第特別話 その2 ネコの恩返し?
「……なるほどね。つまりあなたは猫と交わった結果こんな姿になっちゃったってわけなのね」
「ええ、あなた達とは状況が違いますがそんな感じです」
とりあえず自分の紹介を話せる範囲ですべてした。だが、優斗は紹介を終わった後も昴さんがなぜか自分のことをまじまじと見つめていることに気がついた。
「どうかしたんですか昴さん?」
「い、いえなんでもないわ」
「……? それならいいんですけど……(オレなんか変なことしちゃったかな?)」
それでもこちらをちらちらとを見つめてくる昴に不安がる優斗であったが、昴は全く別の事を考えていた。
「(……由宇といい、この子といい、なんでこう……元は男なのにこんなにかわいいんだろう?)」
軽い嫉妬心を憶えてしまう。
自分よりもかわいい姿をしておきながら、元は男であるというのだ。ちょっと不公平に感じてしまう。
そんなことを考えていると今度は月が会話に入ってきた。
「それにしてもあなたって本当に変わった感じのする人ね」
「そ、そうなんですかい?」
「ええ、そうね~男のようでも女のようでもあり……人間のようでも猫のようでもある! そんな感じね!」
「……さいですか」
月のその容赦ない言葉に若干へこんでしまう優斗。悪意があって言ったわけではないのだろうが、それが逆につらい。
「ね、ねぇ優斗君。ところでそろそろ話してくれないかしら? いったいなんであなたはなんであんなところに倒れていたのかを」
「……あ。す、すいません! 実は……」
由宇のその言葉にそういえば、と最初に言わなければならないことを今の今まで忘れていたのを思い出した。
とにかくさっさと話すべく口を開こうとした時、
「優斗さん!」
「ひゃうい!?」
背後からの突然の強襲。
いきなりのことでまったく反応出来ずに由香ちゃんに捕まってしまう。
「えへへ~」
「いや……ちょっと……やめ……んあ…」
何とか抜け出そうと必死に抵抗をするものの、がっしりと胸をつかまれてそこから抜け出すどころか、変な声を出してしまう始末である。
「あれ? もしかして優斗さんまた胸が大きくなった?」
「そ、そんなわけ!!……って、ん?」
その時、突如としてどこからか電子音が響きわたる。
おそらく音からして携帯電話の着信音だと思われるが、由宇達はそのメロディーに聞き覚えがなかった。
「ちょっと失礼」
そこで声をあげたのは優斗。その場で断りを入れて、荷物と一緒に持ってきた携帯を確認する。
そこのディスプレイに映っていたのは『音無 舞』の文字。
はて、なに用だろうか? と疑問に思いつつ電話に出る。
「はい、もしも―『死ねえええええええええええええええ!!』 ブツ! ツーツーツー……
「…………」
『…………』
「……そういえば、まだここに来た理由を―――」
『無かったことにした!!』
その時の優斗の顔はまぶしいくらいの満面の笑みだった。
それから時間は流れて、日が傾き始めるころ優斗は天野家の台所に立っていた。
「うん。こんなところかな」
すでに出来上がったものの味に満足すると、今度はことことと鳴る鍋のふたの音をBGMにして目の前にあるネギを鼻歌交じりにまな板の上で切り刻んでいく。
「へ~優斗さんってお料理上手だったんですね~」
「ゆ、由香ちゃん!? いつの間に…」
「え? さっきからいたんだけど……あ、これ味見してもいい?」
「うーん。悪いんだけど、もう少しで出来るから向こうで待っててくれないかな?」
「うん! いいよ。でも出来るだけ速くね~!」
「りょーかい」
由香ちゃんが居間に戻っていくのを確認すると優斗は再び作業を再開する。
なぜ優斗はこんなことをしているのか? 時間を少し戻して説明しよう。
「それで優斗くん。あなたはなぜここまで来たのかしら?」
「はい。この前泊めてもらったお礼にと思いましてね、今日はオレがご馳走をしようかと…」
「ご馳走?」
「ええ、食材とかも、ほら、このとおり」
そういって、持ってきた大型のリュックの中をみんなに見せると、そこには色とりどりのさまざまな食材がたくさん詰まっていた。
「いろいろ買ってきましたから食べたいものがあったら何でも言ってくださいね」
満面の笑みでそう答える優斗にみんなはさまざまな表情で反応する。
ちなみにそのちょっと前まで舞とケータイで第二部に当たるメールによる汚文激闘編が繰り広げられていたが、そこんところは割合させてもらう。(第三部は激!暴力決着編(仮)になります)
そして現在……
「お待たせしました! 次の料理です!」
「来た来た♪」
「速く~!!」
「あはは、そんなに慌てないで。量は十分あるから」
出来上がった料理を皿に盛りつけた物を次々と運び出していく優斗。
よく見ると先ほど料理を盛りつけた大皿がいくつか空になっており、また料理を作らないといけないことを予感させた。
「……おいしい」
「優斗君…すっごいおいしいわ!」
「それは良かった。実は口に合うか少し心配でして…」
「これはうまいな。いったいどんな料理なんだ?」
「ああ、これは……という料理でして……」
「なるほどな。参考になったよ」
「いえいえ、どういたしまして」
味の評判も上々で、その後も次々と料理を作っていったが結局持ってきた食材はみんな腹の中に収まってしまった。
クロ「どーも、忘れ去られた男クロです」
先生「もともとあんたのこと憶えている奴なんかいるの?」
クロ「……うんスル―。とにかくマジですんませんでした! 忘れ去られても文句もいえません。特に白夜様……」
先生「人様に迷惑をかけるなとあれほど言っといたでしょうに」
クロ「待て言い訳を聞いてくれ。忙しかったんだ!!………はい、すいません。もう煮るなり焼くなり好きにしてかまいません」
先生「それが出来たらどれだけいいかしらね……これを終わらせるまでは手出しできないのが悔しいわ」
クロ「なんかもう『お前もうクロス書くんじゃねぇ!!』とか言う声も聞こえてきそうな感じです……内容と時間が釣り合わない!!」
先生「それはあんたの実力がカス以下だからでしょう」
クロ「言い返せないのが悔しいです!! 正直誰かに罵ってほしい気分なクロでした。次回に続く」




