エピローグ & はじまりの話4
~前回のあらすじ~
クルトの大事なものが盗まれた。
「……よし、できた。見てみろ、このスライムを!」
水がたっぷり入ったスライムをルシルに見せる。
だが、ルシルの反応はあまり芳しくない。
「何、そのスライム」
「バルブスライムだ! 水を溜め込む性質を持っていてバルブを捻ると水が出てくる」
「……へぇ……」
「それと、スライムで大発見があったんだ」
俺は二匹のアイアンスライムをルシルに見せた。
最初は気付かなかった。
だが、二匹を比べてみると、全然違うことに気付く。
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アイアンスライム【魔法生物】 レア:★★★
鉄の身体を持つスライム。高い防御力を持つ。
錆びやすいので海水が大の苦手。
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アイアンスライム【魔法生物】 レア:★★★
鉄製スライム。磁石にくっつきます。
よく速そうだね、と言われるけど、とても遅い
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どちらもアイアンスライムなんだが、説明文が微妙に異なる。
ちなみに、錆びやすいスライムが鉄を使ったスライム。錆びについて書いていないのが高純度鉄を使ったスライム。
高純度鉄を使った合金は錆びにくくなるという性質がある。その結果が鑑定結果にも出てきたんだ。
ただし、アイテム図鑑には一種類しか登録されない。
「つまり、同じアイテムクリエイトでも素材を変えたら鑑定結果が変わる」
当たり前のことなのだが、アイテムクリエイトに頼りすぎてついつい見落としていた。
これは大発見だ。
「……ってルシル、何か機嫌悪いか?」
「ねぇ、コーマ……知ってる? そのバルブスライムで、スライム合計200匹になったのよ。まだ作るの?」
「……ダメか?」
「いいんだけどね。知ってる? スライムを放ってる39階層だけど瘴気が拡大したの。他にも何ヶ所かから瘴気が涌き出たわ」
瘴気とは、魔物が湧きでる場所のことだ。瘴気から生まれた魔物は、無条件に魔王である俺の配下になる。
これはいい話じゃないか。
「本当に良い話よね。全ての場所からスライム系統の魔物ばかり出てきてなかったら」
うっ、もしかして、スライム迷宮になっちまった?
「カリーヌは兄弟が増えて楽しいよ」
俺の横でカリーヌが笑う。
カリーヌはうれしいだろうが、ルシルとしては面白くないだろうな。
ルシルの理想の迷宮は少なくともスライム迷宮じゃないはずだし。
「……仕方ない、今度はゴーレムでも作るか。実はだな、前にアイアンゴーレムを倒したときに、ゴーレムの核ってのがあってだな」
「……まぁ、それでもいいんだけどね。そろそろ迷宮を解放しない?」
「迷宮の解放?」
「そうよ。ミノタウロスや私の召喚した魔物、スライム、マユの配下、ゴブリン。一応数だけは揃ってるし、解放していいと思うのよ」
「……まぁ、空き巣相手にも効果はあったし、本格的に迷宮を開業するか。そのためのアイテムも作らないとな」
今はまだ、宝箱などが瘴気から生まれない。
マユが言うには、魔物が数十種類出てきたら、アイテムが自動的に迷宮の中に生まれることがあるそうだが、そこまではいっていない。
ならば、やっぱり俺がアイテムを置かないとな。
とりあえず、11階層には普通にポーションとかにして、15階層くらいに鉄製の武器や防具、30階層でプラチナ系の装備を置く感じにしようと思ってる。
あと、トラップも置かないと。
ルシルに強制転移トラップは作ってもらう予定だが、それを回避されたら困る。
少なくとも、50階層以降には誰にも入ってほしくない。
「よし、来週に迷宮を解放するために頑張るか」
「カリーヌも頑張るよ!」
うん、カリーヌはいい子だからお留守番しててね。
でも、迷宮開放となれば、これからコメットちゃんやタラにも働いてもらわないといけないな。
(……わかってるのか俺?)
俺は自分に問いかける。
(迷宮を解放するってことは、下手しなくても迷宮に入ってきた勇者やその従者達を殺すことになるんだぞ)
俺が直接手を下すことはなくても、俺が配下に命じて人を殺させる。
そんなこと、俺にできるのだろうか?
