エピローグ & はじまりの話6
~前回のあらすじ~
マネットと仲良くなれた。
会議室兼リビングの卓袱台に並んでいたのは、味噌おでんだった。
料理スキルを学んでから、料理をするのは少し苦労している。美味しく作ろうとしすぎると、美味しくなりすぎて食べ終わった後放心状態になるのだ。
30分は動けなくなる。
その点、オデンはまだマシだ。素材は全部アイテムクリエイトで作り、出汁をとり、味噌、砂糖、みりん、酒で味付けしたら煮込むだけだ。もしも具材などを一から作ったら危険だ。料理をするときは、アイテムクリエイトの手抜きが必要になった。
あと、変わったことといえば、皆、箸の使い方が上手くなった。
アイテムクリエイトで割り箸を作ったら、木の枝から40本の割り箸ができて、アイテムバッグの中には300本くらい割り箸が入っているが、最近は細工で割り箸をつくってみた。
すると、全員の手によく馴染む味のある箸になり、全員、箸の持ち方が成長したのだ。
空気穴から蒸気が漏れる土鍋の蓋をあけると、味噌のいい香りが一気に部屋の中に広がった。
誰もまだお椀を持たない。
全員が膝の上に手を置き、俺の宣言を待っていた。
「じゃあ、みんな、手を合わせて」
「「「いただきます」」」
全員で手を合わせて、いただきます。
やっぱりみんなで集まれば鍋だよな。
「んー、チクワブって変な感じよね。もにもにしていてとてもおいしい」
ルシルがおいしそうにちくわぶを食べている。
関東圏外だとあまり食べられることがないチクワブだけれども、アイテムクリエイトで小麦と塩と水だけで作れるので作ってみたんだけど、意外とおいしいな。
まぁ、味噌おでんは名古屋名物だからあまりチクワブは使われないだろうけど。
でも、味噌おでんがこの世界にもあるってことは、もしかしたらカリアナの人達は名古屋周辺に住んでいたのかね?
カリアナの人間が元は日本からのトリッパーだった、というのが前提になるけれど。
マユは無言でダイコンを掴み、横に座っているウォータースライムに食べさせている。
コメットちゃんとタラは猪の肉を食べている。
「これって、コーマの故郷の料理なのか?」
「あぁ、日本ってところのな。どうしてだ?」
「いや、異世界が本当にあるなんて俄かには信じられなくてな」
マネットはそう言って、ゆで卵を食べていた。
俺が日本人……異世界人だっていうことはここにいる全員がすでに知っている。
魔王であるという最大の秘密が知られているんだし、今更隠すことでもないからな。
ぶっちゃけ、日本人であることはクリス達に知られたとしても問題ないとさえ思っている。
「俺だって、最初は信じられなかったさ。ルシルに召喚されて、72財宝を集めろとか無茶ぶりされて、でもおかげでコメットちゃんやタラ、マユにカリーヌ、それにお前とも会えたからな」
あと、クリスやメイベル、クルトにアン。
スー、シー、フリマのみんな。
最近になって、日本のことを思い出さない日がある。
自分が日本人だってことを忘れているんだ。
これからも楽しいことがいろいろとあるだろう。
「……コーマ! 大変!」
「どうした?」
大変、と叫んでいるがルシルの顔は笑顔だ。
何かいいことがあったのか?
「ゴブリン族長の子供が生まれたわ。しかも、結構優秀なベビーゴブリンよ。もしかしたら、ゴブリンジェネラルに進化できるかも」
「わかるのか?」
「一応迷宮内のことはね。あとでお祝いに行きましょ」
「そうだな。どういうものを送ったら喜ばれるんだ?」
そんなことを話しながら、俺達は味噌おでんを食べ続けた。
きっと、これからも、なんだかんだ言ってこんな平穏な毎日が続くんだろうな。
もちろん――いつか崩れ去るモノであるのは理解しているが。
※※※
「……生まれた……か。やはりあそこか」
ギルドマスターの執務室。
冒険者ギルドのトップであるユーリが小さく呟くのを、私は本棚の上から見下ろしていた。
「ルル、降りておいで」
私は小さく頷き、彼の肩に掴まって降りた。
これから、町に危険が押し寄せる。
それを危惧しながら、ユーリの顔を見上げた。
彼の眼は、相変わらず何を考えているのかわからない、闇を映し出していた。
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Episode07 に続く。
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~はじまりの話6~
アイテム創造能力を身に付けた俺の頭によぎったのは、アイテムクリエイトという文字だった。
これが魔法なのか?
そのままな気がするが。
でも使ってみよう。
「アイテムクリエイト!」
叫んでみた。
しかし、MPが足りない。
……とかじゃないよな?
何も起きないんだけど。
「コーマ、能力を覚え終えたのね。もう魔力が漏れてないわ」
ルシルがそう言う。
え、覚えてるの?
俺はただ痛いことを言っただけなんだけど。
「本当に覚えてるのか?」
「アイテムクリエイトって、何かを作る能力なんでしょ?」
「そりゃそうだけど……」
んー、念じ方が悪かったのか?
「アイテムクリエイト! 水よでろ」
「アイテムクリエイト! 岩よ生まれろ」
「我は放つ光のアイテムクリエイト」
「いでよアイテムクリエイト、そして願いをかなえたまえ!」
しかし、何も起きなかった。
「はぁ……喉がいたい」
「大丈夫? 水飲む?」
「あぁ、ありがと……」
俺はルシルから水を受け取ったが、
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魂の杯【魔道具】 レア度:72財宝
魂の杯と契約を結ぶと、契約者の死後、その力を封印する。
水を入れて飲むことでその力を吸収することができる。
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その器を見てため息をつく。
なるほど、これが鑑定か……って魂の杯で水を飲ませるのかよ。
いや、まぁもうルシファーの力はないらしいが。
しかも、水が少し濁ってる。井戸水かな。
ん?
頭に何かがでてきた。
【水⇒蒸留水】
……もしかしてこれ。
俺は魂の杯のなかにあった水を見て念じた。
「アイテムクリエイト!」
刹那、水が光った……ような気がした。
そして、そこにあったのは、
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蒸留水【素材】 レア★
蒸留することにより不純物を取り除いた水。
味のない味が好きな人におすすめ。
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できた。井戸水から蒸留水を作ることができた。
不純物が消え失せ、透き通った水がそこにあった。
これが、アイテムクリエイトか。
「……変化してるようには見えないけど」
「いいんだよ。そうか、アイテムクリエイトは当然だけど材料がいるのか」
そういえば、さっき頭に浮かんだのはレシピだよな。
確認してみると、まだレシピは残っている。
アイテムを見つけるとレシピが追加されていくのか?
だとすれば、材料を集めないと。
「コーマ! あったわ! 倉庫の中に、魔石が二つ! これで部下を召喚できるわよ!」
「本当か?」
「ええ。さっそくやってみるわ」
そうか、部下ができるのなら、その部下にアイテムを集めさせよう。
そうすれば、俺もいろいろと作れるようになるだろう。
あ、その前に魔石を一度鑑定してレシピを登録したい。
「ルシルちょっとま――って遅いか」
すでにルシルの手のひらにあったであろう魔石とやらは砕け散っていた。
そして、彼女の前に魔法陣が青く輝き――そこからコボルトが二匹現れた。
瀕死の状態で。
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はじまりの物語7(終)に続く。
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後書きではなく、本文中に「はじまりの話」ですが、深い意味はありません。
次回7章です。7章で第一部完となります。
6.5章を書いていたのですが、間に合いそうにないので、7.5章になりました。考えてみれば、そっちのほうが都合がいい。




