第180話 親友同士の会話(エピア視点)
「のどかだねぇ……」
「そうだねぇ……」
今日は『奥様』と『菜園の補助職人』としてじゃなくて。
は、恥ずかしいけれど……親友として、ふたりで木陰を利用してお茶をしているの。それぞれの赤ちゃんは、メイミーさんが手塩にかけて修練(?)したメイドさんたちに預けているの。
それはチャロナちゃんが言ってくれたのよね?
「陽射しもぽかぽか。お茶も美味しいね?」
「うん」
お互い子どもがいるけど、今日だけは成人したての年頃に戻ろうと……前々から企画してたの。育児は大変だけど、たまには気晴らし……言い出しっぺはマックスさんだけど。
一応、前世は女性でも……今はしっかりお父さんだから今日は除外、よりもお仕事忙しくて来れないみたい。
それだから、今はチャロナちゃんと菜園の隅でお茶会しているんだ。
「私と悠花さんのいた世界だと、ママ友って集まりでお茶会したりご飯食べに行くの。だから、男の子が生まれたら絶対しようと思ってたんだー」
転生者。
王女様。
公爵夫人。
国賓級料理人など。
チャロナちゃんにはいろんな肩書きがあるのに、田舎育ちで農作人でしかない私とかとこうして話してくれる。びくびくしてた時なら畏れ多いと思っていたけど……ちゃんと『今』を知っているから、友だちだからこそ嬉しい。
同じ子持ちって理由もあるけど、羽を伸ばせるし悩みもいいやすいから。
「リーシャちゃんは、今日もパンの練習?」
「そうそう。シェトラスさんとクロワッサンの生地練習だって。あそこ夏は最高だけど、冬は大変だもん」
「氷室のように、氷の結界をわざと?だっけ?」
「厨房も薄く張っているけど、作業場は段違いなの。だけど、クロワッサン作ってみたいって、あの子が言うから」
大人がいるから挑戦させてあげたい、母親としての感情。お互いに若いけど、チャロナちゃんの方が子ども持つの早かったし……貫禄が違うなあ。
私も、うちの子に対していつかそう思えるかなあ??
「じゃあ、今日のおやつは控えめにしとく?」
「それもいいけど。多分、お夕飯の取り合い合戦に入れるんじゃない?」
「……それもあり得そう」
昇進しても、まだ見習いより上についた三馬鹿使用人は……今でもパンの取り合いっこするもんね? 見た目は育ったのに、非常にもったいないや……。
「クロワッサンかぁ。わざと余らせて、サンドイッチにしてもお弁当のリクエスト多かったね……」
「……あれは止めよう。チャロナちゃんは今ダメでも、シェトラスさんたちが大変」
「……そうだね。レイくんが慣れても大変だった」
美味しいは『戦い』とかに発展しかけた、クロワッサンサンド事件。
旦那様が氷点下の怒りで収めたのが思い出せるくらいだったもんね? リーシャちゃんが、それを知らないから……シェトラスさん、それは止めてと祈るしかかなかった。




