勇者と魔王の戦いはヒノキノボウで
~前回のあらすじ~
魔法使いゼウラの犠牲により最後の四天王、ゴーズ・ガジダバを追い詰めた僕。
だが、ゴーズの自爆技「ナイチンゲール」の爆炎が僕に迫りくる。
死を覚悟したその時、コフィーから貰った若草のペンダントが光り、僕を風のバリアが覆って助かった。
コフィーもきっとあの世で僕を応援してくれている。
そう思うとさっきまでの力が一気に蘇ってきた。
覚悟しろ、暗黒皇帝ギルフォーン!
お前を倒し、僕が真の平和を掴みとる!
薄暗い宮殿の中。
多くの魔物の群れ、そして四天王を名乗る強敵を前に、僕の仲間は一人、また一人と倒れていった。
残ったのは僕一人。
それでも、僕は歩みを止めることはできなかった。
彼らのためにも、僕は世界を平和に導かないといけない。
「…………コフィー……君から貰った若草のペンダントのおかげで僕はこうして生きていられる」
かつて村のために己を犠牲にしたうら若きエルフの姿を思い出した。
彼女も雲の上から見ているだろう。真の平和が訪れる瞬間を。
だから、僕は走り出した。
そして、とうとう宮殿の玉座の間に到達した。
そんな僕を出迎えたのは、禍々しいオーラを放つ長身の男。
暗黒皇帝ギルフォーン。
全ての禍の元凶。
もともと勇者だったが、闇に堕ちたと男。
「よくぞ来たな、勇者コーラ・マグナム!」
僕の名を呼んだギルフォーンは口元を緩め、
「いや、我が息子よ」
「うるさい、お前のことを親父だなんて思ったことはない! 覚悟しろ、ギルフォーン」
僕は手を背にまわし、背負っていた鞘から聖なる弓矢「ヒノキノボウ」を取り出す。
魔王が覆っている闇のカーテンを打ち砕くのは、この聖なる弓矢「ヒノキノボウ」の力がなくてはいけない。
「覚悟するのは貴様のほうだ!」
そういって、ギルフォーンもまた、己を闇に染めた呪いの剣「ゼンマゼドリンクバー」を取り出した。
相手も本気だ。
でも、ここで負けるわけにはいかない!
死んだ仲間のために! コフィーのために! そして、この世界に住む全ての人のために!
勝負だ! ギルフォーン!
※※※
「ふははは、やるな、コーラよ!」
「お前もなギルフォーン! 次は聖剣サンゼンエンポッキリガールズバーの威力、とくと受けてみろ!」
ゴボウで斬り合いを繰り広げる二人を、私は見てました。
斬り合いといっても、とてもゆっくりしたもので迫力はない。
それでも凄いと思う。毒が回って本来なら歩くことさえできないはずなのに。
ちなみに、二人の周りには多くの人がぴくぴくして動かないでいます。毒が全身に回ったのでしょう。
「あ、メイベルお姉ちゃん、おはようなの」
「おはよう、アンちゃん」
アンちゃんは眠そうな目をこすりながらも、それでもこの演劇を見ていたいようだ。
私に気付いて挨拶をしてくれたが、すぐに視線を二人の役者(?)に戻す。
「凄かったですよ。もう二時間くらい続いていて、いよいよクライマックスという感じです」
クルト君が言う。どうやら、朝の六時から、この茶番は繰り広げられていたらしい。
「特によかったのがコフィーさんが村を襲ってくる魔物の前に出て、己の身を犠牲にして光の柱……あ、ここは言葉でのみの演出なんですけどね」
「かわいそうだったの」
ちなみに、コフィー役を演じていたのは、部屋の隅で泡を吹いて倒れている小太りの男らしい。
「でも、レメリカさんが来たら終わりよ。あと、クルトくん、ちゃんと全員、縄で縛って解毒ポーションは飲ませてね」
私は苦笑して言った。
「全員、空き巣犯人なんだから」
空き巣犯人は、どういうわけか朝方に急に現れ、幻覚でも見ているかのようにおかしな行動をする。そして、一定の時間が経過すると、何故か料理の名前を呼んで苦しみだしてしまう。そうなったら、解毒ポーションを飲ませて治療するしかない。
彼らは本当に自分が勇者や暗黒皇帝だという混乱状態にあり、演劇をしている。
私が部屋を出ると、ギルフォーンの悲鳴が聞こえてきた。
どうやら、世界は平和になったようです。
ラビスシティーの雑貨店フリーマーケット。この店の朝は早い。
空き巣犯が多いからだ。
一時期減ってきた空き巣犯だったが、また変な噂が広がった。
フリーマーケットに空き巣に入ると、レアアイテムがある宝物庫に転移してしまう。
魔物もいるが、それ以上に対価がある。
魔物にやられても死ぬことはない。
それだけ聞いたら根も葉もない噂なんだけど、本当に空き巣犯人が店の品ではないレアアイテムを持って帰ってきている。
意識がまだしっかりしていた人は、そのアイテムを自分のものにした。
もちろん、本当に店の商品ではないので、それは問題ないのですが、一攫千金を稼ぐことに成功したという事実ができて、空き巣が増えた。
でも、大半の空き巣はさっきの人達みたいに奇行に走り、手に入れたアイテムに関しては所有権を放棄している。
