第84話 合唱してしまう
お待たせ致しましたー
「ミア!」
『みゅ! 変換、オーブンレンジぃ!!』
ぽぽぽん、って音が鳴って煙がもくもくしたら……調理台の上に、あの四角くて大きな黒い箱が出てきたわ。今日はこれが、いつものレンジだけで使うわけじゃないのよ!!
「ミア、予熱お願い!」
『あいでしゅ!』
窯もだけど、パンはそのまま入れて焼くんじゃなくて『予熱』って言うのが大事だって、お母様がおっしゃってたの。パンを美味しく、生焼けがないようにするんですって。他にも理由は色々あるらしいそうだけど。
その間に、あたしは冷めた生地に時間短縮をかけるの!
「時間短縮!」
冷めた生地でもいいらしいけど、レシピには『一日置くとなお美味しい。時間短縮を何回かかけることで可能』と書いてあったから、一日分の時間短縮を……何回かに分けてかけて。
少し、バニラビーンズの粒々が浮いてきたところで大丈夫だとシェトラスに教えてもらってから。次は、皆で型にこの生地を注いでいくの。いくつかボウルに生地を分けて、不思議な形をしたレードルってスプーンのような道具で注いでいくのよ。
『できまちた!』
ミアの予熱も終わったところで、型の方も準備が出来たから。入れるのはレイバルスにお願いして、上と下の段に型を乗せた鉄板を入れていく。
そうして、蓋をしたら……。
『おいちいおいちい、ぱぁん!
おいちいおいちい、ぱぁ〜ん!!
おいちいぱぁんが、できましゅよ〜!!』
「「「は?」」」
「ははは! 面白いな!!」
「さすが……ロティちゃんの子どもと言うか」
『……でやんすねぇ』
どうやら、突然のものじゃなくて……ミアがロティの子どもだから、不思議じゃないことが起こっているんだって。びっくりしたけど、あたしやサリー姉は目を合わせて……ミアの真似をして歌い出したの!
だって、何だか楽しいんだもん!!
「うむ! じゃあ、僕も!!」
「ぼ……くも?」
「うむうむ! 楽しいは伝染するものだ!!」
アウル君やミラクルも一緒に歌ってくれたので、ちゅーぼーだけじゃなく、食堂にまで聞こえたからか。
使用人の何人かが、ひょこひょことやってきたの。
「なんやなんや〜?」
「聞いたことあるような?」
執事のシャミーと、庭師のピデットも来てくれてたわ。変わった話し方をするのがシャミーで、髪が長いのがピデット。どっちも、サイラと仲が良いんだって。
「シャミー! ピデット!! 美味しいパン作ってるの!!」
「ほーん?」
「お嬢様、頑張ってますね?」
「今日はアウル君のためだけどー」
「「おー」」
でも、皆の分も作ったから多分大丈夫だと思うわ!
火が生地に伝わったのか、お酒の匂いと砂糖の匂いが強いすっごい匂いが……ふわーんって広がってくー!!
「「「すごーい!!」」」
「うむうむ! 良き酒精の香りだ!」
『途中で空気抜くとこは、俺っちと料理長でするんで』
「そうだね」
蓋を開けて、鉄板を一度出したら……軍手をはめた手で、型を少し持ち上げてカンカンと叩きつけた! これも大事な手順だって、レシピにあったの。
次回は木曜日〜




