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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第二百五十一話


 三人はなんとか疲れた身体に鞭打って、馬車に乗り込んで街へと戻っていく。

馬車に乗り込んだ途端に眠りについてしまったため、三人は気づけば街にいたという状況になっていた。


 まだ眠りから完全には解放されていない三人だったが、なんとか説明を聞いて解散までは無理やり身体を起こしていた。

 今日のうちは討伐報酬の計算や解体に対する報酬、更には、解体した素材のとりわけや買取など決めなければならないことがたくさんあるため、再集合は翌日の夕方ということになった。


 各々別れを告げると、各自宿泊している施設へと戻っていく。

 キャロとアタルも同様に宿に戻るが、二人はベッドにダイブするとそのまま深い眠りについた。


 翌朝、目覚めることはなく、昼になっても目覚めず、二人が起きたのは日が高々と登り、それが沈もうとする頃だった。


 予定の時間を過ぎていたが、二人は慌てることなく冒険者ギルドへと向かっていく。

 その最大の理由は、まだ眠さが強く、倦怠感があるためだった。

 到着したころには日が沈んで完全に夜になっていた。


 しかし、冒険者ギルドは夜とは思えないほどににぎわっている。


「なんだ? 思った以上に人がいるな……」

「一体、どうしたんでしょうか?」

 多くの冒険者は報酬をもらって街に繰り出していくと思っていたが、ギルドホールはいまだ混雑しており、多くの冒険者がたむろしている。


 そして、アタルとキャロ、それにバルキアスと子竜サイズとなったイフリアがギルドの中に足を踏み入れると、そこら中にいた人たちの視線が一気に集まり、わあっと歓声があがった。


「あんた! すごかったな!」

「おいおい、遅れて登場なんて美味しいな!」

「あんたの報酬がどれほどになるか楽しみだな!」

 

 アタル、キャロ、バルキアス、イフリアの活躍は戦いに参加した全ての冒険者が見ており、その戦い振りに全員が驚き、歓喜し、称賛していた。

 報酬は低い人から順番に手渡されていたようで、彼らの報酬がいくらになるのかみんな興味津々だった。


「お、おいおい、通してくれ」

 アタルの言葉を聞いた冒険者たちは左右に移動して、まるでモーゼが海を割ったかの如く、真っ二つにカウンターまでの道ができる。


「お、おう。言った通りになるとは驚きだな……まあ、助かるか。みんな、行くぞ」

 周囲の動きの統一性に驚きながら歩くアタルのあとを三人がついていく。


「アタルさん、キャロさん、お待ちしていました」

 すると、にっこりと笑顔の受付嬢が二人を迎える。

 ただし、迎えたのは一人だけではなく、他の受付嬢も全員立ち上がっていた。


「お二人の活躍は、参加した冒険者のみなさんからお聞きしました。その戦い振りは歴史に残ってもいいくらいの活躍だったそうですね。ギルドマスターバートラムもお二人のことをとてもとても褒めていました。まるで英雄を見た子どものようでした」

 こぶしを握りながら熱く語る彼女自身も興奮しているようだった。


「あー……まあみんなが褒めてくれて悪い気はしないが、それよりも手続きをしてくれるか? 俺たちの依頼の報酬。それから、解体分の作業料。それから手に入れた素材による俺たちの分の報酬か」

 感動している受付嬢たちをみて逆に冷静になったアタルは落ち着いた様子で手続きを促す。


「は、はい。すいません。ついお二人の活躍に感動してしまいまして……! 他のみなさんへの報酬の受け渡しも終わって、お二人の報酬に関しても既に算出し終えています」

 そう言うと、受付嬢が他の職員に合図をする。

 すると奥から職員が必死な様子で大きな袋を抱えて持ってくる。もう一人の職員もかなりの大きさの袋を持ってきている。


「こちらがお二人の報酬になります。こちらの大きな袋がアタルさん、もう一つがキャロさんです」

 テーブルに重量感たっぷりの音と共に置かれた袋を見た二人は呆然として、口を開いていた。


 アタルへの報酬。それが入っている袋の大きさは両手で広げてやっと抱えられるほどの大きさだった。


「こんなに……」

「すごいです……」

 それにはさすがの二人も驚いていた。


「はい、お二人の報酬は最優先にとのギルドマスターからの命令でして……実はフェウダーさんの報酬は待ってもらっているんですよ」

 内緒話をするようにクスクスと笑いながらこっそりと教えてくれた受付嬢。


「全くだ、まあ俺は金には困ってないからいいんだけどな。参加したのも報酬目当てじゃなく、面白そうだっただけだしな」

 わざとらしく困ったような身振りと共にそのフェウダー本人が二人の側にいたことに、それまで誰も気づかず。情報を話した受付嬢は飛び上がるほどに驚いていた。


「はっはっは! 嬢ちゃん面白い反応だな。いいんだいいんだ。さっきも言ったが、俺は報酬に興味はない。正直冒険者を辞めても、遊んで暮らせるほどには余裕があるしな!」

 そんなことを公の場で大きな声で言ったとしても、彼をどうこうできるものはいない。


「なるほどな。まあ、別に俺たちもここまで金をもらわなくてもよかったんだが……それでも活躍が正当に評価されたようでよかったよ」

 アタルはその袋を受取ると、マジックバッグの中へといれていく。


 巨大な袋がするするとカバンの中に入るのは奇妙な光景であり、入れた当人であるアタルも複雑な表情になっていた。


「さて、それじゃあ俺たちは行くか」

 アタルはキャロが自身のカバンに報酬をしまったのを確認してから、ギルドをあとにすることを口にする。


「……ま、待って、待ってくださーーーーーい!」

 アタルたちが受付カウンターに背を向けようとしたところで、大きな声でそれを止めようとする声が降りてきた。


「バートラムか」

 声を聞いただけで、アタルはその主が誰なのかわかっていた。


 降りてきたバートラムは受付カウンターを飛び出そうと急いだ結果、屈強な筋肉がカウンターに引っかかって体勢を大きく崩してしまう。

 カウンターは丈夫な素材でできているようで、バートラムの身体が叩きつけられてもびくともしていないが、相当大きな音が響くほど彼の身体へのダメージは大きい。


「……大丈夫か?」

 アタルが声をかけるが、バートラムは身体に襲いかかった痛みに苦い表情でうめいていた。



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