第167話 爺は奮闘する(アーネスト視点)
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*・*・*(アーネスト視点)
起きてしまった事態を悔やむなどはあとで良い。とにかく、今はすぐに対処すべきなのじゃ! 我が愛弟子の御子であるリーシャ様を蝕むスキルから解放せねば!! 継承されるタイプのスキルが影響しているとはいえ……これは、強力過ぎる。無意識下で行われえるにしても、初めて発動した結果でこれじゃ。
(魔力の根源を抜き取るのは、まだッ簡単なのじゃが……)
残ったままの『恍惚』と感じ取れている箇所をどうすべきか。いくら互いに想いが通じあって、婚約も成立しているにしても。セシル以上に、リーシャ様はまだまだ幼い。儂のようなハイエルフではなく、肉体はごく普通の人間でしかないのじゃ。あまりにも、肉体の構造の差が大きいのもあるが……まだ、恋を覚えたばかりの無垢な年頃。
いきなり、その先を覚えるのは『犯罪行為』に近い! 母君のチャロナ様より、異世界ではそのようなことも特に重罪扱い。こちらでも、一定以上の子どもへの性犯罪も同じじゃが。儂の匙加減が間違えれば、sのような事態になりかねん! 罪を背負うよりも、リーシャ様のお身体が当然大事じゃが。お優しいこの御方のお心を思うと、責務を負わせたくない気持ちが強い。
ここは、慎重に魔力操作にて抜き取らねば!! なんという、ユニークスキルがよりにもよって心優しい少年にまで継承されてるのじゃ!?
「……師匠。どう、です?」
「うむむ。……儂にも、非常に困難な事態じゃが。お主にとっても酷な状況。回避は極力出来るように試みるが……最悪は想定していてくれ」
「……き、ききき、キス……を?」
「出来ればさせとうないわい! リーシャ様の夢を壊したくもない!!」
幼くとも、恋を知って夢見る乙女心くらい多少でもわかるわ!! ひ孫以上の孫も居る儂じゃぞ!? どれほど注意されてきたことか……それも、大恩人のご息女の夢じゃぞ!? 『はじめて』は一度きりしかないのじゃ。将来の夫君が相手でも……やはり、それなりの願いは叶えてやりたいものじゃ。だからこそ、魔力操作を久々に試みたのじゃが。
「……し、しょう?」
セシルがかなり不安がるのも無理はない。儂ほどの技量の持ち主ですら、お手上げに近い複雑な浸透の回路。これを紐解くのは……下手をすると、魂へと介入する禁忌の域じゃ!! かくなる上は……ここは!!
「……すまぬ、セシル。儂でも命を脅かすことまでは出来ん」
「…………わ、かり、ました」
儂の降参の態度を見れば、いくらセシルでも我儘は言わないようじゃ。ともかく、ここで致すわけにはいかないと、彼はリーシャ様を抱え直してからおそらくローザリオン公爵家へと転移していったのだった。
「くぅうう!! また更なる研究をせねば!!」
あそこまで、複雑な回路を生み出すとは……錬金術以来の研究は久々じゃ!! 違う意味で闘志が燃え上がるぞ!!
次回は月曜日?




