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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode06 日常閑話

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閑話9 魔王城リフォーム(中編)

~前回のあらすじ~

伝説のタタミの部屋を作ってほしいと言われた。

 ルシルの発言により、俺は驚愕した。

 彼女が求むのは、伝説のタタミの部屋だった。

 まさか、彼女の口から“伝説のタタミ”が出るとは。


「……ってか、伝説のタタミってなんだ?」


 伝説とは伝え説くと書く。

 凄いタタミの話など、伝え説く人間はいるのだろうか?


 吟遊詩人が酒場に来て、伝説のタタミについて歌って許されるのだろうか? いや、許されないだろう。


「コーマなら作れるでしょ。最高級のタタミ。だって、コーマはアイテムマスターなんだから」


 ぐっ、ルシルのやつ、ニヤニヤと笑いながら言うってことは、これはもしや、さっきの仕返しか?

 俺を挑発してるな。


「……いいじゃないか。やってやる! 最高級のタタミを作ってやるよ!」

「家の修理が先じゃないのか?」


 マネットが当たり前のことを言うが、アイテムマスターを名乗る以上、当たり前のことをしているわけにはいかない。

 上等だ、伝説のタタミ、作ってやろうじゃないか!


 匠の技でタタミを作ってやろうじゃないか!


   ※※※


 とはいえ、材料の調達から始めないとなると、情報は必要だ。

 闇雲に話を聞きまわるよりかは、やはりタタミについて知っている人から情報を探るのが一番だろう。


「ということで、レメリカさん。シグレの居所を御存知ありませんか?」

「ストーカーですか?」


 レメリカさんに白い眼で見られた。


「そもそも、貴方にはすでにパートナーがいらっしゃるのでは?」


 いや、説明を「ということで」で済ませた俺が悪いんだけど、完全に勘違いされている気がする。彼女からの好感度は上がる気配がまるでない。なんだろ、恋愛ゲームで通常の難易度が易~難だったとしたら、レメリカさんを落とす難易度は「魔王」になると思う。

 普通の選択肢では攻略できない。例えば、制限時間付き選択肢で、わざと制限時間を過ぎさせる第三の選択肢を選ぶのが正解程度ではない。強いて言えば、選択肢を選ぶときにノーヒントで隠しコマンドを入力するくらいの難易度だ。


