辛ピザ食べたし、あとコーマにパンツを見られたわね……ねぇ、コーマ、ツッコミ無いの?」
コーマ「ちょっと待ってくれ……え? 約束の少女が――」
ルシル「ちょっと、コーマ! 伏字を忘れてるわよ!」
コーマ「小野寺じゃなくてそっちに行くのかっ!」
ルシル「コーマっ! 本当に伏字忘れているわよ! 名字だけでも勘のいい読者が何の話をしているかすでにわかっちゃったわよっ!」
コーマ「いいだろ、男が恋愛小説にはまったって。俺もこんな甘酸っぱい恋をしたいと思う頃があったんだよ」
ルシル「もうジャンルまでバレちゃったじゃない!」
コーマ「俺は橘派だけどな」
ルシル「あ、今日のあとがき劇場はもう終わりね。じゃあまた明日!」
コーマ「じゃあ最初から読むか」




