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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第三十六話


「それならいくつかありますよ。お二人ならランクもあがりましたし、紹介の時にこの間の戦いのことを少し話せば是非にとお願いする方もいると思いますよ」

 冒険者ギルドで二人がブーラに相談すると、思いのほかあっさりと複数の依頼が見つかった。


「悪いんだが、そのいくつかの依頼の説明をしてもらってもいいか?」

「もちろんです」

 アタルの要望に眼鏡を直しながらブーラは笑顔で頷いた。


 そして、一枚の紙をカウンターの上に乗せる。

「まずはこちら、この街に買い付けに来ていた商人の方の依頼になります。この街に来る際も冒険者に依頼していたようで、帰りの道中も護衛を雇いたいとのことです。過去にも何度か依頼されたことがありまして、人柄は良いお方だと思います。支払いのほうもだいぶ気前のいい方かと。ただ……」

 そこまですらすらと言っていたブーラはなぜか言いよどんだ。そんな彼の様子にアタルとキャロは不思議そうに顔を見合わせた。


「ただ? 何か問題があるのか?」

 促すようにアタルが質問するとブーラは微妙な表情になる。言っていいものかどうか思い悩んでいるようだった。

「そうですね……依頼主当人はとても良いお方なのですが、同行者の息子さんがなかなか厳しいお方のようです。そのせいで対面したのちに依頼を断られることもありました」

 どちらから、とはアタルも聞かなかったが、それだけで揉め事の空気を感じていた。

 

「なるほどな、他の依頼者について教えてくれるか?」

「はい、次はこちらの方の依頼ですね。こちらは貴族の方で、この街の領主に会いに来た帰りの護衛をしてほしいとのことです。ただ、こちらの方は貴族なのですがどうも領地経営がうまくいっていないようでして……その、報酬のほうが……」

 またもやブーラが言いよどむくらいには平均を下回っているようだった。


「なるほどな、人柄はどうなんだ? 貴族だから、プライドだけは高いとかもありそうだが」

 その質問にブーラは苦笑しながら首を横に振った。

「あの方はとても腰の低い方でして、依頼の申請に来る際も申し訳なさそうに何度も頭を下げてらっしゃいました」

 その時の様子を思い出したからかブーラは苦笑していたようだ。彼の様子を見る限りでは悪い人物ではないのだろうとアタルたちは思えた。


「では、この依頼についてはこのあたりにして次の依頼の説明に移りましょうか」

 次の提案をしようとブーラが三枚目の依頼の用紙をとりだすが、アタルはそれを手で止める。

「いや、いい。その二つ目の依頼を受けよう。キャロも構わないよな?」

 アタルが確認すると、にっこりと笑顔を見せながらキャロも大きく頷いていた。話を聞いた印象から、きっと自分たちのことを理解してくれそうな人物だと分かった彼女もこの依頼を受けたいと思っていた。


「と、いうわけだ。この依頼を受けることにしようと思う」

「……わかりました。それでは、こちらの宿に向かってもらえますか? 受付で冒険者ギルドからの護衛依頼だと伝えれば呼び出してもらえるはずです。依頼が完遂しましたら、向こうの街で署名をしてもらって下さい。報酬は本人から直接渡されることになっていますので」

 手際よくブーラは必要な書類を用意し、アタルへ渡す。それを軽く確認していると視線を感じた。


「ん? どうかしたか?」

 それはブーラのもので、彼が優しい笑顔であることに気づいたアタルは首を傾げた。

「いえ、報酬の金額も聞かないでその依頼を選択されたので少し嬉しくなってしまいました」

「嬉しい?」

 何がそういう気持ちにさせたのかよくわからなかったアタルはオウム返しで質問する。


「えぇ、先ほども言いましたが、とても良いお人柄の方なので是非とも依頼を受けて欲しいと思っていました。ですが、報酬も少なく、また私の立場からはそういうことを口にするのも憚られますので」

 眼鏡の奥で少し穏やかな表情をしているブーラは、どうやら依頼主の人物について本当に心配していたようだった。ギルドの受付としては分け隔てなく接しなければならないというもどかしさに心苦しさを感じていたようで、この言葉からブーラの人柄をうかがうことができたアタルとキャロは自然と笑顔になる。


「それじゃ、その人に会いに行ってくるよ。逆に俺たちのほうが断られないように祈っていてくれ」

 おどけるように笑ってみせたアタルとふんわりとほほ笑むキャロは踵を返してギルドをあとにし、ブーラはその二人の背中に向けて深々と頭を下げていた。



「アタル様、なんでこの依頼を受けようと思ったんですか?」

 宿へと向かう道すがら、純粋に気になったキャロが質問をする。自分もこの依頼を受けたいとは思っていたが、主人である彼がどう思っていたのか知りたかったようだ。

「うーん、別に報酬に困ってはいないし、俺たちは急にランクがあがったから経験が少ない。最初の依頼主だとそのことで些細なミスをした場合にあれこれ文句を言われる可能性があるからな。それだったら、金がなくて困ってる貴族のほうを助けたほうがいいだろ」

 アタルの言葉にぱぁっと顔を輝かせたキャロは頷いた。実は彼女も同じ考えだったからだ。


「あっ、アタル様。多分ここの宿だと思います!」

 何度か地図と目的地を確認したキャロがある宿を指差してアタルへと振り返った。ブーラが用意してくれた資料には宿までの地図もあり、彼らは目的の場所まで迷うことなくたどり着くことができた。

「さてさて、部屋にいてくれるといいんだが」

 さっそく二人は宿に入ると、真っすぐ受付に向かう。


「すまない、冒険者ギルドからここに泊まってる貴族の護衛依頼を受けて来たんだが、名前はっと……」

 アタルはブーラに渡された用紙の依頼主の名前欄を確認する。

「ガイゼルさんとなってるな。これだ」


 名前を聞いて用紙を確認すると宿の店員は大きく頷く。

「はいはいガイゼル様ですね、聞いていますよ。今お呼びしますので少々お待ち下さい」

 事前に話を聞いていた店員は、アタルたちに待っているように言うとすぐにガイゼルの部屋へと向かった。


 しばらく受付で待っていると、店員が一人の男性と一人の男の子を連れて降りて来た。

「お待たせしました。ガイゼル様、こちらがギルドから来られた冒険者の方だそうです」

 ガイゼル様と呼ばれた男性は細身で疲れた表情をしており、身長はやや低めで160台半ばといったところだろうか。一目見ただけで彼の苦労ぶりがうかがえるようだった。


「おぉ、あなた方が私の依頼を受けて下さったのですね。ありがとうございます」

 彼はアタルたちを視界に捉えるとすぐにぺこぺこと頭を下げる。申し訳なさが前面に出ており、事前にブーラに聞いていた通り、非常に腰の低い人物だという事が伝わってきた。

「あ、あぁ、あなたがガイゼルさんか。俺は冒険者のアタル、こっちは仲間のキャロだ。よろしく」

「キャロと申します。よろしくお願いします」

 即座に頭を下げたガイゼルにアタルはやや戸惑いつつも、最初の挨拶はしなければとキャロの背に手をやった。それに促されるようにキャロも丁寧に頭を下げながらアタルに続いて挨拶した。


 その間もガイゼルは一言一言に頷いており、そんなやりとりを見ていた隣にいる男の子が口を開く。

「……パパ、この人たちで本当に大丈夫なの?」

 訝しげな表情をした男の子が発した第一声はとても辛辣なものだった。

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