閑話6 初めての梅干し作り~前編~
今回は久しぶりの閑話です。まぁ、今回の章が閑話なんだけど。
いろいろと苦情があるかもしれないですが、閑話ということで大目に見てください。
~前回のあらすじ~
コーマが梅干しの種を持ち帰った。
梅干しの種から、梅の木を作る。そんなことは本来できない。
種というのは頑丈にできているが、塩漬けになった時点で、植物として成長するための核となる部分が死滅するためだと言われている。
だが、それでも可能性が0ではない。オーストラリアの検疫では、種の入っている自家製梅干しは持ち込むことができないという決まりがある。その理由として発芽する可能性があるからだそうだ。
そして、俺はシグレから梅干しの種を貰った時、確信した。
何故なら、ヨンイチが出した梅干しの種を鑑定したところ
……………………………………………………
梅干しの種【素材】 レア:★
梅干しの種。赤く変色している。中身も食べられる。
これ一粒でごはんを何杯も食べれる人がいるとか。
……………………………………………………
だった。だが、俺が食べた梅干しから出た種は、
……………………………………………………
梅の種【素材】 レア:★
梅の実の種。植えると芽が出て、育つと梅の木になる。
種の核は咳止め薬の材料をして使われることもある。
……………………………………………………
と、説明が違った。植えると芽が出ると出ているんだから、まだ平気なんだろう。
梅の種からは、咳止め薬だけでなく、なんと青酸(猛毒)まで作れることが判明。薬となるか毒となるかが微妙なラインのアイテムらしい。
でも、そんなものに使うつもりはない。
なぜなら、俺は自家製の梅干しを作りたいから!
ただ、俺の魔王城の畑には、すでに小麦だけじゃなく、いろいろと植えているからな。
「いやぁ、ありがとうな、助かったよメアリ」
「……助かっただって?」
頬をピクピクさせて苦笑するメアリだったが、それほど驚くことでもないだろうに。
メアリは、俺がかつてこの蒼の迷宮で出会った女性だ。
以前は海賊行為をして父である前領主と敵対していたこともあるが、誤解が解けて和解。一角鯨を倒すために自ら命を絶った父に代わり、領主として仕事をしている。以前より、僅かにだが太ったと、かなり憂鬱気味に話していたが、見た目はそれほど変わっているようには見えない。
ただ、彼女の亡き父の姿を考えると、油断できないのは確かだろう。
「まぁまぁ、メアリ。この程度で驚いていてはコーマさんと付き合いませんよ」
そう言ったのはマユだ。見た目の年齢はメアリのほうがお姉さんのようだが、メアリが子供のころからマユとは知り合いらしく、マユが年をとらないため、メアリが見た目の年齢を追い越してしまったというわけだ。
喋るためにウォータースライムを頭から被っていることに、最初メアリはかなり戸惑っていたが、事情は知っているから受け入れてくれた。
「マユ姉さん……この程度って、この程度って言われたら困るんだけど……確かに私は言ったよ――」
「ん? メアリ、私って言ったか? お前の一人称はあたいじゃなかったっけ?」
「“あたい”なんて言う領主に誰もついてこない……って、そうじゃない!」
メアリは適度なツッコミを入れ、
「私は確かにコーマに、プラムを育てたいから島を使わせてほしいと言われた。私は許可を出した。空いている島もあったから。なのに、なんで――」
メアリは両腕を大きく左右に広げて訴えた。
「なんで新たに浮島を作ったうえに、小屋や浄水の出る装置、さらに完全な畑まで作れているんだい!? しかも一晩で」
「いや、まぁ、頑張ったぞ?」
島を浮かせている素材として使ったのは水蜘蛛改。これを50セット用意した。
そのうえに強度の強い板を敷き、土を盛りできあがり。一応、強度は問題ないはずだ。ここは迷宮の中だから、大きな津波もこないし、怖いとしたら、魔物と水蜘蛛改の劣化くらいだろうが。
人を雇って働いてもらいたいので、家も作った。
感謝されることはあっても、文句を言われることはないと思うんだが?
だが、メアリの言い分はここからにあった。
「でさ、昨日は種を持ってきたって聞いたんだけどさ、なんで――なんでもう立派な果樹園ができているのさ!」
「いや、まぁ、頑張ったぞ? なぁ、マユ」
「ええ、頑張りました」
「頑張ってどうにかなる問題じゃないでしょ!」
まぁ、肥料がよかったからなぁ。木が一本育ち、きれいな梅の花を咲かせた。季節外れの梅に感動していたが、このままだと危ないと思い、急いで綿棒を取り出して、受粉させたら、受粉した花から、花がしおれ、実ができた。
その100個の実を回収し、うち50個から種を取り出し、植えたところ、50本の木が生えた。
だが、肥料の効果が薄くなったのか、花を咲かせるまでにはいかなかった。
これらも来年には立派な梅の実をみのらせることだろう。
「とりあえず、シグレ……あ、プラムのスペシャリストから聞いた梅の育て方を書いている本を渡しておくから。あと、十年間、この果樹園の手入れをしてくれる人を何人か雇いたいんだけど、一人金貨30枚で足りるか?」
「多いくらいよ。島で雇ってる農園の人は、一律年間金貨2枚程度だから。もちろん、働きによってはボーナスを出すけど。それに、ここで育てたプラムはコーマが買い取ってくれるんでしょ? なら、貴方がお金を出す必要はないわ。余った土地で作れる作物のことを考えると、領主としては貴方にお金を払いたいくらいよ」
「いや、俺は梅の実が手に入ったから満足だし」
俺が言うと、メアリは予想していたと言わんばかりに大きく息を吐きだした。
「全く、あんたは相変わらずだね。まぁ、あたいの目を治してくれた薬代を払うって言ってるのに受け取ろうとしないくらいだし。こんなに恩ばかり膨れ上がったら、体で払っても払いきれないよ」
「ダメですよ、メアリ。私は貴女をそんな淫らな女性に育てた覚えはありませんよ」
「うん、半分以上冗談なんだけどさ、マユ姉さん、少し性格変わったんじゃない?」
「そうですね。3章からレギュラーみたいな扱いを受けると思っていたら、何故か現在はほとんどわき役で、思わせぶりな発言をしているのにその謎に触れられることもなくここまで、ただいるだけの存在として扱われてきたので、そろそろキャラ路線を変更しようとメタ発言をしてみたんですけど、そんなことをしたら読者様から痛い反響が出てきて、「え? あのキャラ何? 作者何考えてるの?」と言われるようになると思うくらいにしか変わっていないですよ」
マユは顔を青くさせて意味不明な発言を続けた。
その台詞に、メアリの顔がさらに真っ青になる。
「え? マユ姉さん、一体何があったの!? 言ってる事の半分以上意味わからないんだけど。え?」
「あぁ、悪い。ルシルに料理試食させられてから、たまに意味わからないことを言ってるんだ」
ひどい話だ。
主にマユにとって。




