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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode04 短編増殖

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タロットカードの正しくない販売方法

~前回のあらすじ~

コーマが女になっちゃった。

 目の前にいたのは、まさに黒髪の美少女だった。

 真っ白ではない、程よく焼けた健康的な肌。バスケットボールを片手で掴むのが難しそうな小さな手。

 わずかに膨らみのある……メイベル以上、コメットちゃん未満の胸。

 身長も少し縮んだだろうか?


 ここは、とりあえず、お約束。


「大事なものがやっぱりない!」

「もう、コーマ様、自分の身体とはいえいきなりどこ触ってるんですか!」

「いや、お約束お約束。へぇ、俺って女の子ならこんな風になってたんだ」


 うん、タラ程ではないけれど、本当に生まれてくる性別を間違えたのではないだろうか?

 こんな可愛い子、日本だと放っておかれないだろうな。

 姿鏡を見ながら、一通りポーズを取ったあと、


「よし、じゃあメイベル、元に戻るから薬を――え?」


 横を見ると、メイベルが笑顔で立っていた。

 その手には従業員用のドレスと女性用下着がある。


「あの……メイベルさん、それは?」

「コーマ様、いい機会ですから、今日一日、ここで働いてみましょう」

「え?」

「いい機会ですから」

「いや、ちょ……本気で言ってるのか?」

「はい。あと、女の子なんですから、もっと可愛らしい言葉でお願いします」

「……いやいや、ちょっと待て。メイベル、なんか目が据わってるぞ」


 荒い息を立てながらにじり寄るメイベル。え? もしかして……あの……


「いいじゃないですか。幸い、今日の空き巣はすでにレメリカさんが連れて行って二人きりなんですし……ふふふ」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 我ながらなんとも女らしい悲鳴を出してしまい、気が付けば、下着まで女物に変わっていた。

 メイベルの迫力に逆らうことができなかった。


「俺、一応ここの元オーナーなのに」

「まぁ、何事も経験ですよ、コーマ様……あ、でも名前は変えたほうがいいですよね。じゃあ、コーリーちゃんで」

「コーリーって……あの、本当に男に戻してくれないか?」

「コーリーちゃん、口調口調。女らしく」

「あの、男の子に戻りたいんですけど」


 俺が言うと、メイベルは笑顔で、


「今日一日頑張ってくれたら薬を返しますよ、コーリーちゃん」


 そう言うメイベル。あぁ、薬の材料、もうないんだよな。

 もともと、スー達と一緒に旅をしたときに採取した草が原料だから、このあたりでは採取できない。


「……メイベル、嬉しそうだね」

「はい♪」


 はぁ……でも、まぁ、元とはいえオーナーだしな。従業員がどんな仕事をしているのか、見るのもありか。

 幸いというか不幸というか、この薬には制限時間はないから、急に男に戻ってバレる心配はない。


 ということで、俺の一日女生活は始まった。


「皆さん、今日一日だけこの店で働くことになりました、コーリーちゃんです。私以上の鑑定スキルを持っていますので、わからないアイテムがあったら彼女に聞いてくださいね」

「「「はーい」」」

「じゃあ、コーリーちゃん、一言お願いします」


 メイベルに言われ、俺は一歩前に出た。


「コーリーです。今日一日だけですが、皆さんの足を引っ張らないように精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」


 従業員の皆に拍手で迎えられたわけだが。

 正直不安だよな。

 女性だけの職場って、男からしたら、見てはいけないものを見るんじゃないだろうか?

