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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode03 海上都市

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二人の出会いはカレーとともに(クリス視点)

~前回のあらすじ~

クリスがいよいよルシルに接近

 目指すは、開けっぴろげの家。

 子供二人からの情報収集です。子供相手だからこそ、裏表のない情報が得られるというものです。

 とりあえず、相手に警戒心を与えてはいけないと、私は笑顔で二人に近付こうとしたところで、顔をこわばらせました。


 海から巨大な魚――何故か焼き魚のいい香りがします――が這い上がってきて、二人を襲おうとしています。

 私はプラチナソードを抜き、二人を助けようと走って行きました。


 ですが、巨大な魚が跳ねながら二人に近付いていきます。このままでは私より先に二人に――お願い、逃げて!


「転送! 自由落下モード!」


 少女が魔法を唱えると、突如巨大魚の下に魔法陣が現れ、その巨体の姿が消えました。


「タラ、上よ!」

「承知した」


 上?

 私が上を見上げると、先ほどの魚が空から落ちてきます。

 え? なんで?


 そう思った瞬間、少年が地を蹴り、モリを突きつけました。

 巨大魚も少年を飲み込もうと口を開けました。

 ですが、少年は恐怖もなさそうにその口へと自ら入っていき――そのまま巨大魚の身を突き抜いて出て行きました。

 少年が落下するころには、巨大魚はドロップアイテムも落とさず、静かに消えて行きました。


「流石は主の作ったモリ。いい切れ味だ」

「よくやったわ、タラ。でも、なんであの魚、ここに戻ってきたのかしら?」

「あの魚はおそらく鮭です。帰巣本能を持っているのでしょう」

「へぇ、そういうものなんだ」


 二人は今の戦闘について語り合っています。

 強い……。

 まず、あの少女。次元魔法の使い手なのでしょう。一瞬のうちに魚を上空に転移。もしも昔の私があんなことをされたら死んでいたのは間違いないです。

 今は多重ジャンプスキルのおかげで意識が保たれている限り、落下による死亡のリスクは減りましたが。

 それとあの少年。普通に強いです。獣人は私達人間の平均値を大きく上回る身体能力を持つと言われますが、その比ではありません。

 なにより、百戦錬磨の経験を持っている、そんな気がしてなりません。ただ跳んで魚を突いただけ、それだけなのに、いえ、それだけだからこそそう思わせる何かがあります。


「あ……あの」


 私がおずおずと二人に声をかける。


「え……」

「む……」


 二人は私を見るや、驚いた様子で、二人で背中を向けて何が話し合っています。

 暫くして結論が出たのか、こちらを向き、女の子が私に近付いて来ました。

 近くで見ると、銀色ツインテール、黒いドレスの少女は、日焼けなんて言葉を知らないかのような白い肌のとてもかわいらしい女の子です。

 ドレスも高級品で、こんな場所でなければ、どこかの貴族の御令嬢と思ってしまうような出で立ちをしています。


「何か用?」


 警戒心……いえ、どちらかといえば敵対心を向けて少女が睨み付けました。


「私はクリスティーナと申します。昨日、地上から――」

「知ってる。勇者クリスティーナでしょ」


 え? 今度は私が警戒心を強めました。

 なんでこの人は私のことを知っているのか。


「ふん、私は勇者が嫌いなの」

「ど、どうしてですか? 勇者は皆のために働く立派な職業なんですよ!」

「皆のため? 認めてもらいたいのは自分のためじゃないの? 自分のために自分にとって都合のいい正義を振りかざすのが勇者よ」

「そんなことないです! 少なくとも私の父は立派な勇者でした!」

「立派に自分の正義を貫いたのね。自分のためだけの」


 彼女はそう言うとそっぽを向いた。  

 何を言っても暖簾に腕押しというか、無駄な感じがします。

 ですが……やっぱり納得できません。

 お父さんは……お父さんは……立派な勇者だったんですから。


 私がどうやって説得しようかと悩んでいたら、タラという名前の少年が少女に近付いてきた。


「ルシル様、言い過ぎです」

「……ふん」


 タラくんに言われて、ルシルと呼ばれた少女はそっぽを向いた。


「すみません、ルシル様は勇者に対していい感情を持っていなくて」


