第192話 神からの詫び(シェトラス視点)
どうやら、殿下の方へ既に通達があったようだ。
便箋を坊っちゃまに見せても、まだ識字の教養もまだなので……殿下が代わりに読み上げてくださいました。
「簡単に言うと。その生き物はディオスだけの『加護』の形なんだぞ。将来の当主候補として、ディオスに与える特別な生き物で……自分で名付けてもいいそうだ」
「……ほんと?」
おそらく、二年近く前の……セシル様へのユニークスキル継承の件についての謝罪も含めてでしょうな。
つい先日、正式にスキルがセシル様に譲渡されたことにより……フィーガス様には二度と発動する気配が見られなかった。とくれば、フィルド神也に考えられたのでしょう。
奥様の娘御に……あのような結果をさせてしまったのだから。様子見で次の手を打たれた、と。それが坊っちゃまへの『加護』でしょう。
坊っちゃまは、長子ゆえに異能をお持ちだと当主を継ぎにくい。代わりに、神獣というご加護を与えることで中和をする……と言うところでしょうな。
「うむ。その子の姿は、ディオスが望むたびに変わるから気をつけて欲しいそうだ。今は俺にも猫のように見えるが、レイみたいな獣の可能性もあるし……馬の形もあり得るらしい」
「わーい!」
痛くないように抱っこされているのは流石ですが……姿形も変わるとは至れり尽くせりという仕様でしょうか。旦那様がこれで良いのかと、眉間に深い皺が。
「ははは! まさか、そのように神自ら詫びを頂戴するとは……!! 俺の方は心配しなくてもいいんだぞ、カイル! 我が国セルディアスへの、特別な結界と加護は既に受けているのだ!!」
「……待て。俺は聞いてないが!?」
「……俺もこの便箋で知ったんだぞ」
「「……はぁ」」
何はともあれ、神獣の子はローザリオン公爵家で無事に引き取ることとなり。
名の方は、坊っちゃまが『宝石みたい』と言うことで、ベリルと名付けられました……。




