復習するのは船の中
~前回のあらすじ~
クルトが苦しんでいる。
風土病の治療薬を貰った翌日、私は朝一番の定期船に乗り、北の島へと戻りました。
船にはブランさんも乗り合わせていました。
彼には一箱分の薬、9本の治療薬を渡しました。
まぁ、依頼を受けたのは一箱分ですし、コーマさんからは何度も何度も何度も何度も、残りの薬は病院に直接持っていくようにと言われています。
それこそ耳にタコができるんじゃないかと思うほどです。
「おぉ、流石はクリスティーナ様、見事です。ところで、女海賊の捕縛のほうはどうなりましたか?」
あ……すっかり忘れていました。
でも、もう海賊を捕まえる必要はないです。
何故なら、コーマさんが海賊を説得してくれて、薬を全て譲ってくれたんですから。
おそらく、海賊によって薬が盗まれることはもうないでしょう。
私がそう説明したら、ブランさんは神妙な顔になり、「そうですか、それはようございました」ととりあえず納得した様子で、薬を倉庫へと運ばせました。
とりあえず、私は暇になったので、休むことにしました。
つまり、いろいろと考えてみます。
私が何かを考えていたら、コーマさんに「下手な考え休むに似たりだな」と言われたので、休むのにはちょうどいいでしょう。
まず、この海には二つの島があります。
でも、土の島ではなく、アイランドタートルという巨大な魔物の上に住んでいるというわけです。
その中で島の領主は北の島に住んでいるフリード・ガエン。
島の人のために薬を配るいい人です。
薬は風土病の治療のために使われる予定です。
でも、その風土病というのはアイランドタートルの呪いだそうです。
でも、人を呪わば穴二つ。その呪いのせいでアイランドタートルも負荷がかかっている。
自らを苦しめてまで人を呪うアイランドタートルの謎です。
南のアイランドタートルは死んでいるそうなので、呪いを発しているのは北のアイランドタートルだけということになります。
ならば、全員南の島に逃げたらいいような気がしますが、私もジューンさんに話を聞いただけで、本当に風土病の原因がアイランドタートルの呪いかどうかはわかりません。
巨大な魔物が魔王と言われていますが、アイランドタートルが魔王なのでしょうか?
もう一つの魔王候補ともいえる魔物は一角鯨でしょうが、こちらは伝承にしか残っていない魔物です。調べようがありません。
気になることは、フリードさんの娘、ランダ・ガエンさんがいうマユ姉さん。
島の守護神ということですが、なんでもフリードさんによって監禁されているとか。
まぁ、守護神なら魔王とは関係ありませんね。
さて、これからどうしましょうか。
まずは、コーマさんに言われた通り、病院にいって薬を配り歩きましょう。
そして、情報集め。
アイランドタートルについての情報を集めるのは必要でしょう。
風土病の発生時期とその時に島に何があったのか?
そのあたりを調べないといけません。そのついでに隙を見て、ランダさんと接触して、マユさんの情報を集めないといけません。
海賊についてはさっきもいったように問題ありませんね。改心してくれたようですし。
「……あれ?」
遠くに小船が見えます。
船にのっているのは……眼帯はしていませんが、あの女海賊さん? 後ろに別の女性を乗せています。
白い髪の女の子……? でもあまりよく見えません。
私の他には誰も気付いていないのでしょうか?
船は凄いスピードで南へと向かっていきました。
ただの船ではありませんね、今から追いかけたとしても間に合いません。
さて、考えても何もわからないことがわかりましたし、私はもう少し休憩することにしましょう。
暫く休んだら、またコーマさんに相談すればいいですね。
そして、私達は北の島の港へとたどり着いたわけですが。
島はとてもあわただしい様子です。
島中を多くの人が走り回っていました。誰かを探しているようです。
一体何があったのでしょうか?
ブランさんも知らないようで、走っている男をつかまえ、事情を聞いていました。私には聞こえませんでしたが、ブランさんは事情を聞き終えると少し驚き、何か命令をしました。そして、「クリスティーナ様、申し訳ありません。少々急用ができました。先にお屋敷にお戻りください」と言って走って行きました。
何があったのか訊く暇も与えてくれませんでした。
まぁ、とりあえず、今は病院へ行きましょう。
病院は2ヶ所あって、昨日は大きな病院を見ましたが。
そういえば、コーマさんからは、小さい病院に渡すように言われています。
えっと、確か、病院の場所はどこだったかな。
アイテムバッグから島の地図を取り出して、確認すると、すぐ近くにあるみたいですね。
歩いていくと、兵士さんみたいな恰好の人達とすれ違っていきます。
港だけでなく、島中を走っているのでしょうか。
暫く歩くと、目的の病院を見つけました。
病院というよりは診療所といったところでしょうか。
とても小さな建物です。
「あの、すみませ…………」
建物に入って私は思わず絶句しました。
診療所にいた人達が虚ろな瞳でこちらを見つめてきます。
全員、青い斑点が浮かび、座り込んでいます。
三十人くらいの人でしょうか。
全員分の薬はありません。
彼らが全員病人?