 タラくんは私に謝罪しました。


「ふん、当たり前よ。私のお父様は勇者のせいで死んだんだから」

「あなたもお父さんが……いないの?」

「あなたも……てことは女勇者も……そう」


 ルシルはちゃんため息をついて、


「大人げなかったわ。私が悪かったわよ」

「私は事情をよく知らないんですが、わかってもらえてよかったです」

「クリスティーナね。私はルチミナ・シフィルよ。呼ぶときはルシルでいいわ。みんなそう呼ぶし」

「では、私のこともクリスでいいです、ルシルちゃん」

「ルシルちゃ……はぁ、まぁ、いいわ……その呼び方で。クリスはお昼食べていくでしょ」

「え? そんな悪いですよ」

「いいのよ……どうせいっぱいあるし。タラ、お願い」

「承知しました」


 どうやら、タラくんとルシルちゃんの関係は部下とご主人様のようです。

 本当に、いいところのお嬢様なのかもしれません。


「申し遅れました。タラと申す。ルシル様のパートナーが我が主という関係です」

「ちょっと、タラは私の部下でしょ!」

「その契約はすでに解除されています。コ……グー姉さんも同様です」

「……えぇー」


 よくわからないけど、主従関係は結構複雑なようだ。

 そう言いながらタラくんが料理を運んできてくれた。

 とても食欲のそそられるいい香りのする料理です。

 見た目はあまりおいしそうにみえない、どろっとした茶色いソースのかかったごはんです。


「カレーっていう料理らしいわ。とってもおいしいのよ」

「前にグー姉さんが主から教わった料理です。複数のスパイスを組み合わせて作ったルーをごはんにかけた一品です」

「複数のスパイス? 塩、胡椒と唐辛子の他にスパイスがあるんですか?」

「あるわよ。ちなみに、このカレーに入っているスパイスは通常の胡椒……つまり、ブラックペッパーとホワイトペッパーの他に、クミン、コリアンダー、カルダモン、オールスパイス、ターメリック、チリーペッパー、シナモン、あと塩も入ってるわね」


 ルシルちゃんはスラスラとスパイスの名前を言っていく。

 それを聞いて、私が素直に感嘆の声を上げると、ルシルちゃんは自慢げに胸をはり、


「このくらい当然よ。私だって料理の勉強はしてるんだから」


 料理はさせてもらえないんだけどね。

 と彼女は口をとがらせて言う。貴族の娘などは、自分で料理をすることははしたないものだと教えられることがある。そういう意味なのだろう。

 と思いながら、私はカレーという料理をご飯と一緒に食べた。


「あ、おいしい」

「でしょ? でも、私はチョコレートとかのほうが好きなんだけどね」

「それで、クリスはなんでここに来たの?」

「えっと、それはですね――」


 私は二人に簡潔に説明をした。


「要するに、薬が必要なのですね」


「え?」


 聞き覚えのある声に、振り向くと、獣耳の――銀色の仮面をかぶった少女がいた。

 聞き覚えが確かにある気がしたんですが、獣人の女の子の知り合いはいないはずですが。

 彼女は大きな木箱を15箱ほど持って現れました。


「はじめまして。グーと申します。クリス様のお探しの薬はこちらです」

「え?」


 テーブルの上に置かれた木箱を開けると、薬瓶がいっぱい入っています。


「これが……薬?」


 本物なのだろうか?

 そう思った時。

 通信イヤリングが鳴りました。


『あぁ、クリス、聞こえるか?』

「あ、コーマさん」

『さっき、海賊共と話がついた。風土病に関する薬は全部返すそうだ。お前はそれらを、直接病院に届けるんだ』

「コーマさん、裏で海賊と交渉していたんですか?」

『あぁ、1箱は依頼主に渡していいから、残りは直接、小さな病院に届けるんだ。絶対だぞ。多くの人の命を助けるにはそのほうが手っ取り早いからな』

「わ、わかりました!」


 コーマさんも裏で頑張っていたんですね。

 私はアイテムバッグに薬を全て入れます。


「クリス、もう行くの?」

「ええ、ありがとうございました、ルシルちゃん! また機会があったら会いましょう」

「勇者は嫌いだけどクリスのことはちょっとだけ認めてあげるわ」


 そう言うと、ルシルちゃんは少し悔しそうに微笑みました。

 誰かに認められるというのはうれしいことですね。なんで認められたのかさっぱりわかりませんけど。


 そう思いながら、私は元来た道を帰って行きました。


 女海賊捕縛について頼まれていたことを忘れたのは帰りの船の中でのことでした。


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