スーやシー、そしてクリスが迷宮に入ってきたとき、俺はどうするんだ?
その答えは……たぶんすぐそこまで来ている。
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Episode05 に続く。
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……目を覚ますと、俺は倒れていた。
大きな力が俺を飲み込み、そして……シフィルと戦い、俺に氷の破片が降り注いた。
そして、シフィルは……どうなった?
起き上がると、横には巨大な穴があった。
底には……この惨状の原因となった金色の杯と、瓦礫がいくつか残っている。
でも、さっきの城の瓦礫が、これで全てとは思えない。
おそらく、シフィルの力によって氷となって砕けたのだろう。
ここは洞窟の中のようだが、天井や地面が輝いているので暗闇というわけではない。そんな場所で泣き声が耳に届いた。
その声はすぐ近くから聞こえていた。
「シフィル……様?」
俺は立ち上がり、その声をした方向を見た。
そこにいたのは……日本でみた、ルシルと名乗った少女。
シフィルの分身と言っていた少女だった。
少女は涙を流しながら俺に振り返り、
「……コーマ……ごめんなさい」
謝った。涙を流し、本当に申し訳なさそうに謝る。
「……え? 謝るのは俺のほうですよね? シフィル様の制止も聞かずに……その、魔王城が壊れたのも、シフィル様がそのような姿になったのも」
「うん、コーマの力を封じるために魔王城は壊れたし、コーマの力を今も封じているためにほとんどの力を使ってるからこんな姿になっちゃってるけど」
シフィルは本当に辛そうに、
「コーマを日本に戻してあげられなくなったの」
「……え?」
「今の私には力がほとんどないの。だから、転移はこの迷宮の中で使える程度だし、他の魔法も初級魔法程度しか使えない」
「……あの、シフィル様、もしかして、俺のために泣いてたんですか?」
「あたりまえでしょ! もう故郷に戻れないのよ!」
「いや、それは辛いですけど、でも、なんでシフィル様が泣くんですか?」
「だって、コーマは私の初めての部下なのよ! 部下との約束を守れないなんて最悪じゃない!」
……あぁ……そうか。
シフィル、めっちゃいい奴なんだな。
無理やり俺を連れてきたので、最初は嫌な気分だったが、でも、俺のために涙を流してくれている。
「……あの、シフィル様。俺――」
「コーマ、三回まわってわん」
「え?」
急に何を言い出したんだ?
「うん、コーマ、もう私に敬語を使う必要はないわよ。コーマとの主従契約は切れてるから」
「なんで急に?」
「さっき、コーマの力を私が封じてるって言ってるでしょ? でも、正確にはコーマの中のお父様の力のほうが私よりも強いのよ。だから、主従関係が逆転して主従契約が無効化したの。強制命令権はないけど、コーマのほうが主人だと判断されたみたい。というより、コーマの力はもう魔王と一緒なの」
吸血鬼が眷属に噛まれたら主従関係が入れ替わるようなものなのだろう。
「……だから、コーマはもう自由に――」
俺は思わずシフィルを後ろから抱きしめていた。
「俺が72財宝を全部集める。72財宝を集めたら、強大な力が手に入るんだろ? なら、俺が全部シフィル様のために集める」
「……お父様の残したアイテムはもうないのよ? 魔王城と一緒になくなったから」
「でも、俺が集める。約束だ。コレクターの意地で集めてやる。俺は、シフィル様の部下じゃないというのなら、パートナーとして、シフィル様の力を取り戻す」
「……コーマ……バカでしょ……」
「バカだ」
「人間と敵対することになるのよ」
「魔王だからな」
「……ずいぶん優しい魔王様ね……ねぇ、二つだけお願いしていいかな」
シフィルは俺の手をどけ、
「まずは、私のことはルシルって呼んでほしいの。お父様や親しい人はみんなそう呼んでたから。あと、対等なパートナーだから今みたいに敬語はいらない」
「わかった」
「それともう一つ。絶対に……絶対に死なないでね」
シフィルは……いや、ルシルはそう言って、涙を流して俺に抱き着いた。
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はじまりの話5 に続く
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