さらに改心して真面目に働くようになるというから困る。
いまやラビスシティーでは、「フリーマーケットに空き巣に入った」というのは、信頼のおける一種のステータスになってるそうだ。
【スラム出身というだけで働けなかった僕が就職できたのは、全てフリーマーケットの皆さまのおかげです。ありがとうございます】
と、お礼状が来た時はさすがに目眩がした。
ポーションの消費期限のチェックをしていていると、空き巣犯を引き取りに来たギルド員のレメリカさんが来た。
「おはようございます、いつもありがとうございます、レメリカさん」
「いえ。フリーマーケットさんのおかげで、フリーマーケット以外の空き巣発生率が大幅に下がっています。近々ギルドから感謝状が出ると思いますよ」
「……ははは」
淡々と伝達事項を伝えるレメリカさんに、私は乾いた笑いで答えました。
「それと、メイベルさんから提供していただいた魔石チェッカーについての伝達事項です」
魔石チェッカーとは、コーマ様が作った魔石に反応する魔道具の名前です。
検問所に配置されたと聞いたんですが。
「問題ありましたか?」
「いえ、各検問所から多大な成果がでていると報告が上がっています。いままで発見されなかった密輸方法も判明しました」
「今まで発見されなかった密輸方法ですか……詳しく聞いてもいいですか?」
あの検問所の厳しさは知っている。
勇者でもない限り、あの検問を簡単に通過するのは無理だと思ったのですが。
「かまいませんが、あまり気持ちのいいものではありませんよ」
「……えっと、お願いします」
「そうですか……」
とレメリカさんは淡々と説明し、私はそれを聞いて思わず胃の中身がこみ上げて来そうになった。
密輸方法とは、奴隷の中に無理やり魔石を詰め込んで運ぶという手段だ。
魔石を動物に飲み込ませたら魔物化する。だが、人間の場合は例外で、魔石を飲んでも消化できないで、長い時間かけてMPになるそうだ。
そこで、他国の奴隷商人に扮した密輸人は奴隷をつれてきて、この国の奴隷商人に法外な値段でふっかける。
当然売れない。売れなかったという証拠を残し、魔石を奴隷の身体の中に詰め込む。口からだけではない、肛門からも魔石を詰め込む。
そして、国を出て、奴隷全員の身体を引き裂き、魔石を取り出す。
……なんとも信じられない話だ。
おそらく、その奴隷というのは、老人だったり、病気持ちだったりする、他国で“廃棄奴隷”と呼ばれる人達なのだろう。
私は自分の首につけられた首輪をそっと撫でた。
結果的に自分で選んだ道とはいえ、この町の奴隷でなければ――コーマ様の奴隷でなければもしかしたらもっと酷い末路が待っていたかもしれない。
そう思うと身震いした。
「よう、メイベル、早いな。レメリカさん、おはようございます」
そこに、私の主人であるコーマ様が入ってきて、私達に挨拶をしました。
レメリカさんは聞こえるように舌うちし、
「これはこれは、奴隷に働かせて重役出勤をなさるコーマさん、おはようございます」
「ぐっ」
レメリカさんは相変わらずコーマ様にはきついです。いえ、レメリカさんはギルドマスター以外の男性には全員等しくきついそうですが。
コーマ様は一瞬たじろいだようですが、すぐに持ち直し、
「そのことなんですが、レメリカさん。例の話、今からでもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。本人もいることですし、ちょうどよいのでは?」
何のことでしょう?
本人って、もしかして私のことでしょうか?
「メイベル、お前、今日からこの店のオーナーな」
「あと、店の資産も全てメイベル様の所有物となります」
「それと、奴隷も今日で終わり。ほれ、首輪外すから後ろ向け」
え?
えぇぇぇぇっ!?
朝の挨拶のついでになされた会話は、おそらく私の人生を一番左右させる重大な話でした。
作者は相変わらず大馬鹿です。
ここからメイベルの短編になります。
~昨日はこんなスライムを作ってました~
スライムの核×スライムの核×ブラジャー
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スライムブラ【魔法生物】 レア:★★
胸の中部分に仕込むことでワンランクアップの魅力的な女性に。
偽物ではありません、あくまでも演出です。生きているので注意。
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コーマ「ルシル俺の作ったスライムブラ知らないか?
ルシル(巨乳)「し、知らないわよ」
コーマ「そうかそうか、知らないか…………ごめんな、ルシル」
ルシル(巨乳)「謝らないでよっ!」




