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第86話 魅惑のカヌレ(アウル視点)

お待たせ致しましたー






 *・*・*(アウル視点)










 艶々とした宝石のようで、美しいパン。


『カヌレ』とチャロナが言っていたが、出来立ての熱い状態では食べられないパンらしい。実際、僕は手をやけどしてしまったので、冷却(コールド)されていくのを我慢してみていたが。


 まるで、本物の宝石のように美しいパンへと変貌していったのだ!!


 とても美しい! 食べるのがもったいない!!


 だが、これは母上がリーシャに頼んで作ることになったパンなんだ。僕も手伝ったが、美しい仕上がりだ。小さな山のようでいて存在感が凄い。表面の美しい黒が僕を虜にしてしまう……香りも凄いが、見た目も凄い!!


 さあ、どうぞ、とリーシャが勧めてくれたので。今度こそ手で触れられるそれを掴んだのだが。



「重い!? 少し固い?」



 出来立てと違う、圧倒的な存在感を感じたのだ!! ずっしりと重く、表面がふわふわではなく固くなっていた!!


 けど、匂いはとても芳しく心惹かれる香りだ。勢いよくガブッといけば!!



「〜〜〜〜!!?」



 甘い。


 それはわかるのだが、がつんとした強い甘さが舌の上にのしかかってくるようだ! もぐもぐすると、カリッとした飴細工のような食感の下にはもちっとした不思議な食感が。


 チャロナが何度か振る舞ってくれた『モチ』と似た味わいだ。


 非常に美味しい!!


 酒精の風味も強いが味はしない、美味しい!!


 それくらいしか言えないくらいに美味しいんだ!!



「……美味しいのである!!」



 ひと口では足りない、もっともっとと口が求めてしまうのだ。美味し過ぎるのである!!


 それに噛めば噛むほど味が広がっていくようで、楽しいのだ!!



「おいし?」


「美味しいとも!!」



 我が妹分はなんと成長したことか。半神であるこの僕をはるかに凌駕している。素晴らしいことなのだ!!



『ほほ。喜んでもらえてなによりじゃ』


「ね? ウルクル様」


『うむ』



 そう言えば、此度は母上からの提案であった。そのことを思い出し、僕は口に入れていたものをきちんと飲み込んでから……母上に感謝の礼をしたのだ。



「母上、僕のためにと提案していただきありがとうございました」


『良い良い。お主の生誕の儀にはちと早いが、リーシャの異能(ギフト)の素晴らしさを知れたであろう?』


「はい!」



 僕は感謝の礼をリーシャにもすれば、『ありがとう』と言ってもらえた。その笑顔に、どこか違和感を覚えたがよくわからなかった。なんというか、リーシャは僕と年頃はそう変わらないのに、少し大人びたように見えるのだ。


 誰か、好きな相手でも出来たのだろうか? 兄代わりとして、それは是非とも応援したい!! 尋ねようとしたのだが、何故かサリーに引っ張られてしまった?



「ダメだよー、アウルくん?」


「何がだ?」



 端っこにまで引っ張られたのもだが、サリーの言いたい意味がよくわからなかった。ついでとばかりに、ミラクルも居て頷いていた。



「……リーシャ、は。別の人……が好きなんです」


「ほう?」



 さっきの考えは当たっていたが、二人は僕がリーシャを想っていると勘違いしているのだろう。だから、違うと首を横に振った。



「違うの?」


「僕は兄代わりとして応援したいだけだ。して、誰だ?」


「……セシル兄」


「……あやつか」



 魔法の類はかなり手練ではあるが、なかなかの男前。成長すれば言い寄られる女は多そうだ。何せ、フィーガスの息子だからなあ? しかし、二人の様子を察するにセシルの方もか。これは見応えがありそうだ。

次回は水曜日〜

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