子供からお年寄りまで多くの人がいます。
「どうかなさいましたか?」
そう言って白衣をきた50歳くらいの痩せた男の人が出てきました。
「あの……もしかして、彼らは風土病の患者さんですか?」
「はい、そうですよ」
「どうしてここに……」
「病気の症状が出ている方は病院に隔離するよう島長からの命令があるのですが、ベッドにはもう空きはなく、症状の軽い方はこちらで待っていてもらっているんです」
「そんな、もう一つの病院にも行きましたが、あっちはこんな」
「あの病院は一定額以上税金を納めた人しか利用できません。薬も十分ありますからね。薬も高価ですから我々が買うことはできません」
薬が買えない人がいる?
そんなこと、一言もフリードさんは言っていなかった。
「……あ、そうだ! 薬!」
私はアイテムバッグから薬を医師に渡します。
「これは……」
「治療薬です! 海賊さんが返してくれました」
「彼らが? そんなバカな」
「いえ、海賊さんもきっとこの状況を知って改心してくれたんですよ」
「違います。彼らが薬を盗むのは、彼らの仲間の病気を治すためです。向こうも薬が足りませんから余るわけはないんです」
聞いた話とまるで違う事実を告げられた。
そうだったのか。
「……じゃあこの薬は……」
まさか、偽物?
恐らく、そう思ったのは私だけではありません。
「わかりません。この薬は1本だけでしょうか?」
「いえ、100本以上あります」
「そうですか……わかりました。まずは私が試しに飲みましょう」
そう言って、医師は自分の袖をめくった。
腕には青い斑点が浮かび上がっている。
治療する側の彼も罹患者だったのか。
「で……でも」
「この薬が本物なら多くの人が救われます」
そういい、医師は薬を飲んだ。
そして、他の患者を含め全員が彼の腕を見つめた。
すると、腕から青い斑点が消えていった。
「本物のようですね」
「わ、わかりました! 薬はまだまだあります! 症状の悪い人からすぐに――」
「よろしいのですか? 薬を買うお金は我々には――」
「ただでいいです! 早く配りましょう」
その声に、患者達から喜びの声が上がる。
私はアイテムバッグから次々に薬瓶を取り出し、配っていく。
「12本、こちらにください。奥にいる動けない方に点滴で注入してきます」
「わかりました」
その後、患者全員に薬を配り終えても、20本以上の薬が余りました。
しかも、医師が言うには、この薬はかなり性能がいいものらしいです。
でも、なんで薬がこんなに用意されたのか。
(……コーマさんしかいませんね)
私の従者のコーマさん。
いつも変な薬を大量に持ち歩いていますから、彼ならこれらの薬を持っていても不思議ではないです。
(……………………)
いえ、やっぱり不思議です。
ただ、医師が言うには、これらの薬を飲んでも病気が完治するわけではないそうです。
一週間くらい症状が治まるだけなのだとか。
やはり、呪いの根源を断たないといけませんね。
ひとまず、フリードさんのところに行こう。
彼なら何か呪いについて知っているかもしれない。
いえ、知っているはずです。
もう、私の中で、フリードさんは善意だけの領主ではなくなっていました。
もう少しでフリードさんの屋敷というところで、金髪の少女、ランダさんが屋敷から出てきました。
そして、私のほうに駆け付けました。
ランダさんは辺りを窺い、誰もいないのを確認したら、
「クリスティーナ様、ありがとうございました」
「薬のことですね。そのことで――」
「いえ、マユ姉さんのことです。クリスティーナ様なんですよね、マユ姉さんを攫ってくれたのは!」
え? 攫われた?
想定外の出来事にもう考えることを放棄したほうがいいかもしれません。
とりあえず、コーマさんに相談してみましょう。
そう思い、私は通信イヤリングを握りました。
おかげさまで累計ランキング1000位以内にはいりました。
ありがとうございます。




