第198話 打ち明けられた真実
「……そうなの。シアちゃんが」
お母様に、まずレシピ本のことを伝えたんだけど……そんなにも驚いていなかった。むしろ、わかってたみたいな……そんな雰囲気。
ゆっくりとベッドから立ち上がり、私にお母様手製のレシピ本を取るように本棚に指を向けたの。
「え、この本」
「出来るだけ、ほとんどのパンの基礎を記したものよ。貴女の知識と経験なら、もうそれを使えばだいたい作れるわ」
「……お母様、のレシピ」
「ううん、それは違うわ。……今なら、貴女にも話せるわね。リーシャ」
そして、教えていただいた。
王女としての地位はあったけれど、何故お父様と結婚した経緯。
料理の出来る王女だったお母様は、『転生者』だったことを。
そして、シア様ではなく……その祖父神様から試練を与えられた結果、『枯渇の悪食』を解決したことも。
前世の記憶がまだきちんとあるのは、男性に転生されたマックス様がいらっしゃるからなのも。
今までの『疑問』が解けたのはびっくりしたけど、納得いくわ。まだ私は成人してないけど……セシル兄ってちゃんと婚約者がいる貴族令嬢だもの。
養育などで、学んで成長した人間だから……お母様の話が絵空事でないのはちゃんとわかった。
「そっか。お母様とロティの関係って、絶対だったんだね?」
「……創られたモノでも、あの子もちゃんと意思のある存在よ。貴女もミアにはそうでしょう?」
「うん」
ミアにはまだ寄り添うほどの、『誰か』はいない。でも、いつか見つかってほしいと思っているわ。その手伝いをしたいと思えるのは……私がお母様の娘だからね?
「シアちゃんたちの望みは、私がずっと抱えていたものと同じ。……いつか打ち明けるつもりだったけど、はやく言えてよかったわ」
「ううん。難しいことだもの。お父様たちも、皆?」
「子どもたちにはまだよ。いつ言うかは……リーシャが決めていいわ。勝手な判断だけど、ほとんど同じ異能を持っているのは貴女だけだから」
「……わかった」
サリー姉も同席してくれていたけど、まず最初に伝えたいのは。
やっぱり、セシル兄だと思って。私は魔法鳥をアルフガーノ家へと飛ばした。




