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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode03 海上都市

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水中歩行のエラ呼吸薬

~前回のあらすじ~

クリス、多段ジャンプ修得。

 結局、聖剣やら魔法剣やらのスキルについては発現方法がわからなかった。

 地上に戻ったら、スキルについて調べてみようか。


 蒼の迷宮34階層に続く階段。

 そこは流石に想定外の光景だった。

 なぜなら、34階層は天井まで完全に水浸しだった。

 鎧をアイテムバッグにしまったクリスが、素潜りで中の様子を探ってきたが、水のない通路とかはないようだ。

 後ろ髪をゴム紐でくくった彼女は、「塩が髪にからみつく……シャワー浴びたいなぁ」と呟いていた。

 昨日野宿したうえ、いつも住んでるフリマの従業員寮のお風呂の設備が最高だからな。

 そういえば、宇宙飛行士とか、水のいらないシャンプーを使うって話を聞いたことがある。

 もしも作れば、インフラ設備の整っていないこの世界では需要があるんじゃないだろうか?

 まぁ、シャンプーとリンスに関しては、メイベルからもっと仕入れて販売できないか? と相談を受けている。

 化粧水に関しては絶対に無理だと言ってある。

 でも、本気でアルティメットポーションの使い道は考えないとな。

 アイテムクリエイトで作るポーションだと、なぜかガラス瓶まで一緒に生成されるが、アルティメットポーションは聖杯から湧き出るものだからな。

 ガラス瓶がいくらあっても足りない。


「私は4分しか素潜りできないですから、ちょっと35階層に続く階段を探すのは難しそうですね」

「35階層は人が住んでるらしいから、流石に空気はあると思うんだけどなぁ」


 35階層に住んでいる人が人魚だとは聞いていない。


 俺は1分素潜りできたらいいほうだ。

 仕方ない、最後の手段を使うしかないか。


「クリス、水の中に潜るための薬があるんだ」

「そんな薬があるんですか?」


 魚のヒレとポーションを組み合わせて作った「エラ呼吸ポーション」というものがある。


「あぁ、これさえ飲めば、1時間、水の中で呼吸できる。ただし、言葉がほとんど伝わらないと思うから――」


 そういうわけで、暫く指サインの練習をした。

 そして、一通り覚えた後、俺は2本の薬を取り出す。

  

……………………………………………………

エラ呼吸ポーション【薬品】 レア:★★★★


飲むと水中で呼吸できるようになる薬。効果は1時間。

魚味の薬。ポーションの中でも屈指の不味さを誇る。

……………………………………………………

 

「臭……臭いですよ、コーマさん」

「我慢だ、クリス。我慢だ。一気に飲み干すんだぞ。2回に分けて飲もうなんて思うな。心を持っていかれるぞ」


 不味いものを飲んだり食べたりする辛さは、俺は誰よりもわかる自信がある。

 このポーション、ルシルの料理に比べたら耐えられるものだが、耐性のないクリスは辛いだろうなぁ。


 魚臭いポーションを二人で飲み干し、俺とクリスは海の中に入っていく。

 クリスはいつにもまして真剣のようだ。

 そりゃ、あんなクソ不味い薬は2回も飲みたくないものな。


 アイテムクリエイトを使って作ってるので、最高品質のアイテムのはずなのに、あの不味さ。

 もしも通常通り、レシピを持った錬金術師が作っていたら、ルシルの料理に迫る不味さになるんじゃないだろうか?


 でも水中歩行は幻想的だな。ポーションの副次効果で、塩水で目がしみることもないし。

 海藻が揺れているし、魔物以外の魚も多い。カラフルな魚が多く、南国の海みたいだ。

 不味い薬を飲んだが、飲むだけの価値はあったのかもな。


 後ろを見ると、クリスも似たような感じで景色を満喫している。

 こういうところは、本当に女の子なんだな。

 年齢も俺より年上とはいえ、一歳上なだけで、精神年齢は俺のほうが上だろうし。

 実年齢が約2700歳、俺より約2684歳年上と、結局は約2700歳年上になるルシルも、精神年齢は小学生か中学生なみだしな。

 逆にメイベルは15歳と俺より1歳年下なのに精神年齢は俺より高いしな。


 でも、この景色、本当に、ルシルやメイベル、コメットちゃんにも見せてあげたいなぁ。

 ルシルとコメットちゃんには、35階層の町に行ってから移動転移陣で呼んであげたいな。


 ついでに、ルシルには不味いものを食べる人間の気持ちを味わってもらおう。


 なんて考えながら、とりあえず海草とか、貝とか、珊瑚とか拾えるアイテムを拾いながら、奥へと進んでい――


【いぃぃぃぃぃっ!】


 俺はとっさに引き返せ、のサインを送るが、クリスもすでに気付いたのか引き返していくが、もうだめだ。

 引き返そうと思うが、水流におされて――迷宮の中央に広がった穴へと吸い込まれていった。


【クリスぅぅぅぅっ!】


 俺は手を伸ばしクリスの手を掴もうとするが――指と指が触れたかと思ったら、水流の向きが急に変わり、俺とクリスは離れ離れになって穴の中へと吸い込まれていった。


 そして――


    ※※※


 眩し……え? ここは――


 水の中から、俺は空を見ていた。


 空が見える?


 あれ? 俺、迷宮の中にいたはずじゃ……。


 水を掻いて水面に出ると、俺はそれが空ではないことに気付いた。

 あれ、青い天井だ。にしては明るいな。太陽の下にいるみたいだ。


「クリスぅぅぅ、いるかぁぁぁぁっ!?」


 叫んでみるが、返事は返ってこない。

 聞こえるのは滝の音だけ。

 え? 滝?


 振り返ると、少し離れた天井から大量の水が降り注いでいる。

 天井まで50メートルはあるんじゃないか?

 あんなところから落ちてくるなんて、よく無事で済んだな。


 とはいえ、俺が無事なら、クリスも無事だろう。

 曲りなりにもあいつは勇者だ。神の加護はあるだろうな。


 そして、アイテムバッグを水上に出し、索敵眼鏡を付ける。

 敵の気配は――あぁ、これはなんだ?


 なぜか、巨大な魔物の気配があり――その方角には――島があった。

 島の上には建物が見え、周囲には舟が浮かんでいる。


「……あれが……海上都市?」


 立ち泳ぎをしながら、俺はその町を見つめていた。

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