思わぬところにいた同志
「でも、コーマ。今すぐ戦いに行くわけじゃないんでしょ?」
ルシルに言われ、俺は少し考えた。
本来ならば今すぐにでもベリアルはなんとかしたい。俺は常に後手に回っているからだ。
だが、大きく二つの問題がある。
まず第一に、ベリアルの力が未知数なのだ。これまでベリアルの影やベリアルが派遣した軍と戦ったことはあるが、ベリアル本人と戦ったことは当然ないし、ベリアルが戦った記録も存在しない。エリエールも知らないそうだ。
そして、第二の問題として、ベリアルの立場がある。ベリアルはサイルマル王国の国王という存在だ。その国の王と戦うことになる以上、ある程度の根回しは必要になる。最低でもユーリには相談しないといけない。助力は期待できないが。
「……だな。準備は必要だ……せめてベリアルが迷宮の中にでも来てくれたら秘密裏に暗殺できるんだけど、でも戦闘力の不安もあるしな。なぁ、ルシル。ルシファーの知識で俺の中の神の力を抑制する方法とかわからないのか?」
「ルシファーの知識って……コーマ。言っておくけど私は記憶は封印していたけど知識は封印していないから、正直知っていることってそれほど増えていないのよ」
「それでも何かヒント的なものを頼む!」
困った時のルシル頼みだ。最近、力の神薬だけでなく魔力の神薬、反応の神薬においても成長速度が著しく下がってきた。ルシル曰く人としての限界に近付いているらしい。
「んー、そうね。ほら、破壊衝動制御率が100%状態になった時にアイテムのスキルを吸収したじゃない。あれってもうできないの?」
「あれなぁ、いくら試しても99%より上に行かないんだよ――多分、あの時は俺の中にいたエグリザが助けてくれたんだと思う」
「エグリザ? あぁ、クリスのお父様ね」
そうだ。あの時、俺の目の前にクリスがいた。
娘を救いたいと願う父の力でも働いたのだろうか?
そのエグリザも、俺の中にはもういない。ゴブリン王を巡る戦いの時、俺たちを救うためにその力全てを使い切った。
もしかしたら、もう二度と破壊衝動制御率が100%に至ることはないのかもしれない。
「他には……そうね。パッシブ効果のある補助魔法を覚えるのはどうかしら?」
「補助魔法? マ〇カンタみたいなやつか?」
「どちらかといえばス〇ラやバ〇キルトみたいなものよ。コーマはいままで力の妙薬とかで似たようなことをしていたけど、魔力も大分上がって来たし、戦略の幅も増えると思うわよ?」
「なるほど、確かにそれはいいかもしれない。でも、補助魔法ってどうやって覚えたらいいんだ? 補助魔法の魔法書って今のところ俺、作れないんだよな」
作れる魔法書は全部作っている。火からはじまり、雷、水、光など魔法書は作ってきたが、補助魔法は覚えることができていない。
「そうねぇ、補助魔法って回復魔法の延長みたいだから――コーマ、回復魔法の魔法書も作っていないわよね?」
「ん――そう言えば作れていないな……ルシルが回復魔法を覚えてるし、魔法よりエリクシールやアルティメットポーションを作ったほうが早いからな……回復魔法の魔法書の素材ってなんだろ」
「いやし石よ」
「いやし石?」
聞いたことがない名前のアイテムだ。でも、それだけ聞いても回復魔法が使えそうな気がする。
「北大陸で稀に見つかる石よ。持っているだけで自然治癒力が上がるっていう奇跡の石で、滅多に市場に出回ることはないわ。私も何個か持っていたけど――魔王城が壊れたときに全部壊れたわ――私のコレクションと一緒にね」
と、かなりげんなりとした口調でルシルが言った。
あれ? 今まで魔王城にあったアイテムが無くなったことに対してルシルが残念そうに言う事はあったが、これほどまでに辛そうなルシルははじめてだ。
どういうことだ? そう思って、俺はようやく気付いた。
「……あ……そうか。ルシファーコレクションってつまり、あれって全部お前のコレクションだったのかっ!」
そうだ。最初にルシルが自慢げに見せてきた、俺が使うはずだった秘宝の数々。俺はそれをルシファーコレクションと呼んでいたが。
「そうよっ! あれらのアイテムを集めるのに私がいったいどれだけ苦労したと思ってるのよっ! 壊したの全部私なんだけど!」
「そうかそうか、お前も立派なコレクターだったのかっ! 思わぬところに同志がいたんだな」
俺は笑いながら、一枚のメモを取り出す。
ルシファーコレクションの一覧だ。だが、これは俺が一瞬だけ見て覚えているものを書き写した物だ。
「ルシル、コレクションの中でお前が覚えているものをこれに書いておけ――俺のせいで無くなったアイテムは全部再び揃えてやるよ。72財宝を集めるついでにな」
「……コーマ、少し嬉しそうじゃない?」
「そりゃそうだろ。集める楽しみが増えるんだからな」
さて、ではさっそく今から、そのいやし石を手に入れるために動きますか。
ついでに、約束も果たさないといけないからな。




