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アラン戦線 包囲されし大隊  作者: 宇佐美桂
1/8

1日目

ヘルマン・フォン・カールの塹壕戦を書いた者です、前作との繋がりは無いですが同じ時代で違う戦線にて戦っています。残酷な描写はありませんので安心してお読みになって下さい。

周りが静かだった、銃声はおろか砲撃音や発射音すらしない。偵察部隊も戻ってこない、戦況が一切分からない上に無線も繋がらない。 とりあえず現在642人にスコップで塹壕を掘るように命じた、それと同時に伝書鳩を飛ばすことにした。


とりあえず交代で塹壕を掘るようにしていた所、30人程度の騎兵部隊を発見した。


「応戦せよ!捕虜を取れ、情報を聞き出すだ!」


激励を飛ばし発砲したがあっさりと撤退していった、偵察部隊だったのだろう。

非常に嫌な予感を危惧していた、そしてその予感は的中していた。


大きな地響きと共にこちらにやってくるのが聞こえた、戦車じゃないこの音は騎兵部隊、しかも大勢だと思っている所で、警戒をしていた部隊がやってきた。


「騎兵部隊がこっちに来ています!数はおよそ1000人以上!」


「塹壕はまだ完成していない!全部隊、方陣を取って騎兵隊を退けろ!」


「りょ、了解!」


方陣とは60年戦争(第一次世界大戦)の頃に使われていた近代の陣形だ。このような陣形を取る行為は普通にメリットが無いし、散兵戦術を取り入れている現代では陣形自体使う事は無い。しかし近代化が大きく遅れているアラン公国には通用する陣形である。


騎兵隊がこちらに突撃してくる所に銃剣を装備した3列の正方形が組まれた陣形に攻撃をしたが、馬は先端恐怖症であり、怯む。その時間を見逃さず斉射し馬もろとも攻撃された為。転落や銃創により戦死、もしくは負傷、逃げ出す者もいた。これを何度も繰り返した結果、1000人以上の騎兵隊は撤退した。しかしこちらも無傷とは言えず642名の内34名が戦死、30名が負傷した、残りの戦力は578名となった。少ない数だが状況が一切判断できない今は戦力の損耗だけは避けたいと思っていた所で伝書鳩が帰ってきた。そして下士官が報告にやってきた。


「状況は?」


「少佐!どうやら我々は囲まれている可能性が高いようです!第51師団は損害の大きさに後退し戦力の補充を行っているようです!」


「何!敵に伝わる事だけは避けろ!応援を呼ぶんだ!その伝令は焼却処分だ!」


「了解!」


これが包囲された大隊と呼ばれる事件の記録である。

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