 理想と現実でいえば、現実を見てしまう。

 例えば、オーナー……今では元オーナーの陰口とか。


 開店1時間前で、店の準備をしていた。

 え……エラ呼吸ポーション銀貨10枚もするの? あんなに不味いのに。

 あ、でも、これ、俺が作った薬じゃない。たぶん、クルトが作ったものだ。

 へぇ、あいつ、こんなのまで作れるようになってたのか。

 商品の整理をしながら、弟子の成長を喜んでいると、


「ねぇ、コーリーちゃん。ちょっといいかしら?」

「あ、はい。ファンシーさん……でしたよね」

「あら? 知っていてくれたの?」

「はい、メイベル店長から教わりました」


 本当は隣の寮の一階でクリスと食事をしている時に何度か挨拶して知っていたんだけど。


「ねぇ、コーリーちゃんって、元Dだったりするの?」

「元D? なんですか、それ?」


 元ヤンとかそういうのかな。


「元奴隷ってこと。私達、つい最近まで全員奴隷だったんだけど、メイベルが店長兼オーナーになって私達、奴隷から解放されたの」

「へぇ、そうだったんですか。知りませんでした」


 すみません、本当はメイベルから全部聞いてました。

 全員信用できる従業員だからと。


「そうなの……じゃあ、あっちも知らないか」

「あっち?」

「この店の元オーナーよ」


 俺の事か。結局、最後までメイベルとコメットちゃん以外には俺がオーナーだってことを話さなかったからなぁ。

 でも、いきなり元オーナーのことを語るということは、いつも陰口を叩かれてるのかな。

 やれ給料が安いとか、やれ店が狭いとか。

 寮? 寮は俺が考えうるかぎり最高の設備にしたから文句を言われる心配はない。


「この店の元オーナーのこと、いつもみんなで話しているんだけどね」

「いつもですか?」

「そう。誰だかわからないんだけど、きっとどこかの王族じゃないかって噂してるのよ」


 はい、王族です。魔王だけど。

 って、おい、そんなわけないじゃないか。


「あの、流石にそれは話が飛躍しすぎでは?」

「だって、店の権利を丸ごとメイベルに渡しちゃう人なのよ。どこかのお金持ちじゃないと不可能よ」

「それはそうですけど……」


 確かに、メイベルの話だと一千億円くらいの資金があるって言ってたな。

 むしろ、普通の金持ちでも無理じゃないだろうか?


「知らないのなら別にいいのよ。ごめんなさい」

「いえ、お役に立てなくてすみません」

「……いつか会って、きっちりお礼を言いたいな」


 少し寂しそうにファンシーは呟いた。

 ……あぁ、陰口は陰口でも、こんな陰口なら……恥ずかしすぎるな。


 その後、店は開店時間を迎えることになったのだが。

 その時間はまさに戦場だった。


「ポーション3つ!」

「こっちは4つだ! 早くしてくれ!」

「解毒ポーションはもうないのかっ!」

「銅の剣だ! 早くしてくれ!」

「銅貨がないんだ、まけてくれ!」


 ただでさえ忙しいのに、値引き交渉とかやめてくれ!

 そして、あっという間に開店30分の悪夢が過ぎていき、


「つ……疲れました」

「お疲れ。はじめてにしてはようやったわ」


 リーが俺の肩を叩いて労いの言葉をかけた。


「商品を一つも間違わずに販売できるんやから。さっきの客、銅の剣と偽って銅の剣改を買おうとしてたけど、それもきっちり見破ってたし」

「いえ、鑑定スキルのおかげですよ。それより、毎朝こんなに忙しいんですか?」

「まぁ、今日はいつもより客が多かったかな。ていうか、野次馬が多かったわ……気付いてないん?」

「何をですか?」


 俺が訊ねると――


「それは、もちろん、君が可愛いからだよ」


 入ってきた男がそう囁きかけてきた。

 えっと、誰だっけ? どこかで会った気がするんだけど。

 この世界に来て、初めて会った人間のはずなんだけど。


「あ……思い出した、ジョークさん」

「ジョーカーだよ!」


 ジョーク……もといジョーカーはまるで自分の役目だと言わんばかりにツッコミを入れたあと、


「でも、君みたいな可愛い女の子に知っていてくれてうれしいな。なんて名前なの?」


 と笑いかけてくれた。あれ? もしかして、俺、ナンパされてる?


「コーリーと申します。何かお探しの品がありますでしょうか?」

「ん? あぁ、えっと……何かお買い得な品ってある? あんまり金ないんだよね」


 うん、こいつはナンパには向いていないタイプの人間だ。


「この店の商品は全てお買い得な値段設定にしていますが、そうですねぇ。タロットカードなどはいかがでしょう?」

「タロットカード? 占いで使う?」

「はい。女の子はみんな占いとか好きですから、酒場での話のネタに困ることがありません。銅貨10枚です」

「へぇ、でも、俺、タロットとか詳しくないからなぁ」


 あまりジョーカーは乗り気じゃないようだ。だが、ここからが俺の営業トークの見せ所。

 女であり男である俺にかかれば、この商品を見事に売ってみせる。


「そんなあなたにお勧めなのは、こちらのタロット入門本と、手品の本です」

「え? タロット入門本はわかるけど、なんで手品の本?」

「手品の本を使えば、タロットカードの占い結果を自由に操作できます。だって、いきなり女の子に正位置の死神のカードなんて付きつけたくないでしょ? それに、上手く使えば、『運命の相手は目の前にいる』とか言って女性を口説くことができますよ」

