サンドウィッチの甘みを探せ
~前回のあらすじ~
コーリーちゃん大勝利
暫くして、冒険者ギルド員が到着して、のびた男を見てどうしたものかと話していた。
当然、俺達にも事情聴取が来るのかと思ったら、そこはクリスの勇者特権。
「ご協力感謝します!」
といって、のびた男を連れ、あと被害者の女性達にも事情を聞くからと一緒に冒険者ギルドへと向かった。
被害者の女性達は、俺に一度「ありがとうございました」と礼を言って去っていく。
そして、残された俺だが、クリスが俺のことをじっと見つめていた。
完全に怪しまれてる。俺がコーマであること以前に、もしかしたら人間ではないと疑われているんじゃないだろうか?
ただ、力の神薬を飲み続けて力が普通の人よりちょっと高いだけなのに。
ちなみに、力の神薬は40本、反応の神薬は15本飲んでいる。あぁ、もうこの世界にきて55日か、とか思ってしまう。
おかげで力は通常の45倍。90キロの男も2キロ程度の重さに感じる程度にはなっていた。
……さすがにちょっとやりすぎたか。
でも、俺は今は女。女だ。
ここは最大限女力を使ってごまかしてやる。
「……あの、クリスティーナ様、私の顔に何か付いているでしょうか?」
「いえ、コーリーちゃん、ものすごい力持ちなんですね……」
「……うっ、そうですよね。力の強い女の子って変ですよね……」
「そ、そんなことないですよ! 私だってあのくらいやろうと思えば、うん、たぶんできますから」
「ありがとうございます。クリスティーナ様は優しいんですね」
よし、これでクリスはもう俺の怪力に対して突っ込めなくなった。
次は話題を変えよう。
「ところで、クリスティーナ様、お昼ご飯、どうしましょう?」
「あぁ……並びなおすにはちょっと時間がかかりそうですね」
パスタ屋の行列はさっきよりも長い列になっている。
並びなおしたら一時間待ちは覚悟しないといけない。
「なら、寮に行きましょうよ。私がおいしい麺料理を作りますから」
「いいんですか?」
「はい。感想が欲しい料理があるんですよ。さっき助けてくださったお礼もしたいですし」
「では、お言葉に甘えますね」
こうして、二人で寮に向かった。
昼の少し前から、一時間半ほど、寮の一階はレストランとして一般開放されている。
といっても、用意した昼食は朝にアイテムバッグの中に入れて保存しているため、厨房で誰かが何かを作ることはない。
アイテムバッグの中では時間が止まっているから、いつでもあつあつの料理を出すことができる。
ちなみに、ここでのアイテムバッグは大皿料理でも取り出せるように、少し大きめに作って、盗まれないように据え置き型にしている。
今日のレストラン当番はシュシュのようで、彼女が注文を受けて料理を運び、会計までこなしていた。
食器などはセルフ式のため、客が食器返却口に食器を置いているが、中には食器を運ばない客もいて、それを運ぶのもシュシュさんの役目だ。
レストランのためだけに人を雇ったほうがいいのでは?
「シュシュさん、厨房お借りしていいですか?」
「いいよぉ。何か作るの?」
「はい。あ、クリスティーナ様、座って待っていてください。ちょっと材料持ってきますから」
俺は倉庫に戻り、アイテムバッグを取って厨房へと戻る。
一応、アイテムバッグはクリスに見られないようにしないとな。
そして、厨房に移動した俺は、そこから素材を取り出す。
俺はアイテムマスターを名乗っている。そして、そのアイテムの中には素材が含まれる。
数多くのスパイスを含め、醤油などの調味料、小麦粉等。
これらを使い、俺は時々日本の料理を再現する。
最近凝っているのは、この料理だ。
アイテムバッグから巨大な鍋に入ったスープを取り出し、魔力コンロで沸かし、横でも鍋でお湯を沸かす。
そして、特製のザルの中にこれまた特製のちぢれ麺を入れる。
茹でている間に、堪り醤油とスープを入れ、そこに湯きりしたちぢれ麺を入れる。
さらに、ゆで卵、メンマ、チャーシュー、刻み葱を入れた。
完成:自己流特性醤油ラーメン!
