第37話 美女と野獣と獣と変人と その3
履いていた上履きを靴箱に入れて新しく買った小さなスニーカーに履き替える。
履き終えてちらと外を見ると先ほどまでさんさんと輝いていた太陽が夕日に変わっていることに気づく。
真っ赤な夕日は教室、校庭、学園、すべてを赤く染め上げているだろう。
・・・まるで今のオレのほっぺたのように。
「いっつー・・・」
舞のやつにさんざんいじられた結果、頬は真っ赤になり今もヒリヒリと痛む。
そのためできればもう少し休みたいと思っているんだが・・・
「ちょっと優斗遅いわよ」
「あの・・大丈夫ですか?・・」
目の前に立っている人物がそれを許してくれないのだ。
「誰のせいで動けなかったと思っているんだ誰のせいで」
「あら、本はと言えばか弱い乙女を二人置き去りにして逃げたどっかの誰かさんが悪いと思うんだけど?」
「う・・で、でもいくらなんでもこれはやりすぎだと思うんだが」
「は?むしろここはこの程度で済んだと感謝するべき場所でしょ?」
「あんた何言ってんの?」的な見下した目でこっちを見ながらそんなことを言われた。
だからと言ってしばらく行動不能になるくらいやるのはどうかと思うがそれを口に出せばまた面倒なことになるのは目に見えているためここは素直に従うことにした。
「はいはいありがとうございました舞様」
「あんたそれ絶対馬鹿にしてるでしょ・・・ま、いいわ。今は私がお姉さんなんだからこれぐらいは許してあげなきゃね」
「お姉さんね・・」
両手を腰にあて胸をはる舞を見る。
確かにこの姿になって身長は逆転されてしまったがそこまで差があるわけでもない。
それに出ている所も実はオレの方が・・・
「?・・なんで泣いてんのよ?」
「いや、ちょっと・・世の中不公平なんだなって思って・・・」
「よく・・わからないんですけど・・?」
「わからなくていいんだよ・・わからなくて・・」
「・・・いろいろと気になるけどきりがないからそろそろ行くわよ」
「・・・そうですね」
「あ、副会長」
「あら、大島君今帰りかしら?」
舞にいじられ姫神にそれを見られながら、泣き、叫び、心に傷を負いながらも成長して目的地に向かって歩いていると副会長に遭遇した。
「はい。・・ところで副会長はこんな所で何してんですか?」
副会長の後ろを見ると親衛隊のみなさんが白い布のような物で包まれた何かをトラックに積み込んでいるのが見える。
「ああ、別にあれはただの「ゴミ処理」よ「ゴミ処理」」
「ゴミ処理・・?」
もう一度副会長の後ろを見ている。
よーく見てみると白い布の間から何か肌色の細長いものが・・・
「あの・・あれって人間の腕「ストップ!!」
「・・どうしたんですか?」
「姫神・・・いちいちあんな物を気にしていたらここではこの先生き残れないぜ?」
「えっと・・・」
「そう、あれはただのマネキンで肉人形で偶然人の形をしている肉片で断じて人間などではないんだよ」
「あ、あの・・・」
「あれは違う・・あれは違う・・あれは違う・・あれは・・」
そう、あれは人間などではないのだ。そう思いこむんだ!
「ねぇ・・大島君何かブツブツ言ってるけど大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫ですよ。時々優斗は変なことやる奴ですから」
「あれは違う・・あれは違う・・そう!あれは!」
「キャー!!」
「一人逃げたぞー!!」
「・・・台無しだよ!!」
せっかくの暗示もその一言ですべて粉砕されてしまったオレはもう開きなおって声のした方に向くことにした。声のした方を見ると男子生徒が全力疾走しておりどんどん小さくなっていくのが見えたが誰一人としてそれを追いかけようとしていなかった。
「あの、追いかけなくていいんですか?」
「ええ、彼には発信機を付けさせてもらったからね」
「発信機?」
「そう、発信機を使って相手のアジトを特定していっきにせん滅する作戦なの」
「なるほど・・・」
アジトと聞いて一瞬どれだけの人がオレを狙っているのか考えようとしたが脳がそれに拒否反応をおこしてしまったので仕方なく視線を男子生徒に戻すことにした。
「さっさと逃げなさいよこの負け犬!」
「う、うるさい!」
「は、悔しかったら何かしてみなさいよ!」
「く・・くく・・」
「しょせんあんたなんてその程度なのよ!」
容赦のない親衛隊からの罵声。ちょっぴりだが男子生徒がかわいそうに思えた。
「う、うっせ!!バーカバーカ!おめぇらのかあちゃんでーべーそー!」
「おい高校生」
いくらなんでも高校生のいうことじゃないだろ・・
あの舞ですら呆れた表情で見ている。さすがにこんなことでキレる奴なんて・・
「ウヴぉあああああああ!!」
いた。男子生徒が宙を飛ぶ。
なんという空中横回転・・これは4回転半は堅い。
そして男子生徒が飛ぶ前に立っていたあたりには・・
「・・・・・・・」
副会長が立っていた。
しかし息は荒く目はマジになっておりキレていることは明らかだった。一応言っておくが副会長でそれも大勢の人がいる中での行動である。
「・・・・は!?私は何を・・?」
その上記憶喪失である。皆が静まり返っている中、本当に大丈夫なのだろうかこの学園と思う傷心のオレであった。
クロ「どーも、油断してたら風引いたクロです」
副会長「まったく・・夜遅くまでパソコンなんて使ってるからそうなるのよ」
クロ「だって面白いんだもん」
副会長「だもん、じゃないでしょ!いいからさっさと寝て完全に治しなさい!」
クロ「でもな~・・」
副会長「あ、あんたのことを心配してくれる人だっているかも知れないじゃない!」
クロ「うっそだ~こんなことで心配してくれる人なんて・・」
副会長「・・・・・・」
クロ「・・わかりましたよ。次回に続きます」




