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第53話 優しい子守歌

お待たせ致しましたー

 やだ。


 やだ。


 ……やだ。


 やだやだ!


 セシル兄が、笑顔じゃないのがやだ。


 あたしが悪いんだったら、あたしが謝んなきゃいけない。


 だから……探して探して、見つけた中庭では。


 セシル兄がしゃがんでいた。


 泣いているのかと思って……あたしは自分で泣いちゃったけど。


 セシル兄は、あたしを抱っこしてくれた。


 赤ちゃんの頃は、あんまり覚えていないけど……おっきくなってからは、久しぶりかもしれない。


 嬉しくなったけど……あたしは口に出来なくて、わんわん泣いてしまった。



「ふぇーん!」



 とにかく、泣いて泣いて。


 水が無くなっちゃうんじゃないかってくらいに……セシル兄の抱っこで泣いちゃったんだけど。


 セシル兄は……怒ってなかった。



「優しい夢よ

 優しい風よ


 おやすみ、なさい

 おやすみ、愛し子よ


 大地に、広がる緑の四季

 芳しい、花の香り


 さらさ、さらさ、手を取りましょう


 その目に浮かぶ、愛し子のために


 手を繋げば、届くところに


 すべての愛しさ、見えてくる」




 優しい歌。


 古い歌だわ。


 この国の……大事な歌。


 あたしもお母様に習ったけれど……セシル兄はゆっくり歌ってくれた。


 その優しいのが伝わってきて……あたしの涙も止まっていき。


 セシル兄と目が合えば、おじ様そっくりの赤い瞳が……『ごめんね』と言っているように見えた。



「……セシル兄?」


「……泣かせてごめん」



 って言って、ぎゅーって抱っこしてくれた。


 あったかくて優しくて、少しドキドキしちゃう!



「ひゃ!」


「……俺。もっと強くなるから」


「え?」


「リーシャのために、強くなるから」



 と言って、あたしのおでこにキスしてくれたんだけど。


 かっこいい笑顔もすぐに見せてくれたから……心臓ばっくばくだよ!?


 セシル兄……こんなにもかっこ良かった??


 ううん、ずっとずっとかっこいいんだけど。


 大好きなお父様とは違うわ。


 子どもでも……すっごくかっこいい。


 あたし……ほっぺが熱くなりそうだった!!



「……セシル兄、今でも強いよ?」


「まだまだだ。待ってて、リーシャ」


「う、うん?」



 とりあえず……よくはわからないけど。


 皆にも謝りに行こうって、セシル兄と手を繋いんだだけど。


 いつも以上に……熱く感じたわ。


 あたし……どうかしちゃったのかなあ??

次回は火曜日〜

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