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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode05 緑の牢獄

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クリスの意志は父の形見

~前回のあらすじ~

カリーヌが木の魔王に出会った。

 迷宮の中は植物の魔物ばかりだった。

 リンゴの実や樹だけではない、巨大な茎のみの魔物、根のみの魔物。

 数こそ多いが、弱い。


氷槍フリーズランス!」


 ルシルが叫ぶとともに、彼女の手にある魔石が無くなり、氷の槍が空を飛ぶグレープフルーツを貫いた。

 そして、落ちた魔石を拾い、奥へと進む。

 気持ちは焦るが、慎重に。


「(ルシル、そろそろ教えてくれ。ルシルが迷宮の奥に行きたいって言ってた理由ってなんなんだ?)」


 俺は通信イヤリングに小声で囁く。

 ルシルは俺を横目で見て、


「(迷宮はラビスシティーにしかないってコーマは知ってるよね)」


 そう言ってきた。


「(ああ……いや、ここに来るまでは信じて疑わなかった)」

「(でも、本当はそうじゃないの。数年に一度、世界のどこかに魔王と迷宮の入り口が同時に現れるの)」

「(本当か)」

「(うん……それだけならいいんだけど、そういう迷宮が存在すると厄介なことが起きるの)」


 ルシルが言った。


「(瘴気の分散。本来ならラビスシティーに集まるはずの瘴気が分散される。そうね……砂鉄がいっぱい乗った紙を振るうとき、強力な磁石を1ヶ所に置くか、その磁石と、少し離れた場所にもう一つ磁石を置くか)」


 ……砂鉄は二か所に分散される。ラビスシティーとこの迷宮の間に魔物が新たに生み出されるようになるってことか。

 いや、そうじゃない。3ヶ所になれば、その三点を結ぶ三角形の中に魔物が生まれるだろうし、さらに複数の迷宮があれば、魔物が生まれる場所はもっと増える。

 ……あれ? でも普通に魔物って世界中にいるよな?

 ここに来るまでも狼の魔物に会ったし、コースフィールドにはサンライオンや翼竜がいた。


「(もしかして、既にこことラビスシティー以外にも迷宮は存在するのか?)」

「(人が手を出せない海の底、誰にも見つからない谷の奥底や秘境にも迷宮は存在するの。そういう迷宮は潰さないといけない。人間のためにも、私達のためにも)」


 確かに、瘴気が分散されたら瘴気を集め、配下の魔物を生み出し、迷宮を食べる魔王にとっては困る。

 そして、迷宮以外の場所に魔物が生まれることは人にとっても困ることになる。


 双方にとって、ここの迷宮の存在は害悪だということか。

 だとしたら、ますますベリアルがいた理由も俺達と同じ可能性が高いな。


「来るぞ、魔物が――ん?」


 魔物が逃げていく?

 木々が道を開ける。

 どういうことだ?


 罠……いや、それでも進むしかない。


「クリス、ついてきているか?」

「……はい」


 クリスが間をおいて小さく返事する。

 クリスのやつ、さっきのことまだ怒ってるのか。


「一気にカリーヌを――」

「カリーヌをどうするの?」

「カリーヌを探すんだよ……ってカリーヌ!?」


 気付けば、木々の隙間からカリーヌが出てきた。

 頭の上に、カリーヌを探しにいったスライム達が3匹乗っているし、10匹以上、彼女の後ろからついてきていた。


「どこ行ってたんだよ、心配したんだぞ!」


 俺はそういいカリーヌを抱き寄せた。

 とにかく無事でいてくれてよかった。


 カリーヌの身体はぷにぷにしていて、強く抱きしめたら割れてしまいそうな錯覚になる。

 でも、それでも抱きしめた。


「ごめんね、コーマお兄ちゃん。あのね、コーマお兄ちゃんに助けてほしい人がいるの。木の牢の中にいるんだけどね」

「助けてほしい人? もしかして、調査団の人がいたんですか!?」


 クリスが訊ねた。

 そうか、カリーヌが見つけたのか。

 まぁ、カリーヌも無事見つかったし、優先順位的に、調査団を魔王より上に置いてもいいかな。

 ついでに、調査団と一緒にクリスも帰ってもらい、魔王討伐は俺とルシルの二人で行くか。

 

「調査団? ううん、違うよ」


 カリーヌが首を振って言った。


「魔王だって言ってたよ。木の魔王だって」

「え? 魔王?」


 俺が訊ねると、


「魔王っ!?」


 クリスが異常に反応を示した。

 ……あぁ、クリスは迷宮に魔王がいるなんて知らないもんな。


「そうか、カリーヌは魔王に会ったのか」

「うん、怖いって。助けてって。頼まれたから、カリーヌは会いに行ったの」

「……そうか」


 完全なウソ……というわけじゃないよな。

 俺は魔王と呼ばれる存在は、ベリアルとマユ、そして俺自身の三人しか知らない。

 少なくともマユは世間一般がいうところの魔王というイメージからは大きくかけ離れた存在だ。いわゆる善の存在。

 魔王かもしれないと思う人物も一人いるが、あいつも魔王のイメージとはだいぶ違う。

 ならば、本当に怖いと思っていて、カリーヌに助けを求めている可能性もある。いや、その方が高い。


「調査団の人間はその魔王に捕らわれている可能性が高いな」


 俺はクリスに聞こえるように言う。


「そうですね、魔王を退治して皆を救出しましょう」

「いや、その前に調査団の人の救出が先だろ。まずは話し合って居場所を聞くのが先だろ」

「……そ、そうですね。魔王を倒すのはそれからです」


 な……なんだ?


「クリスお姉ちゃん、あの子悪い子じゃないよ?」

「何を言っているんですか、カリーヌちゃん。魔王は退治しないといけません。お父さんが言っていました」


 クリスはカリーヌを窘めるように言う。


「お父さんは勇者でした。私はお父さんの意志を継いで、勇者として魔王を退治しないといけません。人々を助けないといけません。例え自分の身を犠牲にしてでも」

「そうか……」


 俺はクリスの肩を叩き、優しく微笑みかけた。


「お前はもう帰れ。足手まといだ」

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