味はだいぶ日本の味を意識した。ちなみに、ラーメンという料理は、
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汁そば【料理】 レア:★★
熱々の特性のスープの中に麺を入れた料理。
寒い日に食べるとおいしいけど、鼻水が出る。
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という説明になった。スープパスタと言われないだけマシだ。
「お待たせしました、クリスティーナ様。コーリー特性汁そばです!」
「変わった料理ですね……うぅん、いい香り」
「でしょ? あ、お箸とフォークありますけど、どっちを使います?」
「お箸……あぁ、コーマさんが時々使ってるものですね。あれは使いにくいので、フォークを借りてもいいですか?」
「はい。あとスプーンも入れておきますね」
といって、俺はレンゲをラーメンに添えた。
そして、クリスは俺が見守る中、ラーメンをフォークに絡めて一口。
無言で咀嚼した後、レンゲでスープを掬って一口。
そして――
「はぁぁぁぁ」
幸せそうな顔で息を漏らした。
「おいしいです、こんなおいしい料理食べたことないです。コーリーちゃんはきっといいお嫁さんになれますね」
「じゃあ、クリスティーナ様が貰ってくれますか?」
「いいですね、じゃあ私がお婿さんですね」
そんな冗談を言って笑っていると、生唾を飲む声が聞こえてきた。
気が付くと、俺達の周りに人の壁ができあがっていた。
「おい、嬢ちゃん! そのしるそばだっけか? 俺達も頼めるか?」
「僕もさっきご飯食べたばかりだけど、それなら食べられそうだ」
「くうっ、腹いっぱいなのにどうしても食いてぇ! 小サイズで作ってくれ」
一気に20人前の注文が入った。
どうしたものかとシュシュに助けを求めたら、シュシュは笑顔で「お客様がお待ちですよ」と言った。
はは……昼ごはんはお預けか。
結局50人前を作り終えたところで、スープがなくなり完売。
客の要望により、レシピを紹介することにしたのだが。
麺やスープは可能だが、問題は醤油だった。とりあえず、醤油の作り方を記した紙を何人かに配ったが、ラーメンが元で醤油工房ができあがるとか、ネタすぎるだろ。
麹の問題があるのでは? と思ったが、醤油がレシピで作れるということは、麹や醤油もこの世界のどこかにはあるんだろうな。
となれば、本格ラーメン屋が開業するのも時間の問題ではないだろうか?
それにしても、結局お昼ご飯、食べれなかったな。お腹空いた。
「コーリーちゃん、お疲れ様でした。これ、食べてください」
「……サンドウィッチですか?」
ロールパンにハムとサラダが挟まっている、ロールサンドだ。
「はい、コーリーちゃんが頑張ってる間に作ってたんですよ。気付きませんでした?」
「クリスティーナ様って、料理作れたんですね、知りませんでした」
「そりゃ、作れますよ。私だって女の子なんですから。といっても、いつもはコーマさんが作ったり、この寮で誰かが作ってくれるのを食べているので、久しぶりに作ったんですけどね」
作った……ね。
パンはもともとこの寮に置いてあったものだから、パンの間にレタスと卵焼きを挟んだだけな気がするけど。
「ではいただきます」
俺は一口。うん、味が薄い。卵に塩も胡椒も入れていないな、これ。でも、ルシルの料理を食べさせられた経験を持つ俺から言わせたら、
「おいしいですよ、ありがとうございます、クリスティーナ様」
笑顔でこのくらいのお世辞を言えるくらいにはおいしい。
「よかったです」
「でも、私が作ったほうがおいしいですから、やっぱりお嫁さん役は私ですね。挙式はいつにしましょう?」
「さっきの冗談じゃなかったんですか!?」
「そんな……本気で告白して、受け入れてくれたと思って喜んだのに……うぅ、この悲しみを背負って生きていけません。もう死ぬしか……」
「あぁ、コーリーちゃん、待ってください! 死なないで」
「じゃあ、結婚してくれます?」
「えっと……その……ええと、わかりま――」
「クリスティーナ様、そんなことで結婚のOKを出したら、将来たちの悪い結婚詐欺師に騙されますよ」
「あ、コーリーちゃん、騙したんですね!」
「普通は騙されませんよ」
俺は笑いながら、味の薄いサンドウィッチを食べた。
パンの中のほのかな甘みを探り出しながら、楽しい時間を過ごした。
クリスは用事があるからと出て行ったので、俺も店に戻った。
~明日、コーマはこんなスライムを作ることになります~
スライムの核×魚の鱗
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スライムフィッシュ【魔法生物】 レア:★★★
水の中でも活動できるようになったスライム。
魚と名乗っているが、どう見てもクラゲ。
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ルシル「いきなり普通のスライムを作ったわね」
コーマ「ほら、ブラックバスが湖にいるってわかったから、どのくらいの数がいるのか調査しようと思ってさ。あとで湖に放流してくるよ」
翌日。俺が湖で見たものは、ボロボロになったスライムフィッシュだった。かろうじて生きてはいるようだが。
とりあえず、スライムフィッシュを連れて魔王城に戻った。
コーマ「一体、何があったんだ?」
マユ『ええと……そう、そうなんですか』
コーマ「なんて言ってるんだ?」
マユ『ブラックバスの稚魚に襲われたそうです』
コーマ「…………うん、外来指定種確定だな」
マユ『淡水魚でよかったです……』
海水魚なら、マユの部下も襲われるところだっただろう。
ブラックバス、恐ろしい子。




