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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第二百九十一話


「二人とも恨まれるようなやつらじゃない。いいやつだ。だから、二人が恨みを買うようなことはない」

 これまで付き合いのある二人の性格や人格からバンブは判断する。


「二人がどんな人間かは置いとくとして、客を減らす程度の邪魔をしても恨みは解消されないだろ。監視するほど人手を使うなら、もっとガツンとやりそうなもんだ……ちなみに、材料が思う様に買えない時期に、閉店するかもしれないと漏らしたことはあるか?」

 話しながら思いついたアタルの質問に、ニャムとカッターは腕を組んで考え込む。


「あっ……湖に問題が出たせいで仕入れの値段がかなり上がってきた頃、仕入れ業者さんには言ったことがあるかもしれません……」

「あー、確かに言ったな。このままだと店をたたんで故郷に帰ることになるかもって……」

 記憶を辿ってみると思い当たる節があるようで、ニャムもカッターも言ってしまったと後悔した表情になっている。


「いや、それは逆によかったかもしれない。それでも頑張ると宣言していたら、強硬姿勢をとられたかもしれないからな。まあ、そのへんは過ぎたことだからいいとして、俺たちはその原因のやつらが何者なのかを探る。ここの安全は……」

 そう言ってバンブをチラリとアタルが見る。


 バンブはニヤリと笑い、腕を組んだままふんっと息巻き、両腕の筋肉を隆起させていた。

 強面で筋骨隆々のバンブはある意味最強のボディーガードといえた。


「任せたぞ。それと、バンブは刺身って料理を知っているか? 生の魚の身を薄く切る料理で、醤油という調味料につけて食うんだが……」

 アタルの言葉にバンブは自分の覚えている料理を思い浮かべていく。


「知らん。知らんが……それは面白そうだ! カッター、さしみとやらを作るぞ! 俺たち二人ならきっとどんな料理なのか解き明かすことができるはずだ! さあ、魚を用意しろ! 包丁を持て!」

「了解したぞ、兄さん!」

 ぐっと熱い視線を交わし合ったバンブとカッターは意気揚々と厨房に籠もり、さしみの解明に挑戦していく。


「それじゃ、キャロ、バル、イフリア、行くぞ。ニャムはあの二人が無理をしすぎないように見てやってくれ」

「はいっ!」

 先ほどまでの暗い表情を一変させて笑顔で頷いたニャムは敬礼をして請け負ったと返事をした。


 外に出ると、再び視線がアタルたちに向いていることに気づく。気づくが、誰も視線は向けずに真っすぐ歩いていく。

 アタルとキャロとバルキアスはそのまま街中へと向かっていく。イフリアは相手側に見られない死角から空高く飛び、上空からの監視をしていた。

 

 そして街をぐるっと歩き、それとなく監視を誘導する。

 昼間店を回っている中でアタルたちは街の構造に詳しくなっていた。

 適当にそこらへんにある店に入り、しばらく時間が経ったところで裏口から出ていく。


 それを数件繰り返すことで、尾行を撒いていた。

 最後の店でしばらく滞在したのち、これまた店の許可を得て裏口から静かに出て行く。


「さて、そろそろいいだろ。ここからは俺たちが追う番だ」

 全ての尾行をまいたアタルのもとへ空からすーっとイフリアが降りて肩にとまる。


『見つけたぞ。街の東のほうにある屋敷に入っていった。しばらく監視していたが、出てこなかったことを考えるとそこの手の者であろう』

「なら、そこに向かってみるか」

 アタルがそう提案すると、イフリアは小さく首を横に振る。


『それは一組目だ。尾行していたのは別にもいる。そいつらは、北東にある屋敷に入っていった。三組目は南東の屋敷だ』

 合計三組の尾行者がアタルたちを尾行していた――それがイフリアの報告だった。


「まさかそんなにいるなんて……」

 尾行者の存在はキャロも気づいていたが、三組もいたことには驚いているようだった。

「思っていたよりも多いな。さて、どうするか」

 アタルも予想以上の人数に、どうしたものかと考える。


『どちらにせよ、我が案内できるのは一つずつだ。各個撃破していくのがいいと思うぞ』

「そうだな……まずはイフリアによる案内。次に情報集めだ。理由がわからずにつぶしたら、新しい組織や集団が出てくるかもしれないからな。潜入捜査だ」

 アタルたちが全力で動けば屋敷一つ、いや三つとも潰すのは簡単だが、今後のためにもその理由の追及が必要だとアタルは考えている。


『ふむ、人の成すことというのはなかなか面倒くさいものだな。まあ、我は案内をし、指示を待つだけだ。そして、美味いものを所望する』

『所望する!』

 イフリアの言葉にバルキアスものっかる。いい慣れていないが便乗したい気持ちが強く表れているのが言葉から伝わってくる。


 ここ数日アタルとキャロは食べ歩きをしていたが、バルキアスとイフリアは基本的に監視、防衛任務であったため、まともな食事をしていなかった。

 それゆえに、食事に――それも美味しいものに飢えていた。


「二人は文句ひとつ言わずに頑張ってくれたからな。あとでカッターとバンブに頼んで何かつくってもらおう。まずは屋敷に案内してくれ」

『承知した。こっちだ』

 バンブからは最初にアタルたちからかぎ取ったとてつもなく良い匂いが嗅ぎ取れたために、イフリアもバルキアスも喜んで尻尾を振りながら屋敷へと向かって行く。


 アタルたちの目的が情報収集であるとわかっているため、イフリアは屋敷が見える高台へと案内する。

 最初に向かったのは、南東にある屋敷が見える場所。


『ここならどうだ?』

 アタルの眼鏡にかなう場所かどうかをイフリアが確認する。

 イフリアはアタルの武器の性能や彼の能力から良い場所を意識して探しておいていた。

「あぁ、いい場所だ」

 満足げに目を細め、スコープ越しに屋敷を観察するアタル。魔眼の効果も相まって、屋敷の様子が詳細に確認できる。


「俺はここでしばらく確認をするから、キャロは二人を連れて次の場所の確認をしてきてくれるか? 深入りはするなよ。夜には店で合流だ」

「わかりましたっ! バル君、イフリアさん行きましょう」

 笑顔で頷いたキャロはアタルの指示を受けて、すぐに動く。指示に疑問を持つこともなかった。


『ふむ、では東の屋敷に向かおう』

『よっるがたっのしみー♪』

 先導するように飛ぶイフリアと弾むように歩くバルキアスと共にキャロも動き出した。


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