「なるほど……で、いくら?」

「タロット入門本は銅貨20枚、手品の本は銅貨25枚ですが、ジョーカーさんなら三点全部合わせて銅貨50枚ちょうどでいいですよ」


 メイベルからは、1割引きまでなら従業員の裁量に任せると言われているので、銅貨5枚割引のお得感を出す。


「よし、買った!」

「はい、ありがとうございます」


 銅貨の山を受け取ると、銅貨を数えるための容器にいれて銅貨を数え、余分な銅貨を彼に返した。


 商品を包むと、ジョーク……あれ? ジョークであってたっけ? とりあえず、彼はほくほく顔で三点お買い上げして帰って行った。

 あ、早速使うつもりだ。御武運を祈る。


「凄いですね、コーリーさん。ジョーカーさんに物を売るなんて」

「ありがとうございます、レモネさん。でも、店に来てるんですから、商品が売れるのはあたりまえでは?」

「……ジョーカーさんはいつも、その、私達と話すのを目的できていますから、商品とかあまり買わないんです。買ってもポーション1個とかで」

「……そうなんだ」


 今度レメリカさんに言いつけてやろうか。

 開店30分後は落ち着いたもので、時折やってくる客に武器や防具の案内をしていた。

 中には、「え? どこのお嬢様?」というような貴婦人も訪れ、メイベルが対応していた。

 なんでも、「化粧水」についての話だとか。あぁ、メイベルに言われて、数量限定で卸している商品か。

 もともと売りに出す予定はなかったんだが、客の要望にメイベルでさえ耐え切れなくなったという。

 アルティメットポーションを材料に使っているため、ニキビ、シミ、肌荒れなどを完全に消すことのできる化粧水だ。

 もちろん、保湿力も完璧。


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


 メイベルはそう言うと、貨幣の入った小さな袋を俺に渡した。


「これ、化粧水一本分の売り上げです」

「へぇ、この量だと銀貨10枚くらいか?」


 二人きりのため、男言葉に戻ってそう尋ねる。

 メイベルは苦笑し、


「いえ、金貨10枚です」

「なっ……まじか」


 さっきジョーカーが買った商品3点が2000セット買える金額だ。

 化粧水一本でそんなに金を出すって、女になっても女心はよくわからない。


「コーマ様が卸してくださる化粧水は月に5本ですが、完全予約制になっていて、20年先まで予約が埋まっています」

「20年……そりゃ恐ろしいな」

「本当に恐ろしいのは、その化粧水を、寮で私達が自由に使えることなんですけどね」

「……はは、確かに」


 少し、自分で自分のしていることが恐ろしくなってきた。

 もしかして、メイベルが俺をここで働かせるのは、こういう現実を俺に見せるためだったのだろうか?


 などと思いながら、商品を整理していると、お客さんが一人入ってきた。

 あ、完全に酔っぱらっている50歳くらいのおっさんだ。昼間からいい身分だな。

 まぁ、夜に働いている人かもしれないけど。


「いらっしゃいませ、何かお探しでしょうか?」

「いんや、見てるだけだ。見てちゃ悪いか?」


 うえ、酒臭ぇ。


「いえ、何か用がございましたら、なんなりとお申し付けください」

「おう、任せておけ」


 何を任せろというんだよ。

 と思いながら、商品整理を再開すると、お尻のあたりがぞくっとなった。

 え? ……酒臭……もしかして、俺、今、酔っ払いのおっさんに尻を触られているのか?

 男の尻なんて触って何が楽しい……って今は女か。

 それより……なんだ、これ、声を出して助けを呼ぶべきなのか、それとも振り返って平手打ちでもするべきなのか?

 って、おい、やめろ、スカートの中に手を――


「何してるんですか?」


 怒気の篭った、それでいて聞き慣れた声とともに、お尻の嫌な感触がなくなった。

 振り返ると、そこには、酔っ払いのおっさんの手を掴んでいるクリスがいた。 

~昨日、コーマはこんなスライムを作っていました~


ロボスライムα×ロボスライムβ×ロボスライムγ

(アイテムクリエイトを使わない自動合体)

……………………………………………………

超絶ロボスライム【機械生命】 レア:★×5


ロボスライムの合体形態。悪のロボと戦うために作られた。

ロボの素を食べるとドッキリビックリロボを口から出す。

……………………………………………………


コーマ「超絶ロボスライム、ロボの素だ……って、ロボの素ってなんだ?」

ルシル「さぁ?」

コーマ「悪のロボってなんだ?」

コメット「すみません、わかりません」


   ※※※

今回は少し長めでした。


ブクマ、評価、レビュー、非常に励みになっています。ありがとうございます。

ちなみに、最近だとルシルの殺人料理大会の時に評価のノビが強かったです。

ルシルは喜んでいいのか悪いのかわからないようなので、ルシルに代わってお礼申し上げます。


コーマ「いや、礼を言うのは本来作者(あんた)の役目だろ」

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