解呪ポーションの生産ライン(後編)
~前回のあらすじ~
奴隷を買うことにした。
結局、錬金スキルを持っている奴隷はさっき会ったクルトという男の子しかいなかった。
セバシさんに頼み、クルトと合わせてもらうように頼む。
暫くして、クルトがやってきた。
相変わらず女の子と言われてもおかしくない顔をしているが、セバシにも確認を取ったが性別は男。
タラとコンビを組ませて、男の娘アイドルとして売り出せそうな気がする。
この世界で男の娘の需要があるかどうかは不明だけど。
「はじめまして、俺はコーマ。君と話がしたい」
「クルトです。お声をかけてくださり、ありがとうございます」
あまりうれしそうではない表情でクルトは頭を下げる。
やっぱり奴隷として誰かの元に売られるのは嫌なのだろうか?
「君はどのような仕事をしたい?」
「コーマ様はすでに御存知かと思いますが、僕は父を殺した罪で奴隷となりました。罪を償うために、できる限り過酷な仕事をしたいと思っています」
「セバシさんにも聞いたが、君の罪はそれほどひどいものではない。事故のようなものだったと聞いている」
「それでも、僕は願ったことがあります。父が死ねば楽になるのでは? そう思ってしまった。父が死んだのは、僕の弱い心に悪魔が入り込んだのが原因です」
悪魔のせいにしている、というわけではない。
魔が差した理由は自分の心の弱さにある、そう言っているんだ。
「そうか、過酷な仕事がしたいのか。なら、君を買おう。セバシさん、彼を買うにはいくら払えばいいんです?」
「金貨2枚です」
かなり安いな。
「コーマ様は犯罪奴隷を買うのは初めてでしたよね? 犯罪奴隷について説明は必要でしょうか?」
俺が頼むと、犯罪奴隷について教えてくれた。
犯罪奴隷は罪を犯したものがなるため、解放することは不可能。
半年に一度、もしくは役場から出頭命令があった時に役場にいかないといけない。
もしも逃がしてしまった犯罪奴隷が何か問題を起こせば主人にも処罰が下るが、隷属の首輪の効果で主人には絶対服従のため、問題はそれほど起こらないという。
その他は借金奴隷と同じようだ。見た目にも区別がつかないようになっている。
説明を終え、俺はクルトの主人となった。
もう夕方だ。
「セバシさん、クルトの夕食はもう終わってるんですか?」
「いえ、まだです」
「そっか。じゃあ、クルト、飯食いに行こう」
「食事……僕はまだ何も働いていません。働く前に食事をいただくというのは」
「じゃあ、最初の命令だ。飯食いに行くから、一緒に飯を食うぞ」
その後も、クルトは俺の横を歩くのを拒み後ろをついて歩くと言ったり、荷物を持とうとしたり、奴隷として振る舞おうと一生懸命だった。
どうもなれないなぁ。
暫く歩き、俺達は迷宮10階層へ行く転移陣についた。
クルトは何も訊ねない。
「なぁ、クルト。疑問は口にしていいんだぞ。食事に行くと言って迷宮へ行くのは絶対におかしいだろ?」
「いえ、ご主人様には何か考えがあったのことだと思っております。僕はご主人様に従うまでです」
どうもやり辛い。
こいつ、俺がボケをしても笑いをせずに真剣に考察して的外れな行動をするタイプだな。
ボケ殺しのクルトと名付けようか。
いや、そんなこと言ったら、「素敵な名前をいただきありがとうございます」とか言いそうだしな。
「ま、ついてこい……、俺の手を離すなよ」
そして、俺たちは転移石を使い、海の家の休憩所へと移動した。
もちろん、持ち運び転移陣は上下貼り換えておいたので、頭からベッドに落ちる心配はない。
「……お、クルトもさすがに驚いたな。ここは蒼の迷宮の35階層だ」
そう言い、俺は休憩室の扉をあけた。
そこには海の家が――悲惨なことになっていた。
テーブルが3つ壊れ、椅子が木片に姿を変えていた。
床には大きな穴が開いている。
それだけ悲惨な状態なのに、ルシルたちは全員無事のようだ。
「…………何があった? まさか、海賊退治の一団に襲われたのか?」
「あ……あの、コーマ様、ルシルさんを怒らないでください」
コメットちゃんがおずおずと手を上げた。
「よし、わかったよ、コメットちゃん……」
そうかそうか、つまりはルシルが原因か。
なら、理由は一つしかないな。
「ルシル、お前料理したな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!i!!!!」
もう怒りすぎてエクスクラメーション・マークの羅列になっている。
エクストラメーション・マークが多すぎて一つは上下反転して小文字のアイになるくらい俺は怒っていた。
「あ……あの、コーマ様、私が悪いんです。ルシルさんは料理をしたらコーマ様に怒られるといっていたんですけど、それなら魚を焼くだけお願いしたんです」
「魚を焼くだけ?」
そういえば、俺が用意した七輪があったな。
あれで魚を焼くだけなら問題ないとは俺も思う。
「はい、七輪を使って火をおこすまでは私がしたので、あとは魚を乗せて塩を振るだけをお願いしたんですが」
「それで間違えて火薬を振ったとか、間違えて魔力の粉を振ったとか?」
「いえ、間違いなく塩を振ったんです。なのに、どうしてか、死んでいるはずの魚が生き返って巨大化。散々暴れまわって海へと帰って行きました」
それは流石に想定外だ。
料理が下手とか上手いとかの問題じゃないだろ。
料理をすると魔物を作り出す呪いでもかけられているんじゃないか?
解呪ポーションでも治せないたちの悪い呪いが。
「……コーマ……ごめんね」
ルシルは上目づかいで俺に謝った。
こいつも反省してるんだな。
ルシルの料理が下手なだけかと思っていたが、原因はそうじゃないんだよな。
「ルシル、今まで料理をするな、とか言って悪かったよ」
こうなったら自分の否を認めるしかない。
「お前は食材に一切触るな!」
「コーマひどい! こんなに反省してるのに!」
「反省ならクリスでもできるわ!」
怒鳴りつけながら、俺は木片となった椅子に「アイテムクリエイト」と唱え、椅子を復元。
最初にあった椅子よりいいものができあがった。
同様に机も一度木片にばらしてから作り直す。
床はとりあえず、万能粘土で塞いでおいた。
あとで木の板でも乗せないとな。
「……と忘れてた。おおい、クルト!」
「ご主人様!」
クルトは何故か感動して頭を下げた。
「僕をこのような過酷な環境で働かせてくださり、ありがとうございます!」
クルトはとても感覚のずれた男の子だった。
過酷な環境?
何言ってるんだ、こいつ?
こんなの俺の日常に過ぎない!
自分で思ってとても悲しくなった。