「コウマ殿、お久しぶりです」


 振り返ると――黒く長い髪の、絹のドレスを着た美人がそこにいた。


「……え?」

「あぁ、この姿ではわかりませんか。シグレです」

「え? シグレさん!? 忍び装束は!?」

「あれは有事の際に着る衣装ですゆえ、平素はこの姿です。本来は忍び装束の裏地を使い、着物として着るのですが、この町で着物は目立ちすぎるので――」

「あぁ、なるほど。って、そうだ! ちょうどシグレさんを探してたんですよ。よかったら一緒にお茶でもしながら話を聞いてくれませんか?」


 後ろからレメリカさんの視線を背中に感じる。視線を感じるだけでも異常事態なのに、その視線は「ギルド内でナンパをするな」と雄弁に語っているように思える。


「かまいません。今日は情報収集だけのつもりでしたから。恩義に報いるのもまた忍びの務めです」


 うん、やっぱり彼女は忍者で間違いないのね。服装が忍び装束だというのは鑑定でわかってたけどさ。

 ということで、俺はシグレさんをエスコートして、カフェに向かった。


 レメリカさんだけでなく、ギルド内にいた男達の視線が痛い。

 やましい気持ちはまるでないんだけどなぁ。


「シグレさん、人気あるんですね」

「そうですね。情報収集にはある程度女を磨く必要がありますゆえ。美を磨くのもまた忍びの務めです」

「……はぁ、大変ですね」


 否定しないのは、彼女が今言ったのは自慢というよりかは、忍びの仕事について話しているだけのつもりなのだろう。


 そうしている間に、俺達はカフェにたどり着いた。

 たまに来るカフェだ。コーヒーがおいしいが、俺はここのハッカ茶に少しはまっている。

 ハッカって昔は苦手だったんだけどな。すっとする。


 別に聞かれても困る話ではないので、適当な席を選んで座る。

 すると、すぐに店長のおじさんが来た。


「ハッカ茶を。シグレさんは?」

「私も同じのを」

「じゃあ、ハッカ茶二つ。あと、二つともクッキーセットで」


 銅貨1枚をプラスすることで、飲み物にクッキーがついてくる。


「この前はありがとうございました。ですが、話を聞いたのですが、コウマ殿のギルドランクがFにしかならなかったとか」

「え? どこでそれを?」


 レメリカさんはギルドランクについては話さないと思うんだけど。


「風の噂です」


 まぁ、忍者だしな。独自の情報源はあるか。

 もしかしたら、ギロンあたりがポロリと口を滑らせたのかもしれない。


「そうか……まぁ、俺だけの任務みたいなものがあったんだが、それが完全に失敗しちゃってさ。一つランクが上がっただけでも恩情ものだよ」

「コウマ殿の実力なら、すぐにAランクになれると思います」


 それはお世辞ではなく本心なんだろうなぁと思った。俺の自信過剰じゃなければ。

 そういえば、シグレの俺への呼び名が、呼び捨てから殿付けに変わっているのは、俺に恩義を感じているから、とかいう理由があるのか、コーマではなくコウマなのは鎌かけだろうか?


「シグレさんのランクはどうだったんですか?」

「私はおかげさまでBランクになりました」

「いや、俺が居なくてもシグレさんならBランクにはなれたでしょ」

「試験官に死なれたら試験どころではありませんから」


 辛辣だなぁと思う。それって、あの迷宮で「私は平気だけど試験官は弱かった」と言ってるのと同じだよ?

 まぁ、あの中でシグレが頭一つ出て強かったのは認めるけど。


「ところで、コウマ殿、私に話とは?」

「あぁ、伝説のタタミ――」


 その時、シグレの眉が一瞬だがぴくりと動いた。本当に一瞬だ。反応の神薬を飲んでいなければ見落としていたのは間違いない。むしろ、その後にすぐに元の表情に戻れる彼女のポーカーフェイスに驚いたほどだ。


「何か知っているのか?」

「……どこでその話を?」

「いろいろだ」


 本当はそんなものあるだなんて思っていなかったんだが。


「あるお偉いさんが和室を作ってほしいらしくて、伝説のタタミを所望してるんだ。何か知っていることがあれば教えてくれないか?」

「……コウマ殿は本当にカリアナの出身ではないのですか?」

「天地神命に誓って」

「……その言い方がカリアナの者らしいのですが、ウソではないようですね。コウマ殿はタタミの材料は知っていますか?」

「い草だろ?」

「はい。流石はアイテムマスターを名乗るだけありますね。ですが、い草はカリアナ独自の呼び名なんですがそこまで知っておられるとは」


 え? そうなの? ルシルの翻訳魔法さん、ちゃんと仕事してくれてないの?


「御存知と思いますが、い草は、このあたりではトウシンソウと呼ばれる多年草です。普通に生えているトウシンソウを使えばそれなりのタタミが作れるのですが、最高級のトウシンソウは魔物が落とすんです。その魔物の名前はブラングラス。実は私の任務はブラングラスが落とすもう一つのドロップアイテム、最高級のトウシンソウの種を持って帰ることなのです」

「……そのブラングラスのいる迷宮はどこかわかってるのか?」

「はい」


 となれば、話は早い。


「シグレ、同じ伝説のタタミを求める者同士、一緒にその迷宮に行かないか? 俺にはクリスという迷宮へのフリーパスがある、シグレは調査団に入ってアイテムが手に入る機会を待っているんだろうが、その方が早いだろ? 一時的にクリスの従者になってさ」

「……よろしいので?」

「ああ。クリスが断ることはないよ」


 全ては伝説のタタミを作るためだ。

 迷宮探索、やってやろうじゃないか。

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