最強の魔王の力の片鱗
俺の鱗はアイテムではない。
そう思っていた。
実際に、鱗を剥いで鑑定したことがあるのだから、それは間違いなかったのだろう。
だが、そうではない。
そもそも、俺と言う存在自体が異端の人間なんだ。
元々異世界人であり、ルシファーの魂を体に取り込み、ルシルの魔法によってその力の大半を封印され、そして力の神薬などを飲み続けてパワーアップした。
エントキラーが、最初はアイテムとして登録されていなかったように、俺の鱗もまた、アイテムとして登録されていないだけではないか?
この世界に認められていないだけなのではないか?
そう思った俺は、自らの鱗と鍛冶スキルを使い、一本の刀をその手で生み出した。
そして、鱗と一緒に刀をブックメーカーのところに持っていった。
結果、ふたつのアイテムは、確かに鑑定で見られるようになった。
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竜人の鱗【素材】 レア:★×7
竜の力を取り込んだ人間――竜人の鱗。
その硬さは竜人の力に比例する
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竜人刀【剣】 レア:★×8
竜人の鱗を溶かし、合わせて固めて作り出した最強の刀。
切れ味重視のため、強度は今一つ。
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ギャグを一切含まないシンプルな鑑定結果。
だが、これのおかげで、俺はとうとう自分の鱗を素材にして、アイテムクリエイトを使うことができるようになった。
しかも、本来なら魔物に生えている鱗などは剥ぎ取らないと、生えている角は折らないとアイテムクリエイトを使うことができないのだが、俺の体から生えている鱗は、最初から俺の所有物としてみなされているのか、剥がすことなく作り変えることができる。
だが、その場合だと、
「どうだ? ベリアル――」
「面白いぜ、コーマ。こんな戦い方をする奴は初めてだ」
ベリアルが力を込めると、俺の体から生えた竜人剣がぽきっと折れた。
切れ味重視にしたせいで、強度が著しく低下しているな。
俺は距離をとり、自らの鱗を剥がすように、刀を抜く。
力を緩めたら意外と簡単に剥がせるが、かさぶたを剥がしたときのように出血するのはやっぱり辛い。
「……痛そう」
見学をしているクリスからそんな感想が漏れた。
ただ、今の俺は戦いにより、アドレナリンが分泌されており、鱗を剥がす程度では痛いと感じない。
「ベリアル、どうだ? 降参するなら今の内だぞ」
「はっ、こんな面白い戦い、死んでも降参なんてしないぜ」
「だよな。お前ならそう言うと思ったよ。行くぞ! アイテムクリエイト! アイテムクリエイト」
今度は俺の両手の指先に二本の剣が現れた。
「コーマ、悪いがその攻撃、弱点がふたつある」
「何だ!?」
俺はベリアルの拳を躱しながら言った。
「ひとつ、お前の剣は脆すぎる。当たれば痛ぇが、簡単に折れる」
ベリアルは俺の刀に蹴りをいれた。左手の刀がぽきりと折れる。
これは俺も知っている弱点だ。
「だから、こんなこともできるんだぜ!」
すると、今度はベリアルが右手の刀にわざと突き刺さるように拳を打ちだした。
そして、その拳は刀に突き刺さり――刀を折ってそのまま俺の顔寸前にまで迫る。
……危なかった。刀で拳の威力が僅かに落ちていなければ、ベリアルが攻撃の予告をしていなければ、あの拳は俺の顔面に突き刺さっていた。咄嗟に後ろに飛んだから難を逃れたが。
「参考までに、もうひとつの弱点も聞いていいか?」
「あぁ、いいぜ。簡単な弱点だ」
その瞬間、俺は左の視界を潰された。
何があったのか――それは俺の左目が最後に見たものにあった。
折れたはずの俺の刀の刃が、俺に迫っていたんだ。
「お前、折られた刀が相手に悪用されるだなんて思ってもいなかっただろ」
俺はまたもエリクシールを使い、体の治療をする。
いったい、いつ、どうやって刀を俺に飛ばしたんだ?
「コーマさん! ベリアルの足です! 足の指ではじいていました」
「はっ?」
治った目でベリアルの足を見た。さっきまで履いていたはずの靴はなく、素足になっている。
足の指で落ちていた刀を飛ばしたっていうのか?
「気付いていなかったのか? がはは、死角がないんじゃなかったか、コーマよ」
ベリアルが大笑いながら言う。
最強の魔王ベリアル。
俺はその実力の片鱗を見て――
「ふっ、ふふふ」
笑っていた。
成長無職2巻、本日発売です。
あとがきでのコーマとルシルのバカ騒ぎは1巻同様健在です。




